言ったはずだよ?
その後、私達3人は瓢介と千尋に救出成功を伝え、1人も欠けることなく、先生達が待つ学校に帰還。待ってくれていたみんなは、幸の姿を見てホッとし、無事で良かったと喜んでくれていた。
「めでたしめでたし、だね」
「うん。これで心置きなく、幸ちゃんのことをお姉ちゃん達に任せられるよ」
「え……?」
あ、そっか……レミは添乗員としてこの町に来たのであって、ここの住民じゃなかったんだ。
てことは、この子達の修学旅行が終わったら、レミとも、また……
そう考えると、ほんとにやだなぁ……こういう現実って。
「そう悲しい顔をしないでよ。お姉ちゃん。また会えるよ。お互い、この世に留まってさえいれば、ね」
「レミ……」
まったく……しばらく見ない間に、しっかりしちゃって。これじゃ、どっちがお姉ちゃんかわかんないよ……
まぁでも、レミの言う通りか。霊でも雪女でも、生きてさえいれば、いつでも会えるよね。昔と違って、何度も……って、我ながらちょっぴり感傷的になっちゃったかな?
それを見て心配してくれたのか、コハクが私達の間に割って入り、
「ふむ……ならばその間、妾がお前の心に寄り添ってやろう」
と、言ってきた。
「え? けど、あんたは……」
「そのことなら心配はいらん。今朝、ルドガー先生に頼んで校長と理事長に許可をとってもらってな。後日、編入試験を受けて、界黎学園高校の3年生のクラスに飛び級で編入するつもりじゃ。そういうわけじゃから、以後、よろしく頼む」
はーっ!? いやいやいや! あんた、修学旅行中だったんでしょ!? それが突然、うちの高校に飛び級で編入って、意味わかんないんだけど!
てか、それ以前に……!
「いいの? そんなことを勝手に決めて。親や友達が悲しむんじゃ……」
「そこも心配無用じゃ。実のところ、この性格のせいか同年代の友人がいなくての。妾が転校して悲しむ者もそうはおらん。それに、親などとっくの昔に死んでおるし、何より妾はこの町をいたく気に入った。それ以上の理由が必要か?」
じ、自由すぎる。おまけに我が強いし……こりゃ、意地でも編入する気だ。こいつ。
ま、それはそれでアリか。来る者拒まずっていうのもこの学校の校風だし、いたらいたで、いい刺激を与えてくれそうな気がするし、ね。
てなわけで、コハクが残ることが決まり、レミと修学旅行生達を乗せた飛行機は、暗くなりつつある空の彼方へと消えていった。
レミ、またね。あんたと一緒にいたこの2日間、すごく楽しかったよ。だからさ、たまには顔見せに来なよ。もう100年以上離れ離れとか、私、耐えらんないから、さ…………
…………あれ? そういえば、さっきからなんか忘れてる気が…………
あーっ! そうだ! アレクシアを倉庫にほったらかしにしたまんまだった! どうしよう。後でしこたま恨み節を言われるかも。そもそも悪いのはあいつなんだけど、あいつ、自分のこと棚に上げて言ってくるからなぁ……そうなったら滅茶苦茶ウザそう。はぁ……なんだか憂鬱になってきた…………
と、そんな気分になって終わった一連の騒動から3日後。幸とコハクの転入が滞りなく完了し、晴れて界黎学園都市の住人として認められるようになった日の朝。私やコウメイ、幸やコハクといったあの事件に関わった面々は、学生寮の玄関を出たところで、1人残らず目が点になる。
なんでって? それは……
「な!? あ、あんた、なんで……?」
「言ったはずだよ? 『私は、成仏する気がないお姉ちゃんを支えるために、雪女になった』って。だから、これからは界黎学園大学の1年生として、この町に住むことになったから。てことで、よろしくね。お姉ちゃん」
何の連絡もなく添乗員を辞めて、大学生になったレミがそこにいたから。
思わぬ再会と定住宣言は素直に嬉しい。けど、悪びれもせず事後報告して、無邪気な笑顔を見せるこいつに、喜びよりも怒りが勝った。
「そういうことは、もうちょっと早く言いなさいよ! バカレミーッ!」
そう怒鳴って、殴りかかろうとする私を、コウメイ達が必死で止める。ったく、黙ってくんなっつーの! 相変わらず意地が悪いんだから、もう!
ま、とか言いつつ、なんだかんだでやっぱり嬉しいんだけどね。こいつと同じ時の中で楽しく生きられるっていうのは…………
余談だけど、あの後、幸を失ったアラクネの株は大暴落したんだって。幸と幸のお母さんをにひどいことして得た金なんだから、そうなって当然だよ。罰よ、バーツ。
これでアレクシアからの逆恨みクレームの嵐さえなければ、手放しでハッピーエンドだったんだけどなぁ。やっぱ霊になっても、人生は上手くいかないよ………………




