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ORDA オルダ~蟲の住む石~  作者: ふじしー
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27.心松寺

 昼食は、今日も食堂を利用することにした。徒歩3分程度なので、村役場の駐車場に車を残し、歩いて向かった。

 店のおばさんはオレのことを覚えていたようで(おそらく村の外の人間が珍しいからだろうが)、


「いらっしゃい。空いてるカウンターに座りぃ。今日はカレーにするけぇ?」


 と注文する前に聞いてきた。

 オレたちは、おばさんに言われるままカウンター席に並んで座った。


「カレーおすすめですか?」

「おすすめよぉ。すぐ出るよ」

「では、カレーで。畑谷君は?」

「じゃあ、俺もカレーで」


 おばさんは注文の途中で用意しはじめたようで、ものの30秒で「あいよ」とカレーが2つ出てきた。


「早っ!」


 畑谷が驚いている。

 その横で「いただきます」とオレは食べ始めた。

 畑谷も慌てて「いただきます」とスプーンを手に取った。


「隣の人は友達けぇ?」


 おばさんは畑谷を見て言った。


「いや、今日知り合ったばかりです」


 おばさんは「えぇ?!」と目を丸くして驚いた。 


「自分はなんでこの村に来たずら?」

「あ~、ちょっと耳鳴りが酷くて、それを治す方法を探しに」


 畑谷の回答は、彼目線では概ね正しいのだが、おばさんには通じなかったようで、


「は? 耳鳴り?」


 おばさんは、何を言っているの?という感じの反応をした。

 畑谷はおばさんの反応にお構いなしで「はい」とニコやかに返事をした。

 おばさんは、あからさまな作り笑いで「へえ」と返し、他のお客の対応を始めた。


「おまえ凄いな」


 思わずオレは畑谷に言った。しかし通じていないようで畑谷は頭に「?」を付けた。

 カレーを食べ終わり、オレたちは黙光寺を訪れる前に、一番最初に建立されたとする心松寺に行くことにした。

 役場で車に乗り、1分程度で心松寺に到着した。


「小学校発祥の地なんですね」


 畑谷は、寺の門をくぐりながら昨日のオレと同じ反応をした。


「寺小屋でもやってたのだろう」


 オレは予想で答えた。

 門をくぐり、境内に入ると右側に手水舎があった。どこにでもあるような平凡な手水舎であり、黙光寺のようにヒスイは使われていなかった。周辺に由緒を探したが、どうやら無さそうだ。少し進んで左側に梵鐘、正面に本堂があり、その奥が墓地となっていた。

 昨日と同様に、オルダが鳴かないので、ここに別のオルダがいないことは確定した。

 

「あそこにお坊さんいますよ」


 畑谷が墓地を指して言った。そこには墓地の通路をほうきで掃いている坊主頭の住職らしき人物がいた。

 住職らしき人物はオレたちの声が聞こえたのか、こちらを向いて会釈をした。

 オレたちは釣られて会釈をし、住職の方へと歩き出した。


「お墓参りで…ではないですかね」


 住職らしき人物は、オレたちが花も線香も持っていない為、墓参りではないとすぐに理解したようだ。


「あの、お話をお伺いしても良いですか?」


 オレが住職らしき人物に聞くと、住職らしき人は怪訝そうな顔をして「はい」と答えた。


「笹嶺神社で倒れていた男のことをご存じですか?」

「ええ…」

「オレたちは彼の知人で、彼が何故あんなことになったのか調査しておりまして」


 オレがそう言うと、畑谷が初めて聞きましたという顔でこちらを見た。余計な反応はしないでくれ、と心から思いながら、オレは話を続けた。


「この寺ができた時の話、あと、ご存じでしたら笹嶺神社の慰霊祭の話をお聞きしたくて」

「はあ…。この寺ができた時の話ですか」


 住職らしき人物は、オレたちを交互に見て、


「鬼虎の話を知ったうえで、こちらにお越しということですよね?」

「はい、その通りです」

「この村の寺は、千代の呪いを鎮めるために次々に建てられたと伝わっていますが、うちは江戸時代の寺請制度を受けて、事前に寺を建てる準備をしていたらしく、修業に出ていたようです。修業を積み、和尚となった初代が、1690年にこの地域を納めていた有力者の支援を受けてこの寺を建立したと伝わっています。それがたまたま鬼虎の時期と重なっていたと聞いています」

「この寺は鬼虎の件とは無関係ということですか?」

「うちが鬼虎の件に関わったかどうか分かりませんが、千代の呪いを解くために祈祷したという話は伝わっています。しかし、うちの祈祷では改善されなかったようで、それぞれが独自に勝手に寺を建てたということです。その時期に檀家制度に混乱が生じたという話があります」

「鬼虎の件は本当にあった可能性があるということですか?」

「千代の呪いを解くために祈祷したという話は伝わっておりますので、おそらく千代は存在していたのだと思います」

「笹嶺神社の慰霊祭も、千代の呪いから来たものなのでしょうか?」

「私どもに伝わっている話では、亡くなった人や動物を弔うものとして江戸時代に行っていたということですが、千代の呪いからきたものかどうかは、申し訳ないですが分からないです」

「そうですか…」


 この寺では、それ以上の情報を得ることはできなかった。

 オレたちは住職らしき人物に礼を言い、心松寺を後にし、黙光寺に向かった。

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