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ORDA オルダ~蟲の住む石~  作者: ふじしー
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37.根屋家

 現状、一番の専門家であるということで、オレたちは星影神社の関係者への質問に同席させてもらえることになった。

 星影神社の関係者は神主の両親と妻である。神主の父親が前年まで神主を務めていたが、今年から代替わりをしたらしい。そして、倒れていた神主を発見したのは妻ということだった。

 刑事の質問に対して、答えているのは主に神主の父親である。


「授与所の石は、春頃に奉納されたものです」

「奉納したのはどなたですか」

「最近神主が連絡を取り合っていた方です」

「地元の方ですか?」

「いえ、現在は東京にいらっしゃいます」

「その方のお名前をお聞きしてもいいですか?」

「それは…今回の件に関わらないのであれば控えたいのですが…」

「関わるかどうかは、まだ分かりません。可能性の一つとしてお聞きしたいです」

「申し訳ありません。私は旧姓しか知らないのです」

「旧姓?」

「奉納された方のご両親が離婚されていて、私は離婚前の姓しか存じませんので」

「奉納した方のご両親をご存じなんですか?」

「父親がこの村の出身です。しかし、若い頃に出て行ったきりで、最後に帰ってきたのが、親が亡くなった時に一度だけ。その時には既に離婚しており、奥様とお子さんは葬儀に参列しておらず、お会いしたことがないんですよ」

「神主さんはなぜ繋がりが?」

「それは私も知りません。石を奉納された時も私はお会いしておりませんで」


 それまで黙っていた神主の妻が口を開いた。


「ある日突然連絡が入りました」

「奥様はご存知なのですか?」


 神主の妻は「はい」と小さく頷いた。


「初めて連絡が来たのが、年明けてすぐだったかと思います。『根屋の娘でございます』という電話があり、その後に対応は夫が行ったので、私は内容を把握しておりませんが、何度か連絡を取り合い、今年の春先にご本人が神社にやってきました」

「根屋というのが旧姓ですか?」


 答えたのは神主の父親だった。


「はい。元々は笹嶺神社を管理していた家でした」


 オレと畑谷は驚き、思わず顔を見合わせた。

 神主の父親は話を続けた。


「根屋のお父様が亡くなる直前まで管理をされていました。しかし、息子は既に東京に移住していて村に戻る気もなく、お母様を東京に呼んで、実家を処分しました。同時に笹嶺神社の管理を放棄しましてね、管理の仕事がうちに回ってきたという状況です」

「奥様も本名はご存じない?」

「ええ、根屋さんの娘さんということしか。石を奉納された時も『根屋家』としておりましたので…。夫も恐らく根屋さんという認識しかないかと思います」

「昨日、神主さんが根屋の娘さんと連絡を取り合っていたか分かりますか?」


 神主の妻は首を傾げた。


「夫は携帯を弄るのが趣味のような人で、昨日も携帯を弄っておりましたが、その相手が根屋さんだったかどうかは…」

「分かりました。根屋さんについては我々で確認します」


 神主の母親が口を開いた。


「息子はいつ目が覚めるのでしょう?」


 これに対しては、医者が答えた。


「なんとも言えません。3か月前に倒れていた方も、いまだに目が覚めていない状況で…」

「そうですか…。死ぬわけではないですよね?」

「それについてもなんとも言えないです」

「そうですか…」

「要因の一つとして、あの石に住む虫が関係ありそうと考えており」

「先ほどお見せいただいた虫ですよね? あの虫はなんなのでしょう?」

「それについて、現在彼らが調査を行っている状況です」


 突然、医者がオレたちに手を向けた。

 オレたちは思わず会釈をした。

 医者はオレたちに話を振った。


「星影神社さんに聞きたいことがあるということでしたよね?」


 星影神社の人たちは首を傾げた。そして、刑事たちが身を乗り出した。

 急な注目を浴びて、少々緊張が走った。が、隣の男はそれを感じていなかったようで、


「笹嶺神社の慰霊祭について聞きたかったんすよね?」


 と、オレに話を振ってきた。


「慰霊祭ですか?」


 神主の父親が反応した。

 オレは頷いて、刑事の視線を恐れながらも、聞くことにした。


「我々は今、千代の呪いについて調べていまして、笹嶺神社の慰霊祭が始まったのが千代の時期と近いことから、関連性があるのかどうかと。笹嶺神社の慰霊祭が始まった経緯など、星影神社さんに伝わっていることがあれば教えていただきたいと」


 神主の父親の目には一瞬動揺が走ったように見えた。


「鬼虎の話はご存じということですね?」

「はい、それは昨日この村の寺を周りまして、お聞きすることができました。この村の寺の人間が神社の慰霊祭に関わることはないだろうというのが、総意のようでした」


 神主は頷いて「そうですね」と言って、話を続けた。


「我々の星影神社も、笹嶺神社の慰霊祭に直接関わっているわけではありませんので、伝わる話も少ないのですが、大義名分としては、不慮の事故などで亡くなった人や動物を弔うものとして行なわれていたようです」

「不慮の事故で亡くなった人の中に、千代が含まれている可能性は?」

「そこまでは伝わっておりませんが、取り仕切っていたのは根屋家です」


 刑事が身を乗り出した。


「そして、根屋家は、千代がいた家だという話です。現在の根屋家は千代の弟の家系らしいですが…」


 オレは思わず唾を呑んだ。


「なので、笹嶺神社の慰霊祭は千代とその子をと弔うものとして始まった可能性はあるかと思います」


 オレは神主の妻に聞いた。


「根屋の娘さんの年齢は分かりますか?」

「年齢までは…。おそらく20~30代だとは思うのですが…」

「奥様は根屋の娘さんにお会いしたことは?」

「奉納の際にお茶をお出ししました」


 オレは、携帯を取り出し、FIGANは代表の田代保乃という女性の写真を出した。


「この女性ではないですよね?」


 神主の妻は首を横に振った。


「違います。もっと目がスッと切れ長で、前髪がパツッと真っすぐな感じで」


 田村女史は目がクリっとしていて、前髪はない。別人なのは間違いないだろう。ということは、可能性があるのはDEAUの秘書の方かもしれない。


「女性の検討がついているんですか?」


 刑事が聞いてきた。

 オレはどうしようかと考えたが、一旦保留にした。


「いえ、今、検討が外れたところです。根屋の娘さんについて分かったことがあれば教えていただけませんか? オレも会ったことのある人物か確認したいので」

「捜査情報を外に漏らすのは禁じられていますのでねえ。付いてきて、遠くから見ている分には咎めませんが」


 年配の刑事は、口角を上げてニヤっと笑った。

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