表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ORDA オルダ~蟲の住む石~  作者: ふじしー
30/107

30.星影神社

 永福寺までの道中、畑谷は運転しながら興奮気味に話していた。


「俺、石は無機質ってイメージだったんですけど、オルダが住んでいる石は生きてるんすね!」

「ああ、そうだな。それで見分けられるし、オークションで売れる値段も予測がつく」

「ってことは、俺のノートも生きてるんすかね?」


 ああ、そういうことになるのかと思った。例えばページを1枚破ったら、そのページの生気がなくなるんだろうか。


「なんか今日、色々な話に触れすぎて、頭パンクしそうっす。千代の目玉の話も、怪談みたいで、俺、鳥肌が立ちました」


 口には出さなかったが、それはオレも同じだった。

 オレはオルダが生まれた場所が気になって、五十嵐が連絡取れなくなったことが気になって、この村に来た。

 しかし、だんだん目的が変わってきた。なぜ目玉が無くなったのか、それが気になりだした。気をつけなければ、オレも同じ目に遭うのではないか、そんな気がした。

 隣の畑谷は、おそらくそこまでは考えてないだろう。


「痛いっ!痛いっす!一回止めていいっすか?」


 突然、畑谷が言い出した。


「痛い?」

「オルダが鳴いてるっす」

「え?」


 オレには聞こえない。どういうことだ?


「一度降りるぞ」

「はい」


 オレたちは車を降りた。


「どこから聞こえる?」

「えっと…あっちの方から…」


 畑谷が指した方向に、星影神社という神社があった。

 一見、町中でよく見かける神社という感じである。鳥居があって、参道あって、手水舎があって、木におみくじがくくりつけられ、木造の社には手前に賽銭箱があり、その上部に鈴があり紐が垂れている。


「こっから聞こえるっす」


 畑谷は社の隣の建物を指した。そこは御守りやお札を売っている売店であった。しかし、窓が閉じられていて、人がいる気配はない。

 窓から中を覗くが、オルダがありそうな気配はない。


「これ鳴らせばいいんすかね?」


 畑谷はオレが答えるより先に『御用の方は、このベルを鳴らしてください』と書かれたインターホンを鳴らした。


「少々お待ちください」


 インターホンから声がして2-3分して軽装の若い男性が現れ、窓を開けた。


「御守りですか?」

「いいえ」

「お祓いですか?」

「いえ、この建物の中にヒスイはありますか?」

「ヒスイ?」

「白あるいは薄緑の石です」

「それが何か?」

「それをお見せいただきたく…」


 男性は怪訝そうな顔でオレたちを見た。


「どういうことでしょう?」


 そこに畑谷が入ってきた。


「き、緊急辞退なんです。お願いします。貸してください」


 男性は怪訝そうな顔をしたまま部屋の奥へと向かって、少しして戻ってきた。


「これですか?」


 男性は怪訝そうな顔をしたまま角張った形の10センチ大のヒスイを手にしていた。


「それです!」


 畑谷が前のめりでノートを付けようとすると、男性は身を引いた。


「畑谷くん、ノートをそこに置いて、付けて貰えば?」


 オレは思わず言った。


「そうか。すみませんが、ノートの上に石を乗せてください」


 と、畑谷はカウンターのところにノートを置いた。

 男性は怪訝そうな顔をしたまま、恐る恐るヒスイをノートの上に置いた。

 その角張った加工には見覚えがあった。オレが出品しているオークションにこのような加工で出している人がいた。ハンターの名はワタナベだったかワタベだったか…。

 オレのオルダが共鳴しなかったのは一度挨拶済みだったからだ。


「ありがとうございます。助かりました」


 スッキリした顔で畑谷は言った。挨拶が無事終わったのだろう。


「いえ。もういいですか?」


 男性は怪訝そうな顔をしたままオレたちを見ている。


「はい、ありがとうございます」


 男性がヒスイを手に取ると、畑谷が笑顔で答えながらノートを手に戻した。


「お尋ねして良いですか?」


 男性がヒスイを手に部屋の奥に戻ろうとしたところを止めるようにオレは聞いた。


「まだ何か?」


 男性は怪訝そうな顔のままオレを見た。


「そのヒスイ、どうやって手にしたのですか?」

「なぜ?」

「東京のオークションで出品されていたものかとお見受けしましたので…。オークションに参加されたのですか?」

「知人が奉納したものです」

「知人は東京の方ですか?」

「答える必要はないかと思いますが…」

「そうですよね…失礼しました」

「もういいですか?」

「知人の方は、黒髪の女性ですか?」


 男性は明らかに動揺をした。


「答える必要はないかと思います」


 男性は部屋の奥へと戻って行った。


「思い当たる人物がいるんですか?」


 やり取りを黙って見ていた畑谷が言った。


「部分、部分ではな。それが誰かという見当はついていない。本当はもう少し聞きたかったが…笹嶺神社の慰霊祭の事とか…でも無理そうだな。完全に警戒してる」


 オレは直ぐにでも朱里さんに確認したかったが、電波が届いていないことを思い出し、診療所に戻ったら確認メールをすることにした。


「では、永福寺に行こうか」

「そうっすね、急ぎましょ」


 オレたちは、星影神社を後にして永福寺へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ