『忌み子』と呼ばれた大親友
「ふむ……先程からの会話やここでの人間関係から思ったことじゃが、ゆかりの交友関係はかなり広いようじゃな」
翔馬の下劣な言動にも動じず、私のことを観察していたらしいコハクのストレートの感想に、カスミン達も、
「言われてみれば」
と納得する。
「まぁな。ゆかりちゃんはガキの頃から、持ち前の面倒見の良さと社交性があったおかげで、友達ができやすかったからな。ここで生活してる内に仲良くなった奴らも合わせたら、友達100人いるかもしんねぇ」
「流石にそんなにはいないよ。私だって気に食わない奴は気に食わないし、そんな奴と無理してまで仲良くしようとは思わない。人を八方美人みたいに言わないでよ」
「そこまでは言っておらんが、多いのは確かじゃ。謙遜せずともよい。それも1つの才能じゃぞ」
「そ、そうかな~」
そう言う私の顔は、多分照れまくってたと思う。こんなにベタ褒めされることって、人生においてそうないことだろうし。
と、我ながら柄にもない顔をしていると、悪ノリしたミュミュが、
「ねぇねぇ、ゆかり。そんだけ友達がいる中で、ゆかりと1番気が合った友達って誰?」
って、唐突に尋ねてきた。
「え!? えぇっ!?」
「あ、あたしに気を使わなくていいよ。ただの興味本位って奴だから」
そんなこと、急に言われても困るんだけどなぁ。ったく、ミュミュの奴ー……とはいえ、答えを出さないことには、解放してくれなさそうだし……
しょうがない。気は進まないけど、なんとか絞り出してみよう。
まず、この学園都市で知り合った奴限定で考えたら、ミュミュには悪いけど、多分、コウメイか瓢介のどっちかだと思う。あいつらとは話もノリも合うし、そこは間違いない。
だけど、生前の友達も含めたらどうだろう? 幼馴染みでもある翔馬や千尋とも気が合わないわけじゃないし、恋や他の友達も……
いや、1人いた。絶対の自信を持って、大親友と呼べる存在が。
「……みんな大好きで、かけがえのない友達だけど、強いて言うなら……」
「うんうん」
「幼稚園から付き合いのある幼馴染みの猫宮柚って奴、かな?」
そう答えた瞬間、食堂中が水を打ったようにシンと静まり返り、コウメイ達を始め、食堂にいた全員の表情が強張った。
「あれ? どったの? みんな」
何? この空気。私、なんかマズいこと言った?
その正体は、周囲のザワつきに混じった、
「猫宮柚って、あれだろ? 『ソロモンの姫』とかって呼ばれてた」
「バーカ。それは昔の話だ。あの女はこの世界に存在してはいけない忌み子。地獄でも存在を危険視された、まさしく闇そのものだ」
「そんな奴とゆかりは友達だったの? あたし、ちょっとゆかりと距離置こっかな?」
といった柚に対する悪評によって、知ることとなる。
(どうして? どうしてみんな、そんなこと言うの? てか、なんで私より先に死んだはずの柚が『忌み子』なんて呼ばれるほど毛嫌いされてんの? なんで……? 誰か……誰か教えてよっ!)
周囲の声に、いたたまれなくなった私は、耳を塞ぎ、逃げるようにその場から離れた。
「……ミュミュよ。どうやら今の質問は、開けてはならんパンドラの箱だったようじゃ。見よ」
そう言って、コハクが指差した先にあったのは、私が残したお昼ご飯。
今まで、ご飯1粒たりとも残さず食べてきた私だったけど、この時ばかりは、そのことに気付かないぐらいショックだった…………




