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ORDA オルダ~蟲の住む石~  作者: ふじしー
45/107

45.再び

一通り検査を終え、検視官の飯尾さんと三田さんは本署に戻るかと思いきや、


「健康上問題ないとはいえ、今晩自宅で一人になるのが怖いですね。寝てる間に何かあったらとか…」


 と、三田さんが言い出し、


「気持ちは分かるが…。うちに泊まるか?」


 飯尾さんが反応したが、


「いやあ、幸せそうな家庭に泊めていただくのは、僕の心的な部分でちょっと…」


 離婚歴があり、子供と離れている身からすると幸せな家庭に泊まるのはしんどいらしい。

 そこで口を開いたのが医者だった。


「では、診療所に泊まりますか? 戸塚さんと畑谷さんも泊まっていますし、何かあれば私が診ることもできますし」


 その言葉に三田さんは即座に反応した。


「いいんですか?!」

「ええ。ただ、ベッドが埋まってしまうので、急患が入った場合はお二人の部屋に布団を引いていただくことになりますが…」

「全然構いません。今日一日大丈夫なら、明日安心して帰れます。…あ、でも」


 と三田さんは飯尾さんを見た。


「明日は午後からの出勤で良いですか? ここから本署は時間かかりそうなので」


 飯尾さんは、ふうと息をついて言った。


「というより、代休を取れ」

「いいんですか?」

「当然の権利だからな。明日の朝、私が迎えに来るから、それまでにMRI検査の予約を取っておけ」

「分かりました。ありがとうございます」


 ということで、飯尾さんだけが本署に戻ることになった。

 飯尾さんだけが帰った後、香川さんが空を見て言った。


「まだ、外は明るいですね」


 オレたちは、香川さんに釣られるように空を見た。確かにまだ明るい。


「健康上問題ないことが分かったので、もう一度、笹嶺神社に行きませんか?」

「えっ」


 驚いたのは三田さんだった。


「抵抗あるのは分かりますが、確認したいことがありまして。明日の朝帰られるのなら、その前に確かめておきたく。ご協力願えますか?」

「何を確かめるんですか?」

「松井から、社でも耳を押さえていたと聞きまして。戸塚さんと畑谷さんは、社では何も聞こえないということだったので、奇妙だなと思いましてね」


 と、香川さんがオレを見た。

 笹嶺神社でのオレの疑問を解決してくれようとしているらしい。


「捜査の延長だと思って、ご協力ください」


 三田さんは不安そうな表情をしたが、「分かりました」と覚悟を決めた。

 そしてオレたちは、再び笹嶺神社に向かった。

 笹嶺神社に近づくと、飯尾さんが耳を押さえ始めた。やはりオルダが共鳴をしているようだ。オレと畑谷のオルダは全く鳴いていない。

 オレは、念のためとホームセンターで買っておいた耳栓を三田さんに渡した。


「多少は音が和らぎます」


 三田さんはそれを受け取って、耳に入れた。


「本当だ」

「仕組みは分からないんですが、音が弱まるんでおススメです。それはあげます」

「ありがとうございます。助かります」


 笹嶺神社に到着し、オレたちは社の方へと進んだ。

 三田さんに音が強くなる方へと導いてもらう。


「ここが一番大きく聞こえます」


 三田さんが言ったのは、社の前だった。


「やはり社にオルダがいるんすかね?」


 畑谷が言った。


「社の外と中、どちらの方が強く聞こえますか?」


 オレが聞くと、三田さんは少しずつ社に近づいていった。耳を澄ませるように社の下を覗こうとした時だった。


「いいいいいいいいいいいいいい」


 と言って、三田さんは慌てて後ずさった。


「どうされました?」


 香川さんは慌てて駆け寄った。

 三田さんの息が荒くなっている。


「い、いま、腕のオルダが引っ張られるような痛さがあって」

「オルダが引っ張られる?」


 三田さんは頷いた。


「なんというか、皮膚の中でオルダの形が分かるような気がしたというか」


 三田さんはそう言いながら、左の前腕を擦っている。


「三田さんは一旦車に戻っといてください」


 香川さんは松井さんに指示をして、二人は車に戻っていった。

 オレは、三田さんが声を上げる直前に覗き込もうとしていた社の下を覗き込み、携帯のライトで照らした。畑谷も隣に来て、一緒に覗き込んだ。しかし、何も見えないし、何も起こらない。


「オレたちと三田さんで何が違うんだ…」


 オレがそう呟くと、香川さんが隣にやってきて言った。


「ここは星影神社の、神主さんの石が落ちてた場所でもありますよね。ここに何かがあるのは間違いないように思います」


 香川さんが空を見た。


「もう暗くなってきましたから、今日は一旦お開きにしましょう」

「そうですね」

「我々は本署に帰って、根屋の娘と名乗る人物について調査を進めてみます」


 ああ、そうだ。その人物についても調べなければならなかった。オレは、香川さんが信頼できそうだと判断して、伝えることを決めた。


「あの、実は気になっている人物がいて」


 香川さんは首を傾げた。


「オレは運転免許証を持っていないので、この村には見延線の井出駅からタクシーでやってきたんですが、その時のタクシー運転手から、最近東京の人を良く乗せるという話を聞いたんです。その話から、一人が稲塾大学の岡田教授、もう一人が五十嵐だと思ったのですが、タクシー運転手は彼ら以外に、黒髪の女性を乗せたと言っていたんです」

「黒髪の女性?」

「はい。で、昨日星影神社に行ったんです。畑谷のオルダが鳴いたので、挨拶させるために。その時に神主さんに、星影神社のオルダは奉納されたものだと聞いて、『それは黒髪の女性ですか?』と尋ねたら、図星のような顔をされて」

「それが根屋の娘の可能性があると?」


 オレは頷いて、話を続けた。


「畑谷のオルダが反応して、オレのオルダが反応しなかったということは、星影神社の石はオレのオルダが既に挨拶をしていた石ということになります」


 香川さんは驚いた顔をした。


「オルダハンターは限られていて、オルダを取引する場所も限られています。オレは、星影神社の石の加工方法には見覚えがあって、オレが出入りしている美術商で扱っているものだと思いました。おそらく、オレが出入りした日に扱っていたオルダであり、その時に挨拶したものだろうと」


 香川さんに加え、畑谷も真剣に話を聞いている。


「そこで、美術商に連絡を入れて、オレが出入りした日と同日に、その加工をしたオルダハンターが出品したオルダを落札した人の中に、黒髪の女性がいないか確認しました。美術商からの回答として、二人の候補が出ました。一人は、先ほど星影神社の人に確認して、違うことが分かりました」

「写真を見せていた、あれですね」

「そうです。もう一人は、写真がないので確認のしようがなかったんですが…。もし、根屋の娘さんがその人だったら…と思って」

「その人は?」

「マッチングアプリDEAUの社長秘書の平木という女性です」

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