なーんだ。そういうことか
午後1時半。誰よりも早く視聴覚室に来ていた私を見て、恋は色々と察してくれたらしく、ソロモン戦争についての説明に、多くの時間を割いてくれた。
柚は15歳の時に、伝説の殺し屋集団・死獣神とその被害者の会と結託した特務機関・ブラック・ナイトの抗争に巻き込まれて死んだんだけど、その後、デモゴルゴンらによって復活させられた柚は、ソロモンの一員として広告塔にされたり、未来の旦那で死獣神のエースキラー・青龍こと、青山龍や翔馬達と戦って、友達と戦うという状況を利用した動揺を誘っていたらしい。
と、そこまで聞き、合点がいったところで、終了のチャイムが鳴った。
「……っと、もう終わりか。じゃあ、みんな。最後にこれだけは忘れないで。いい? どんな理由があろうと、絶対に戦争だけは起こさないこと。私欲でやるなんて、もってのほかだからね。それだけは肝に銘じておいて。以上。解散!」
恋からの最後の言葉を聞いて、みんな一礼し、視聴覚室を後にする。
その人波を縫うように廊下を歩く私の足は、幽霊だからとか関係なく、軽かった。それこそ、途中でスキップを挟むぐらいに。
(なーんだ。そういうことか。あのドジで天然の柚のことだから、活動前のソロモンの機密か何かをあの世で見ちゃって、それで利用されたんだ。もう、みんなして深刻そうな顔をするから、勘違いしちゃったじゃない)
そう思うと、なんだかホッとした。やっぱり柚は、死んでも柚のまんまだったんだ。
それなら話は早い。明日みんなに会ったら、真っ先に柚に対する誤解を解こう。その方が柚のためになるよね?
(あ、でもその前に、千尋に会わないと。『柚は今、翔馬や龍がいるエピウスで暮らしてる』って恋が授業で言ってた。てことは、千尋を通じて会うこともできるってことだよね?)
そうと決まれば、善は急げ。コウメイ達には悪いけど、柚と会うことを優先しよう。そのためにも、保健室に急がないと…………
保健室に着くと、さっき柚について教えてくれた恋と、何故か千尋に手当てされている翔馬がいた。
「失礼しまーす。って、どうしたの? 翔馬」
「護身術を教えるという名目で暴漢役になって、女子の胸やら尻やらを揉みまくったら、全力で投げられて全身打撲になったんだって」
「それだけじゃねぇよ。水の精霊の女の子の引き締まったヒンヤリボディを鷲づかみしたら、彼氏の炎の精霊の火の玉ボールをくらわされちまった」
あー、なんとなく理解した。イグニス、グッジョブ。このバカならアクアを寝取りかねなかったから、いいお灸になったと思うよ。
「もう、翔馬ぁ。言ってくれたら私がいくらでも相手すんのにぃ」
あんたは黙ってろ。色欲サキュバス。
「あ、そういや、恋。瞳達へのお土産って、まだだったよな?」
「あっ! しまった忘れてた! ごめん! ちょっと買ってくる!」
「買ってくるったって、ここの購買、品揃え割と豊富だよ。私も一緒に行こっか?」
「お願い。千尋!」
そう言うと、恋と千尋は学校土産を置いている購買へと駆け足で向かった。残ったのは私と翔馬だけ。
って、千尋。あんた、保険医なのに治療ほったらかして出ていいの?




