楽しみを求めて新天地へ
それでもまだ、先生は私を元気づけようとしてくれていた。
「……僕が君の両親なら、きっとこう言うだろう。『もう十分だ。お前はお前の人生を生きろ』と」
「……え?」
「おそらく君のご両親は、君が地縛霊としてここに留まることを望んではいない。君の未練である誰よりも人生を謳歌することを望んでいるはずだ。それが親心というものだよ」
「けど……無理だよ。今更楽しめったって、私はもう……」
そう無理だ。存在が危ういってのもあるけど、ずっと地縛霊であり続けたせいで、何をやったら自分が楽しめるのか、それすらも忘れてしまっている。
そんな私がどうやって楽しめっていうの?
「遅くはない。楽しむことさえできれば、君は存在することができる。それでももし、楽しむことを忘れたというのなら、僕らが力になる。だから君は失った青春を、人生の楽しさを取り戻すんだ」
「取り戻すったって、どうやって……? それに、僕らって?」
そう聞くと、先生は立ち上がり、界黎学園について説明を始め、
「僕は今、教師として、生徒を誘致する活動をしている。君さえよければ、その学校に、界黎学園高校に通ってみないか?」
と、打診してきた。あらゆる種族が通い、完全平和と差別撲滅のための学校。先生からの話を聞いてるだけで十分魅力的だった。
「いいの……?」
「もちろん。大歓迎だ」
先生の暖かい言葉に希望を抱いたその時、誰かが私の背中を押した気がする。振り返るとそこには、私達一家が眠る墓が。
(……そっか……そういうことなんだね。お父さん。お母さん)
そう思った瞬間、私の霊力は回復し、透けた体が元通りになった。先生とお父さんとお母さん。3人のおかげで私は再び浮遊霊に戻ることができたんだ。
その後、墓地を後にした私は、先生に同行する形で世界中を旅して回った。忘れかけていた楽しい気持ちを取り戻すために。
それから約3ヶ月後の西暦2155年4月2日。何度目かの春を迎えたこの日、あの墓地に戻ってきた私は、制服姿でお父さん達が眠る墓に手を合わせた。
高校に入学するのに150年もかかってしまった。親より先に死んだことも含めて、とんでもない親不孝だ。それでも、ここに留まり続けるよりかは、ずっといいよね?
(じゃ、行ってくるね。お父さん。お母さん)
出発の挨拶を済ませた私は、前よりも清々しい気持ちで歩き出す。
懺悔と後悔の時間はもう終わった。これからは人生と青春を謳歌するんだ。まだ見ぬ友達と暮らすあの町で、界黎学園都市で…………




