時間がない!
それから時間が経ち、日が暮れた午後6時半頃。僕達3年B組は、食堂で会った翔馬さん達や千尋先生、サダコ先生の呼びかけに応じたメデュシアナさんとアインさんと合流して、学生寮前に集合しました。
ただ、そこには最初から拒否していたアレクシアさんとユリウス君だけじゃなく、滑川君の姿もありませんでした。
「あれ? 滑川君は?」
「瓢介さんは、ゆかりさんに関する仕事を理事長から頼まれたとかで、ここにはいません。私もそのお手伝いをするつもりだったんですが、瓢介さんから『お前もあいつの世話になったんだろ? だったら行ってこいよ』と、言われまして」
そっか。滑川君も理事長も、岸川さんのために……その上で、メデュシアナさんを行かせたってことは、少しでも力になりたいと滑川君なりに思ったからなのかな。
「そうか……ということは、これで全員だね? なら、そろそろ行くとしよう。早くしないと、取り返しのつかないことになる」
先生の言葉に、岸川さんの心を一刻も早く救いたいと思う僕らは、力強く頷きました。
ならば行動あるのみ。そう思い、学生寮に入ろうと1歩踏み出そうとした時、キキさんが血相を変えて中から出てきました。
「あっ、みんな! 大変だよっ!」
「キキさん! どうしたんですか? まさか、ゆかりの身に何か!?」
「多分……」
動転したキキさんはそう言うと、何があったのか説明してくれました。
要約すると、ここ2、3日の間、学生寮では岸川さんの暴走した霊力のせいで、ポルターガイスト等といった心霊現象が、頻繁に起こっていましたが、今日になってそれがピターッと収まったそうです。
それでキキさんは、岸川さんが立ち直ったと判断し、彼女の部屋を尋ねたんですが、どういうわけか、何度呼びかけてもウンともスンとも返事がなく、鍵も施錠されたままになっていることから一大事だと思い、助けを求めて寮から飛び出してきたそうなんです。
マズい。誰もがそう思い、血の気が引いていくのを感じました。
「コウメイ!」
「わかってるミュミュさん! 召喚……稲荷!」
僕はそう言って呼び出した稲荷に、岸川さんの様子を見に行かせました。
数秒後、稲荷が暗い顔をして戻ってきました。その表情から僕は、報告を聞くまでもなく、嫌な予感が的中していたと悟りました。
「……わかった。ありがとう」
「なんて?」
「……岸川さんが、消えかかってるって」
稲荷からの報告に、ミュミュさん達は言葉を失いました。
「まさか、ゆかりちゃん成仏、いや、消滅する気か!」
「そんな!」
「こうしてはいられない。急ごう!」
そう言った先生を先頭に、僕らは岸川さんのことを案じながら、彼女の部屋へと急ぎました。
ある理由から外で待機することを申し出た1人を残して…………
「………………透けてる…………そっか……私、消えちゃうんだ…………」
暗い部屋の中で、体育座りをして俯いていた私は、外の喧騒を耳にしながら、自分の体が半透明になっていくのを見つめて、そう呟いた。
この3日間、食事も睡眠もロクにとらず、塞ぎ込んでいたことや、リミッターが外れたことで、私は制御する術を失い、霊力をずっと垂れ流し続けていた。
そのせいで、霊力がついに底を尽き、存在そのものに影響が出るようになっちゃったんだ。
まさに一大事じゃん。けど……
(いっか。それならそれで……だって、こんな私なんて…………)
そう思うほど私の心は病んでいた。
そんな私の目に飛び込んできたのは、今月のカレンダー。今日は9月16日。私の誕生日であり、命日だ……
「はぁ……また、この日か……私、呪われてんのかな……? 1回目は誕生日を迎えた途端で、今回は日付が変わったらってとこか。神様、私に恨みでもあんの……?」
そう言って皮肉っぽく笑ってみたけど、ちっとも笑えない。それどころか涙が零れてく。
(なんで……? なんでこんなことに……)
いったい、どこで間違ったんだろう? そう思った私は、珍しく振り返ってみることにした。
今まで気にしてこなかった自分の過去や人生を…………
ゆかりがストーリーテラーに戻りました。ここから過去回想編に入ります。




