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親友の闇

 そもそも柚は、生まれながらにして、私達のような一般人じゃなかった。

 特務機関・ブラックナイトに所属する拷問係兼元司令代理。コードネーム・黒猫。それが柚の真の姿だった。


 ブラック・ナイトは人類を発展させることを至上命題としていて、そのためなら手段を選ばない過激な組織だったらしいんだけど、私が8歳の時に、警察と龍と未来によって1度壊滅寸前にまで追い込まれ、そのせいで柚は、両親や憧れの人を一夜にして全て失ったそうなの。

 以来、柚は、元凶である龍と警察を目の敵とし、執拗に彼らの命を狙う復讐鬼と化した。

 翔馬いわく、学校で白昼堂々戦ったこともあるし、その復讐を果たすために、同級生や仲間を何人も犠牲にしたんだって。

 で、結局最期は、龍と決着をつけようとしてる最中に、仲間に裏切られて、龍と一緒に命を落とした……


 これが、今まで伏せられていた柚に関する真実。それを聞かされて、私は愕然とした。


(嘘でしょ? あの柚が、拷問殺人狂の復讐者? そんなの、信じられない。だって、だってあいつは……!)


「……えない。ありえないよ翔馬! あんた、わかってる!? あの柚だよ!? ドジで能天気でマイペースだけど、誰よりも優しいあいつが、そんなことするわけないじゃんっ!」


「それは、あの子の演技だ」

 私の必死の訴えに、翔馬は非情にもバッサリと言い捨てた。


「え……?」


「ゆかりちゃんが知ってる柚ちゃんのあのキャラは、自分の本性を偽るために演じてたもの。本当の彼女は、目的のためなら顔色1つ変えずに人を殺せる冷酷非情な殺人者だ。それに、ゆかりちゃんには悪いけど、あの子、こうも言ってたぜ」


「……なんて?」

 私は答えを聞くのが怖かったけど、恐る恐る聞いてみた。


 すると、その答えが出るより先に、保健室の扉が勢いよく開いた。

 土産を買って戻ってきた千尋と恋だ。鬼のような形相で入ってきたところから察するに、途中から話を聞いてたみたい。


「翔馬っ! ゆかりの気持ちを察しなさいよ! バカッ!」


「そうだよ! 折角傷付けないようにしてたのに、全部パーじゃない! 親友のそんな話、あんただって、聞きたかないでしょ!?」


「あっ! すまねぇ! けど、隠しててもあれだし、もう時効だと思って、つい……」


「何が時効よ! そんなのに時効もヘッタクレもあるかぁっ!」

 そう言いながら、千尋と恋は翔馬の襟首を掴み、前後に大きく振り回す。


 でも、今の私からすれば、恋と千尋の怒りや翔馬の弁解なんてどうでもいい。柚がなんて言ってたか。私の興味はそれだけしかない。


「なんて……なんて言ってたの?」


「ゆかり。聞くなっ!」

 そう言って恋は、聞かせまいと私の耳を塞ごうとしたけど、恋の手より先に、翔馬の声が耳に届いた。


「『私に友達なんていない』だってよ」

 その瞬間、目の前が真っ暗になり、今まで積み上げてきた何かが音を立て崩れていくような感じがした。

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