白熱の体育祭【野球】
そんな心配をするほど余裕の私達は、続くA組との試合も快勝し、この競技の優勝決定戦でもあるリーグ戦最後の試合に臨んだ。
だけど次の相手は、さっきまでの2クラスのように楽に勝てる相手じゃない。なんたって相手は、ランド率いるC組だから。
「へっ、お前との試合を楽しみにしてたぜ。ランド」
「俺もだイグニス。お互いいい勝負をしよう」
そう言ってイグニスとランドは握手を交わすと、お互いのチームのベンチへと戻っていった。
イグニスが戻ってくると、早速、作戦会議が始まった。
もうお察しだとは思うけど、要注意の選手は、野球部のキャプテンを務めていたランド。甲子園優勝校のクリーンナップを担うほどパワーも然る事ながら、これまでイグニスの女房役として支えてきたリード力が発揮されれば、棒球でも三振や凡打になりかねない。
そんな奴がキャッチャーにいるチーム相手に快勝は、おそらくできない。早々にコールド勝ちを諦めた私達は、とにかく塁に出ることだけに専念し、私とイグニスで点を取るという作戦をとることにした。
ところが、いざ試合が始まると、それすらも難しいことを私達は思い知ることになる。素人同然のピッチャー相手に、2者連続で三振をとられてしまったの。流石に危機感を感じた私は、ネクストバッターズサークル内で気合いを入れ直し、打席に向かった。
「ほう、お前か。いいのか? 今回は憑依しなくて」
「心配ご無用。今の状態でも、内野の頭ぐらいなら越せるよ」
「ふっ、なめられたものだな」
ランドがそう言ったあと、ピッチャーが投げてきた。
1球目、2球目とボールが続き、3球目。外角低めに球がきた。またボール? と一瞬思ったけど、これは違う。コースギリギリに投げられたストライクだ。自慢の選球眼から僅かな時間でそう判断した私は、迷わず打って、打球をライト前まで飛ばした。シングルヒットだ。
(これで先制点の望みは繋いだ。頼んだよ。イグニス)
出塁した私は塁上から、イグニスの打席に期待する。
2アウトランナー1塁。長打さえ出れば1点が入る場面なだけに、イグニスのバットを持つ手にも力が入る。
それを見たランドは至って冷静にサインを出し、インローギリギリのストレートと低めの球で2ストライクに追い詰める。
そこから2球続けてボールを投げて、カウントは2ボール2ストライク。打つ気満々のイグニスに向かって投げてきた第5球目は、真ん中高めのストレート。自身が最も得意とするコースに来た球に、イグニスは全力でスイングする。
打球はそのまま天高く打ち上がり、フェンスの向こう……ではなく、
「残念だったなイグニス。最初は……俺の勝ちだ」
ランドのミットへと吸い込まれるように入っていった。長打を打とうとして力んでいたイグニスの打撃の癖を知っていたランドのリード力。それによってキャッチャーフライとなり、私達の攻撃は4人で終了した。
(こりゃ、予想以上に手強いかも)
改めてランドを敵に回す恐ろしさを知った私達は、気を引き締めて守備についた。




