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ORDA オルダ~蟲の住む石~  作者: ふじしー
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21.和綴じノート

 なぜ、こんなことになったのだろうか。

 俺、畑谷健一はあの日以来ずっと耳鳴りに悩まされている。

 大学の教授の家に行き、リサイクルできそうなものを回収して、古本を古書店に売りに行ったまでは良かった。その後である。

 耳鼻科に行っても、脳神経外科に行っても、検査の結果は異常なし。病院へ行くと耳鳴りがしないため説明も上手くできなかった。結局ストレスのせいかもしれないと言われただけで、全く改善しなかった。

 店や自室にいると24時間ずーっと耳鳴りが続く。店を出ると耳鳴りが止む。それに気づいて、俺は姉貴に店を任せて、しばらくの間、ウィークリーマンションの一室を借りて生活することにした。

 それでも街を歩くと、時折耳鳴りに悩まされる。ギーーーーーーーーーと耳の奥に響く音。

 原因はこれだと思っている。そもそもおかしいのだ。これは教授の部屋に置いてきたはずである。それなのになぜ、いま、ここにあるのだ。おかしい。

 俺の目の前には一冊の和綴じのノートがある。教授の部屋の本棚にあったものだ。確かに置いてきたはずだったのに、古本の中に混じっていた。これは買い取れませんと、古書店の店主に突き返された。教授の研究資料だろうと思うと勝手に捨てられず、稲塾大学に届けようとも考えたが、そうなると俺がこのノートを所持していることが不審に思われるような気がして二の足を踏んだ。

 恐ろしいのは、このノート、どこに置いても、どこにしまっても、気づくと俺のバッグの中に入っているのだ。ノートが勝手に動いているとしか思えない。そんなことがあり得るのか? ノートに足でも付いているというのか。

 貯金には限界がある。一日2100円の安いウィークリーマンションではあるが、いつまでも住むわけにもいかない。どうにかしなければならないと考えた時、ノートを開いてみる気になった。

 教授の家でペラペラと観た時は、乱字すぎて読む気が失せたが、このノートに耳鳴りを止められるヒントが書かれているかもしれない、と藁にもすがる思いであった。

 ノートには、メインとして石の絵と、石の中に虫のような黒いものが描かれていて、その横にそれぞれの特徴が記されている。石は主にヒスイのようで、薄緑や白色が多いようである。虫はORDA(オルダ)というらしい。白色のヒスイには薄い色のオルダがいることもある。石を冷凍庫に入れても、熱湯をかけても、オルダは死なないと書かれ、その横に『不死? 石の中で代替わり?』とメモ書きが足されている。

 また、それぞれのページにヒスイの産地が記されていることに気づいた。多くが新潟県の糸魚川、富山県の境海岸、兵庫県の加保坂、岡山県の大佐山となっている。

 このどこかに行けば、耳鳴りの原因が分かる人に出会えるだろうか。そう思いながら読み進めていると、石も虫も描かれていないページが現れた。家系図のようなものが描かれていて、『鬼虎』『千代』の文字と、その間に名前をつなぐ棒線、そこから下に棒線が伸び、『子』と書かれている。『子』には丸印が付けられ、横に『オルダ?』と書かれている。そして、このページにも地名が書かれていた。静岡県の根音村。検索すると、静岡県ではあるが、山梨県の中にあるように見える。今住んでいる場所から一番行きやすそうな場所である。

 ここに行ってみたら、何か分かるかもしれない。

 俺は根音村に行くことを決めた。


 ひたすら車を走らせること約4時間、富士山近くの山間部にある集落のような場所に辿り着いた。カーナビによると、ここが根音村らしい。

 村に入って少ししたところでギーーーーーーーーーーという耳鳴りが強くなってきた。俺は耐え切れなくなり、車を路肩に止めた。横を見ると、小さな診療所があった。

 この診療所で診てもらおうか…。そう思って、俺は道を渡り、診療所へと歩き出した。しかし、耳鳴りがどんどん強くなっていき、あまりの耐え切れなさに思わずしゃがみこんだ。

 その時だった。


「オルダ持っているなら早く出してくれないか。耳が痛いんだ」


 振り返ると、そこには一人の男が立っていた。男は耳を押さえている。それはまるで俺と同じだった。


「オルダ?」


 ああと思い、俺は男に和綴じのノートを差し出した。


「は? オルダだよ。オルダ。早く、もう耐えられない」


 男の言っている意味が分からなかった。


「石を早く出して」

「石なんて持ってないです。俺の知ってるオルダは、このノートです」


 男は、俺の反応を見て、首を傾げ、ノートを受け取ると、自分の持っていたペンダントのようなものをノートに付けた。

 その瞬間、耳鳴りの音が少し収まった。しかし、まだ消えない。音の一つが消えたという感じだ。

 男のペンダントには白い石がついていた。


「どういうことだ?」


 男はノートをまじまじと見ている。

 男は、俺がまだ耳を押さえていることに気づき、「付いてこい」と俺の腕を引き、診療所の中へと連れて行った。

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