涙と共に捨てた友情
「翔馬ぁっ!」
恋の激昂に、翔馬はわかりやすく慌てる。
「ま、待ってくれ! ゆかりちゃん! まだ続きがあるんだ! 確かに柚ちゃんはそう言った! けど……!」
「…………もういいよ」
「へ?」
翔馬が素っ頓狂な声を上げた直後、棚の中の薬品の瓶や窓ガラスがカタカタと音を立て始める。例えようのない怒りや悲しみ、絶望によって、先生とサダコ先生が施したリミッターが外れて、霊力が暴走してるんだ。
「人を見る目がない私が、バカだったってことだよね?」
「だ、誰もそんなこと……!」
「言ってるも同然じゃんっ! みんな、ヒドいよ……隠し事したり、陰口を叩いたりしてさぁ! 友達だと思ってたのに、バッカみたい!」
「ゆかり、何言って……」
「私がやってたのは、所詮、友情ごっこだったってことでしょ? ならいいよ。みんななんか……みんななんか…………だーいっ嫌いっ!」
そう怒鳴ったと同時に、霊力が学校中に放たれ、全てのガラスと電灯が粉々に砕け散った。
「これが、ゆかりの霊力……抑え込まれてたとはいえ、まさかここまでなんて!」
「言ってる場合じゃないよ! 早いとこなんとかしないと、ゆかりが絶望に押し潰されて、悪霊になっちゃう!」
「マジか! くそっ! どうしてこんなことに……」
「あんたのせいだよ翔馬! あんたがあいつの最も嫌うことを、辛い現実を突きつけたから!」
「そういうことかよ……ちくしょう! 俺って奴は……!」
翔馬は激しく後悔してるようだけど、もう遅い。霊力の暴走によって起こる物体浮遊現象・ポルターガイストが校内の至るところで発生している。
それを止めようと、千尋と恋が必死に説得を試みてるみたいだけど、精神的ショックから心を閉ざしている私の耳には一切届かない。それぐらい理性を失っていた。
だからかな? この時私は、自分の中で生まれたこの醜い感情が少しでも収まるんなら、学校ぐらい潰しちゃってもいいかなって、本気で思ってた。
それを防いでくれたのは、駆けつけてきた先生とコウメイとカスミンとミュミュだった。
校内で発生したポルターガイストから、すぐに私の仕業だと察知した先生は、近くにいたコウメイ達を連れて保健室まで来たみたい。
「ゆかりっ!」
「岸川さんっ!」
先生達の呼びかけが耳に届いたことで、私は少しずつ落ち着きを取り戻していく。それに伴って霊力も沈静化。浮遊していた椅子や机は力を失って、床や地面に落下する。
「ゆかり……いったい何が?」
心配そうな目で見るカスミンにそう聞かれて、完全に冷静さを取り戻した私は、保健室の惨状から、状況を把握し、罪悪感から逃げるように呼び止める先生の声を無視して、無言で学校を飛び出した。
カスミン……あんなヒドいことをした私のことを心配してくれるなんて……いや、カスミンだけじゃない。先生もコウメイもミュミュも、翔馬達もきっと……
(なぁんだ。みんな、揃いも揃っていい奴ばっかじゃん。よかった……最低なのは、みんなじゃない。私の方だったんだ……)
あんないい奴らに私はなんてことを……そう自分を責めた私は、人知れず流した涙と共に、生まれて初めて友情を捨てた………………




