白熱の体育祭【陽炎】
その裏の攻撃。2アウトにはしたものの、気の緩みから内野がエラーをしてしまったことで1点とられてランナー2、3塁。ホームランでサヨナラとなるこの場面で、バッターはよりもよってランド。最後にして最悪の相手と対峙することになった。
「面白くなってきたな。ランド」
「あぁ、まったくだ。俺が打てば同点かサヨナラ。逆にお前が打ち取ったらお前達の勝ち。これほどシンプルで熱い勝負はないだろう」
「違ぇねぇ。それだけに、負けらんねぇよ」
「それはこっちのセリフだ」
そう言ってランドが構えたのを確認してから、イグニスは球を投げた。
1球目はファイアーストレートでストライク。2球目はメテオフォークをわざと外してボール。3球目は再びファイアーストレートでインローを攻めてストライク。これで2ストライク1ボール。次の球で最後にしようと思っていた私とイグニスは、サインによる意思疎通の末、あれでトドメを刺すことに決めた。
「ラストいくぜ。ランド。これでしまいだぁ!」
そう言ってイグニスは炎を纏った球を投げた。
その直線的な球筋に、ランドは多分、ファイアーストレートだと思ってただろうけど、それは違う。途中からゆらゆらと揺らめくように大きく変化するムービングファスト。イグニスのもう1つの魔球・陽炎だよ。
それにまんまと引っかかったランドは、タイミングを外されたことで早く振りすぎてしまい、バットは空を切った。
空振り三振でゲームセット。4-2でB組の勝利だ。たかが体育祭の1種目だけど、ここまで白熱した試合を制した私達は嬉しくて仕方ない。
その一方で、あと1歩で負けたC組の面々は悔しそうにしてたけど、主将でありチームの中心人物であるランドは、完全燃焼したらしく、妙に清々しい顔をしていた。
「……完敗だイグニス。流石はうちのエースだ」
「お前も見事だったよ。流石はうちのキャプテン」
イグニスとランドはそう言うと、最後は互いの健闘を讃えるように固い握手を交わした。
これから先、2人はプロで何度も対戦すると思う。その時には、チームの都合とかで今日みたいに心から燃え上がるような熱い勝負はできなくなるかもしれない。けど、別に寂しくはないよね? だって、この試合の興奮と2人の友情は永久に不滅だから、さ。




