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ORDA オルダ~蟲の住む石~  作者: ふじしー
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40.拒絶

 携帯の電波が届く村役場の前に到着し、香川さんは本署に連絡を入れた。帰路にあった鑑識一行が引き返してくることになったらしい。

 待っている間、発掘した骨の話になった。

 なぜ、一体だけ白いのか。他の二体も300年以上前のものにも関わらず状態が良かった。あれは鬼虎、千代、千代の子のものなのだろうか?

 オレはふと思った一つの説を刑事たちに伝えようと思った。


「オルダが宿る石は生きていると考えています」


 オレがそういうと、香川さんは理解が追い付かないと言いたげな顔をした。


「石が生きている?」


 オレが「はい」と言うと同時に、なぜか畑谷が少し興奮気味に答えた。


「そうっす!生きてるんすよ!」

「生きているとはどういうことですか? いや、疑ってはいませんよ。オルダに関しては散々目の当たりにしているので、信じてはいます」

「お見せするのが早い気がします。他のハンターが加工した石を手にかけるのは少々心苦しいですが…星影神社の石お借りできますか?」


 松井さんは、持っていた星影神社の石を「はい」と渡してくれた。

 オレは、仕事道具であるノミとトンカチを取り出した。石の角部分が切り取りやすそうだ。


「オルダは今、ここにいます」


 オレがヒスイをこすると、オルダが姿を現した。刑事たちと畑谷はまた「おお!」と感嘆の声を上げた。


「オルダが存在していないこの角の部分を少しだけ切り取ります。よく見ていてください」


 オレは、ヒスイの角の部分2センチ四方くらい部分にノミを入れ、カンカンと打ち、切り出した。切り出されれたヒスイの色が濁った。


「色が変わった」

「まるで生気を失ったようだ」

「何度見てもすごいっすね」


 オレはオルダがいる元のヒスイを左手に、切り出したヒスイを右手に持ち、刑事たちの前に差し出した。


「オルダがいる石はこのように生きている。そして、切り出された石は死ぬんですよ」


 香川さんはオレからヒスイを受け取って見比べている。


「これと同じ現象が、あの骨に起きているのかもしれません」


 香川さんと松井さん、そして畑谷は同時にオレを見た。


「おそらく、あの白い人骨にオルダが住んでいる。だから、骨が劣化していないのではないかと予想します。他の2体に関しては、そのオルダの影響を受けて劣化のスピードが遅くなっているのかもしれません」

「その可能性は大いにありそうですな」

「オルダの生態については解明されていないことが多いので確証はないですが…」

「法医の先生に、骨の年代を調べてもらいますので、何かしら分かるかもしれません」


 と言って、香川さんは人差し指の甲を口の下に当てた。


「しかし…、なぜ、五十嵐さんと神主さんは目を奪われたのでしょう」


 香川さんはオレと畑谷を交互に見て話しを続けた。


「今回あの場所を掘って分かったことは、土の固さからして、最近掘られている様子がなかったということです。最近掘られていたのなら、土はもっと柔らかいはずです。つまり、彼らは骨の場所を掘っていない。彼らは倒れていたあの場所で何かに襲われたのは間違いないでしょうな」


 オレもそう思っている。


「彼らが笹嶺神社を何をしたのか。彼らが目覚めてくれたら分かるんですがね…。彼らが何故眠り続けているのか、それもまた謎です」


 香川さんは、口の下に当てていた指を降ろした。


「そして、もう一つの謎が、戸塚さんが骨にオルダを近づけた際の吐き気や寒気。もう体調は戻りましたか?」

「はい、もう大丈夫です。ご心配お掛けしました」

「お二人の話では、初めて会うオルダ同士は挨拶すると鳴き止み、拒絶反応はないということでしたね」

「そうです。だから先ほどは驚きました。あんなにもオルダが拒絶したことは経験したことがないです。今でも思い出すとゾクっとします。内側からゾワゾワっとした感じでした」


 香川さんは再び人差し指の甲を口の下に当てた。

 その時、畑谷が少し身を乗り出した。


「あの、大丈夫なんすかね?」


 オレは思わず「ん?」と反応した。


「黙光寺には伝わっている話どおりにオルダがいた。永福寺の話のとおり紅葉の大木近くを掘ったら3体の骨が出た。鬼虎の話は本当にあったことっぽいじゃないっすか」

「そうだな」

「ってことは、村人たちの呪いもきっと本当にあったっすよね?」

「おそらくな。何かしらの形でオルダと契約をしたのと同じ状態にはなったのだろうと思う」

「オレ、思うんすけど、千代も埋葬されてたってことは、誰かが埋めたってことじゃないっすか」


 香川さんは人差し指の甲を口の下に当てたまま、


「そうなりますな」


 と相槌を打った。


「っすよね? 村人たちは千代とその子を埋葬したときに呪われたのだとしたら?」

「何が言いたい?」

「あの白い骨を触ったら、呪われるんじゃないっすか?」


 オレと、刑事たちは同時に畑谷を見つめた。


「あと、思ったんすけど、オルダって二重契約できないとかじゃないすかね。二重契約をしようとするとオルダが『イヤだーっ!』と鳴き叫ぶとか。さっき戸塚さんが拒絶されたのは、あの骨を触った瞬間に契約されちゃうとオルダが悟ったからなんじゃないかと思うんすよね」


 畑谷は時折するどい。そうかもしれない。


「これから来る法医や鑑識さん、あの骨触っちゃって大丈夫っすかね? 触った瞬間、契約成立しちゃうんじゃないっすかね。寺に伝わる話のとおり体の中にオルダが入り込んだら怖くないっすか?」

「確かに、その危険性は考えられますな」


 香川さんは口の下に当てていた手を降ろした。

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