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蜘蛛の糸からの逃避

 幸は2年ほど前に、母親と一緒にアラクネ社に捕まってしまい、それからずっと監禁生活を送っていたらしい。その際に、親子別々に隔離されて。

 お母さんと離れ離れになった幸は、アラクネ社の社長であるアレクシアのお父さんに会わせてくれるよう再三頼み込んだけど、


「そんなに会いたければ、お前の力で福を呼び、我が社に利益を齎せ。ノルマを達成できるまでは何があっても会わせない」

 って、言われたらしい。要はアラクネ社は、金儲けのために、座敷童子である幸達を攫ったの。


 それから2年間、幸はアラクネ社のために福を呼び続けた。ただお母さんに会いたい。その一心で。


 だけど一昨日、妖力を消費して憔悴しきっていた幸の耳に、黒服達のある会話が入ってきた。


「それにしても、バカなガキだよな。母親が去年、とっくにくたばったってのに、まだ俺達のために力を使ってんだもんな」


「そう言ってやんな。いずれ会えるさ。ここで死ぬまで働きゃな」


「ちげぇねぇ! ははははは!」

 っていう最低最悪の会話が。


 それを聞いて私達は、あいつらが幸のお母さんを殺したと思ったけど、瓢介いわく、それは違う。


 というのも、座敷童子は不老長寿の種族である妖魔の中では、珍しく短命らしい。

 今でこそ医学の進歩で18歳まで生きられるけど、一昔前までは妖怪の成人年齢である13歳までに死んでしまう座敷童子がゴマンといたらしい。座敷童子に大人がいないのは、そういった理由からだった。



 それを聞いて、ちょっぴりホッとしたけど、それでも、死ぬまで飼い殺されていたことに変わりはない。私がアラクネに怒りを抱くには十分すぎる。


「……それで君は、意を決して逃げてきたんだ」


「うん……途中、悪いことだとはわかってるけど、アラクネの船に密航してここまで来て、そしたら、コハクさん達がいたから、そこに紛れればバレないかなって、思って……」


「うむ。結果的には見つかってしまったが、あの場ではあれが最善じゃったじゃろう。木を隠すなら森の中とも言うし」

 だね。てか、この子もこの子で、他の子より浮いてる気がする。なんていうか……古風だし、賢すぎ。


「しっかしまぁ、座敷童子の寿命を知ってて利用するたぁ、やり方がゲスいな」

 それには全面的に同意できる。アラクネのしたことは私だって許せない。

 でも、私達ができることって、せいぜいこの街にいる間、アラクネから幸を守ることぐらいしか……


 そう私やコウメイ達が思っていると、先生がある知らせを持って、寮を訪れた。


「心配はいらないよ。幸。それに、みんな」


「先生!」


「先程、理事長から通達があってね。彼女を界黎学園附属小学校に編入させることになった」

 マジで!? そうなったら、いつでも街のみんなで幸を守ってあげることができる! 1回も会ったことないけど、理事長グッジョブ!


 私達と幸は、その通達に大いに喜んだ。

 片やアレクシアはというと、不服らしく、面白くなさそうな顔をしている。残念だったねアレクシア。あんたの思い通りにはさせないよ。



 その夜、一安心した私は、先生やレミからの頼みもあって、護衛も兼ねて、私の部屋で幸とレミと3人で川の字になって寝ることにした。


 まぁ、全てが解決って訳じゃないけど、とりあえず満足かな。幸の安全が保証されたし、レミとこうしてまた会えたしね。これも座敷童子の幸運パワーって奴かな? 夏休み最終日にいいもんもらったよ………………

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