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ORDA オルダ~蟲の住む石~  作者: ふじしー
38/107

38.現場検証

星影神社関係者への質問が終わり、オレたちは笹嶺神社に向かった。識者として現場検証に立ち会うという理由でだ。


「ここに、うつ伏せで倒れていたそうです」


 若い刑事・松井さんがジェスチャーを交えて言った。

 その場所は社の真正面であった。


「社に背を向けた状態で前に倒れた、みたいな」


 畑谷は松井さんの隣に立って、うつぶせになる直前のようなジェスチャーをして、


「社の中の何かから逃げようとしたって感じっすね」


 と言って振り返り、背後の社を見た。


「お二人は社の中を覗いてはいない?」


 年配の刑事・香川さんはオレに聞いてきた。


「ええ、近年に建て直されたもので、千代の時代のものではないという判断をして、外観をサッと見ただけです」

「先ほどから出ている、千代という名前は何ですか?」


 オレは、この村に伝わる鬼虎の話を刑事たちに話した。

 香川さんは時折顔をしかめながら、松井さんは時折鳥肌を擦るような仕草をして聞いていた。


「その千代の呪いと言われているものが、オルダであるということですか?」

「可能性は限りなく高いと考えています。実際に黙光寺には存在していましたし、鬼虎や千代たちが埋められたと考えられる湧水の辺りでは、オルダが鳴きましたので」

「そのオルダの鳴き声というのを聞いてみたいですな」


 何度か倒れるシミュレーションをしていた畑谷がふと何かに気づいて、社の方に近づいていった。


「これ、星影神社のオルダじゃないっすか?」


 畑谷は社の階段の下から石を取り出した。

 石の加工の具合からも、確かにそれは星影神社にあったオルダであった。


「星影神社のオルダ? それは間違いないですか?」


 香川さんが反応して、オレに聞いてきた。


「ええ、間違いないです。この加工方法は特徴あるものなので」


 香川さんは人差し指の甲を口の下に当てた。


「私がこの石と契約を結ぶことはできますか?」


 難しい質問である。


「分かりません。オルダと契約が切れるのは、契約者が亡くなった時だと考えています。途中で切り替えることができたという話は聞いたことがありませんし、切り替えできたとして前の契約者がどうなるかというのもオレは知らないです」

「今はやらん方がいいということですね」

「オレはそう思います」

「ふむ。神主さんが、この石を持ってここへ来たということが確認できたことは収穫ですな」

「ただ、この石がここにあるというのが少し心配ですね」

「心配?」

「オルダは契約者から離れると寂しくて鳴くんですよ。神主さん、現在眠っているから聞こえていない可能性もありますが、ここにあるということは、きっと神主さんには泣き声が聞こえているような気がします」

「オルダから離れていても泣き声が聞こえるのですか?」

「どういう仕組みか分からないんですが、オルダの鳴き声は、まるで耳の中にオルダが住んでいるように、耳の中で響くんです。そして、これも、どういう仕組みか分からないんですが、耳栓をすると鳴き声は少し弱まるんですよ」


 その時だった。


「ワァ!!」


 と、畑谷が腰を抜かした。


「どうしました!?」


 松井さんが畑谷に駆け寄った。


「いや、階段の下にこれがあったんで、社の下に何かあったのかなと思って覗いたら、黒いものがワーッと近寄ってきて。でも、ただの猫でした。驚きすぎました、すんません」


 畑谷の言葉と同時に社の下から黒猫が出てきた。

 香川さんが再び人差し指の甲を口の下に当てた。


「社を覗いて、中の何かから逃げてきたのではなく、社の下を覗いて、這い出てきた…? いや、その跡はない」


 香川さんは社の床下を覗いた。


「松井、懐中電灯持ってるか?」

「懐中電灯はないですが、携帯にライト付いてますよ」

「ああ、そうか」


 香川さんは携帯を出して、いろいろ弄っているが、どうやらライトにたどり着けないようだ。

 松井さんはそれを見かねて、自分の携帯でライトを点け、床の下を照らした。


「あれは何だ?」


 オレと畑谷はライトに照らされた先を見た。

 そこにはいくつかの石が直線状に並んでいた。

 

「多分、礎石っすよ」


 畑谷が言った。


「礎石?」

「建物の柱を乗せる石っす。このコンクリと同じっす」


 畑谷は社の柱の下のコンクリを触って言った。


「昔の社の礎石だと思います」

「オルダではない?」


 それにはオレが答えた。


「違いますね」

「そうか…」


 礎石は一部現在の社の流用され、一部がそのまま残されているようだった。建て替えの時に何故取り除かなかったのか謎ではあるが、大きすぎて取り除くのが大変だったのかもしれない。この配置からすると、昔の社は一回り小さかったようだ。


「うむ。床下に入ったような足跡は無さそうだな」


 香川さんが再び人差し指の甲を口の下に当て、そしてオレを見て言った。


「湧水、案内してくれませんか? シャベル持って行きましょう」

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