コハクとのランチ
西暦2157年9月13日。レミとコハクと幸と出会ってから2週間程経ったこの日の昼休み。
だいぶ高校生活にも馴染んできたコハクと一緒にご飯を食べる約束をしていた私とコウメイとカスミンとミュミュは、食堂を訪れていた。
「あ、コハク。もう来てたの?」
「うむ。ここのスープの味は絶品じゃと知人から聞いておってな。それを確かめたくて、1番乗りしてしまった」
(へー、けっこう子供っぽいとこあんじゃん)
転校初日の挨拶で『齢300歳』って言ったり、この口調のせいで、『こいつ、ほんとはガッツリおばあさんなんじゃ?』って、思ったこともあったけど、ちゃんと子供らしい好奇心はあったのね。
そう思う私の側で、コハクはある一点をじっと見つめている。
その視線の先には……最早昼休みのお約束となりつつあるカスミンの昼ご飯が。ちなみに、本日のメニューは高さ2メートルの特大バーガー。
「……霞よ。お前、その量を食べきる気か?」
率直な質問にカスミンは素直に頷く。
「信じ難いな」
「まぁ、そりゃそうだよね。あたし達も初めて見た時、そう思ったもん」
「ちなみに敷村さん? そのハンバーガーの気になるお値段は?」
「80円」
相も変わらず破格の値段設定。いつもながら度肝を抜かれる。
「い、いくら、賞味期限切れのパティを使ってるからって、この値段は……」
「何故だ? 何故妾は、これほどまでに敗北感を……」
「あー、気持ちはわかるよ。コハク。誰しもが通る道だから」
そう言ってコハクを慰めた私達は、気を取り直して、食事を始めた。
「そういえば、コハク。あんた300歳って言ってたけど、それって猫又基準でいくとどうなの?」
「若い方じゃ。見ての通り、な。猫又の中には、平安時代から生きておる者もおる。もっとも、全ての猫が猫又になるわけではない故、希少種であることに変わりはないがの」
へー。江戸末期頃に生まれたコハクが、子供扱いか……そう考えると、なかなかすごい世界かも。
「では、次は妾の方から質問させてもらうが、よいか? 光明」
そう聞かれて、コウメイは口に入れていたスープを飲み込んで首を縦に振った。
「妾達妖を滅するのが、ぬしら陰陽師の役目だと聞く」
「うん……」
「ならば、妾のような年端もいかぬおなごでも、容赦なく滅するというのか?」
あ、そっか。コハク達妖怪からすれば、陰陽師は恐怖の対象なんだ。そりゃ、聞きたいし、知りたいよね。
コウメイとしては、答えづらい質問だろうけど。
「……そんなことしないよ。僕はまだ修行中の身だし、なんの罪もない妖魔を問答無用で葬ることが、正しいこととは思えない。少なくとも、僕は、ね」
コウメイ含みを持たせつつ、自分に言い聞かせるおまじないのようにそう答えた。
「そうか。それを聞けて安心した。お前ならば、人と妖のよき理解者となれるであろう」
コハクは納得したらしく、そう言って、コウメイの考えに太鼓判を押した。
これでちょっとは報われたんじゃない? コウメイ。あんたの考えをちょっとは知ってる私は、そう思うよ。
前半の山場ということで、ここからしばらく長編となります。ご了承ください。




