白熱の体育祭【昼休憩】
そんなわけで、全勝で野球を制した私とイグニス達は、昼休憩をとるためみんながいる教室に戻った。
話を聞くと、他の競技に出てたみんなも健闘したらしくって、短距離走に出てたユリウスや自由形とリレーに出てたアクアを始め何人かは、前評判通りの大活躍を見せて圧勝していた。
アクアは流石の一言だけど、ユリウスもとはね。普段はやな奴だけど、こういう時はほんと頼りになるよ。
もっとも、活躍したのはアクア達だけじゃない。あれだけ運動音痴を公言していたコハクとカスミンも、障害物競走でなんと1着になってた。これにはクラス全員が驚かされる。
「え!? マジで!?」
「うむ。障害物競走で大事なのは運動神経ではない。要領の良さじゃ。まぁ、平均台から落ちそうになった時は、少し肝を冷やしたがの」
「それを尻尾走りで持ち直したコハクさんは、すごすぎるよ」
んなトリッキーなことを……コハク。あんた、ほんとに運動音痴?
「カスミンは?」
「霞には妾がスタート前に入れ知恵をしての。『最後の障害であるパンの中にエクセばぁが作った限定パンがある』と言うたら、凄まじい勢いで障害を突破していきおった」
カ、カスミンの食欲、恐るべし……
と、ここまでは良かったんだけど、やっぱり首位独占ってわけにはいかなかった。
コウメイは案の定ビリだったし、柔道やマラソンとかに出てたみんなも、他のクラスの奴らにボロ負けしたらしい。
特にヒドかったのは、優勝確実とまで言われていた剣道部主将のデュラハン。開会式を終えるまではやる気に満ち溢れてピンピンしてたのに、今となっては包帯グルグル巻きになり、『この世の終わりか』ってぐらい落ち込んでる。
「ちょ、どうしたの、それ!? 何があったの!?」
そう尋ねると、デュラハンは暗い表情をしたまま、試合の詳細を語ってくれた。
遡ること数十分前。決勝まで駒を進めたB組は、A組と対戦。副将までやられたものの、デュラハンの奮戦の甲斐もあって、なんとか相手の大将を引きずり出すことに成功した。
後1人倒せば優勝。そんな時に大将として出てきたのは部員ではなく、まさかの瓢介だった。実家が妖怪をまとめるヤクザみたいだからってことで、ドスの扱いには慣れてるけど、剣道は素人同然。そんな相手に、デュラハンは最初、油断してたらしい。
けど、いざ始まってみると、終始余裕を見せる瓢介にペースをつかまれ、こちらの攻めをのらりくらりといなされ続けた。遊ばれてると感じたデュラハンは一気に勝負をつけようとしたけど、そこを狙ってたらしく、軽い脳振盪を起こすほど力強い面を逆にくらい、先制されてしまった。
「おら、立てよ。脳振盪を起こしてる場合じゃねぇぞ?」
この言葉で完全に火がついたデュラハンは、続く2戦目。開始早々怒濤の猛攻に出たんだけど、瓢介を本気にさせることはついになく、最終的には、
「はっはっは! 一昨日来やがれ。すっとこどっこーい!」
の言葉と共に、強烈な突きをくらい、会場の壁までぶっ飛ばされた。
部員ですらない相手に完膚無きまでにやられ、身も心もボロボロになったデュラハン。選手生命すら左右しかねないほどのトラウマを植え付けられ、意識が遠のきつつあるこいつの耳に最後に聞こえてきたのは、
「はっはっは! 顔洗って出直してこーい」
という瓢介の陽気な声だった。
それを聞いた私達は、瓢介の所業に言葉を失う。
(あのバカ……容赦なさすぎ)
私は思わず頭を抱えた。生徒会長が生徒の夢潰しにかかってどうすんのよ。少しは空気を読みなさいよ。バカ瓢介。
とまぁ、そんなこともあって、午前の部終了時点でA組が1位。次いでB組、C組、D組という結果になった。トップ通過とはならなかったけど、午後の団体競技の結果次第じゃ、まだ優勝できる。デュラハンとコウメイがちょっと心配だけど、気持ちを切り替えて、団結すればなんとかなるよね。そういうわけだから、頼んだよ。2人共…………




