知りたい
食堂を出て私がまず思ったことは、知りたい。些細なことでもいい。何が原因で柚がそう呼ばれることになったのか。それを知れるんなら、どんなものにでも縋りつく。それだけだった。
そう思う私の目に飛び込んできたのは、特別授業の内容が記された貼り紙。さっき、恋が言ってた奴だ。
「これ……」
「あ。もしかして、あなたがゆかりさん?」
不意に呼ばれて振り向くと、そこには清楚な感じの女性がいた。
「えっと、あなたは?」
「私は青山未来。同じ中学の同級生なんだけど、こうして会うのは初めてだよね? よろしく」
青山未来って、アインの開発者で、遺伝子操作によって生み出される人工ミュータント・デミ・ミュータント研究の第一人者であり、被験者第1号でもあるっていう、あの?
確かペガサスとも知り合いで、1度死んだ時、生き返らせてもらった過去があるって聞いた気が……
てか、今、同じ中学の同級生って言った? それにその名前、生前にも……
「もしかして、柚が言ってた叶未来って、あんた?」
私の問いに、未来は素直に頷く。
そっか。こいつが……普段、人のことを悪く言わない柚が、未来とその彼氏のことだけはボロカスに言ってたっけ? 『ペガサス君のせいで、いけ好かない女が復活した』とか色々。けど、見た感じ、そんな性悪女には見えないけど……柚は『優しい人は偽善者だから嫌い』って持論をよく展開してたから、そのせいかな?
「それよりどうしたの? 何か困りごとがあるなら力になるけど」
そう言われて私は、未来に食堂でのことを話した。
「そっか。柚さんのことで……」
どうやら未来には、思い当たる節があるみたい。
「うん。ねぇ、あんた、柚から相当嫌われてたんでしょ? てことは、お互いのこととかよく知ってるはずだよね? なんか知らない?」
「……知ってるよ。何もかも」
「じゃあ……!」
「けど、翔馬君達がそこまで秘密にするのは、きっと、あなたのためを想っての行動だと思う。だから、私の口からは……」
「そんな……」
私は残念に思った。手っ取り早く真実を知れる絶好のチャンスだと思ってたから。
そんな私に未来は、助け船を出してくれた。
「……ねぇ、どうしても知りたい?」
「え!? 教えてくれんの!?」
「いや、さっきも言ったけど、私の口からは……でも、それでも真相を知りたいと言うのなら、その道を示すことはできる」
「ていうと?」
そう聞くと、未来は例の貼り紙を指差した。
そこには当然、恋が教える特別授業の内容も書かれてたんだけど、その内容ってのが『ここ15年の戦争について』。
今の私にとって、うってつけの内容だった。
というのも、食堂にいた誰かが、柚のことを『ソロモンの姫』って言ってた。
ソロモンといえば、カスミンがゾンビ化したきっかけとなった5年前のソロモン戦争を起こした魔族の組織だ。
てことは、ソロモン戦争のことを知れば、柚に何があったのかわかるかもしれない。
未来が指し示してくれた一縷の望み。そこに賭けるしかない。
「ありがとう。未来。このお礼は必ずするよ」
そう言って、未来に感謝した私は、恋の授業が行われる視聴覚室へと向かった。
ほんと、助かったよ。未来。柚はあんたのこと嫌ってたみたいだったから、どんな奴かと思ってたけど、案外いい奴じゃん…………




