表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ORDA オルダ~蟲の住む石~  作者: ふじしー
32/107

32.紅葉の木

 永福寺を出て車に戻ると、畑谷が少し興奮気味に言った。


「星影神社が繋がりましたね!」

「そうだな」

「あの神社の人、明らかに怪しかったっすもんね! なんだか俺、探偵の気分っす」


 オレは窓の外を見た。少し陽が傾いているが、まだ間に合うか。


「紅葉確かめに行こうか」

「笹嶺神社っすね。行ってみたいっす」

「陽が落ちる前に行かないと遭難するかもしれねぇから、早く行かないと」

「そんなとこなんすか!?」

「目玉にも気をつけねぇと」


 畑谷はゴクリと唾を飲み、一転緊張した顔になった。

 車を走らせて1〜2分で笹嶺神社に到着した。やはり歩くより車が楽だ。畑谷が偶然現れて、かつ、畑谷が軽い奴で助かった。

 車を降り、笹嶺神社の鳥居の前に立った畑谷は言った。


「想像以上に森っすね」


 オレたちは奥へと進んでいった。

 ひっそり佇む社が現れる。


「これが鬼虎が立て籠った社か。でも、これ60年くらい前に建て直されて、何度か修繕されてる感じっすね」


 畑谷が社を観察しながら言った。


「何度か修繕?」

「ほら、屋根なんかは完全に近年のものじゃないっすか。銅板葺きっすし。古いものなら茅葺きとか、柿葺きとかじゃないっすか?」

「たしかに」

「ここに使われている梁はかなり古いものだと思うっすけど、それ以外の柱とかは昭和にはいってからの物のように思うっす。土壁も定期的に塗り直されてますしね」

「畑谷くん、こういうの詳しいの?」

「いや、詳しくはないっすけど、遺品整理とかで古民家系はちょこちょこ行くんすよ。で、その度にこの家は50年前のものだとか、100年前のものだとか、天保年間に建てられたのものだとか、そういう説明を毎回聞くんすよ。遺族は、だからこの家の骨董には価値があるという期待をしてるんすけど…実際価値ある品は少なくて。まあ、そうやって訪れていくうちに、家の大体の古さは分かるようになって」

「なるほど。星影神社がこまめに修繕してんのかもな」


 オレたちは、昨日見つけた湧水へ向かうことにした。


「よくこんな奥に入っていこうと思いましたね」


 畑谷がガサッという音にビビりながらオレの後をついてきている。


「オルダ探しは、もっと危ないところも行くぞ」

「マジっすか!?」

「滅多に無いけど」

「なんだよー」


 昨日の湧水に到着した。


「紅葉なくないっすか?」


 畑谷が周囲を確認しながら言った。

 確かに全てデコボコした木肌のどんぐり系の木といった感じで、紅葉のようなツルっとした木は確認できない。


「300年以上前に植えられたなら、相当な大木っすよね」


 確かにそうだ。紅葉の木がどれというよりも、目立った大木となっているはずである。そんな大木見つからない。


「ここじゃなさそうっすね」


 畑谷はそう言って、目を閉じて、手を当てて耳をそばたてる仕草をした。


「何してんだ?」

「他に水の音聞こえないかなーって」

「手前の音が邪魔で聞こえねえよ。歩いた方が早い」


 陽の傾きを気にしつつも、オレたちはどんぐりで目印を残しながら奥へと進んでいった。


「オルダ!」


 畑谷が言った。

 同じタイミングでオレのオルダも鳴き始めた。


「いるな」


 オレたちはオルダの声が強まる方向へと歩き出した。

 オルダの声はどんどん強くなっていく。


「あ、紅葉」


 畑谷が指差した先に、緑色の中に所々紅色の葉を纏った紅葉の大木があった。オルダの声によって消されていたが、紅葉の大木の手前に湧水も存在していた。


「ここだ」


 畑谷は頷いて言った。


「早く挨拶させましょ」


 しかし、オレは止めた。


「いや、やめておこう」

「何でっすか、俺耐えられないっす」

「場所は分かったんだ。一旦帰ろう。もう少し調査をした方がいい」

「ああ、そっか。千代の呪いがあるかもしれないっすもんね」


 畑谷は湧水に向かって「成仏してください」と手を合わせた。

 しかし、オレは千代の呪いが怖いから止めたわけではなかった。ただ、オルダの居場所がわからなかったのだ。

 目に見える範囲でオルダが住んでいそうなものは見えなかった。石があるわけでもなく、紅葉の木というわけでもない。湧水の辺りにオルダが居そうなのは間違いない。見つけるには、あの辺りを掘るしかない。五十嵐は掘ったのだろうか? 3ヶ月前とはいえ、その形跡はない。

 オレは、「これでもしとけ」と予備の耳栓を畑谷に渡した。オレは既に装着済みである。


「こんなんあったなら、早く渡してくださいよ」


 畑谷は早速耳に装着した。

 少し会話がし難いが仕方ない。


「とりあえず帰って、明日また来よう」


 オレたちは、陽が落ちないうちに、と足早にその場を立ち去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ