白熱の体育祭【挑発と策】
と、そこへ、聞き慣れた笑い声と共に、あいつが現れた。
「はっはっは! ユリウス。お前も律儀な奴だなぁ。何もこんな時まで俺に尽くさなくたっていいのに。勝負の場じゃ無礼講。そんなこともわかんねぇのか? 堅物KY」
「うっ、会長ー……」
上司である瓢介からのいじりが堪えたのか、ユリウスはしょげた顔をする。
「ま、なんにしても、これで俺らの勝ちは決まったようなもんだな」
「は? 何言ってんの? まだ騎馬戦が残ってるでしょ?」
「いやいや。そう簡単にはいかねぇよ? あんたもそう思うよな?」
瓢介がそう問いかけると、コハクは苦い顔をして頷いた。その訳は前にも触れた懸念にある。
もう知ってると思うけど、瓢介の統率力と頭脳は界黎学園屈指であり、団体競技、特に疑似的な戦である騎馬戦ともなれば、それらが遺憾なく発揮されてしまう。こいつが軍師役としてクラスをまとめ上げたら最後、戦況を自在にコントロールして、私達や他のクラスを蹂躙しかねない。
それをコハクの口から聞いたB組の間に、戦慄が走った。
「はっはっは! そういうこった。騎馬戦で大事なのは、体力じゃねぇ。知力だ。つーわけだから、少しは楽しませてくれるように、頑張ってくれよ。そこの石頭がいる以上、あんま期待してねぇけど。はっはっはっ!」
勝ち誇ったような口調でそう言うと、瓢介は高笑いをしながら自分のクラスのところへと帰っていった。
いつもなら『陽気だなぁ』で済ませられるあの笑い方も、神経を逆なでしてるみたいで、ものっすごく腹が立つ。ここまであいつの笑いにムカついたことは、後にも先にも無いんじゃないかな。
「どうすんの! 相手はあの瓢介だよ!? 誰か、あいつをギャフンと言わせる策とかないの!?」
ミュミュ。気持ちはわかるけど、そんなのがあったら、こっちが教えてほしいくらいだよ。もっともそれはみんなも同じみたいで、クラス全体に焦りと絶望のムードが漂う。
その空気を打ち破ってくれたのは、コハクの一言だった。
「……1つだけ、あるにはあるぞ」
「ほんと!? 教えて!」
「うむ。だが、よいのか? 妾はここに来てまだ1ヶ月も満たん若輩の新参者じゃぞ? そんな妾からの提案を採用して、本当によいのか?」
コハクの口ぶりからして、転校生である自分より、クラスのことをよく知る奴の意見を尊重すべきだって言いたいんだと思う。
だとしたら、気を遣いすぎだよ。コハク。
「うん! 日にちなんて関係ないし、あんたは私達の仲間でしょ?」
「……ふっ、それもそうじゃな。よかろう。ならばそれでいくとしよう。時間がない故、手短に話す。皆、心して聞け」
「うん!」
そう返事して、コハクを中心に円陣を組むと、コハクはこの学園ならではのルールを有効利用した策を私達に説明した。




