逃げる少女
そう思ってると、7歳ぐらいのおかっぱの女の子が血相を変えて目の前を横切っていき、その数秒後、後を追うように5人の黒服が通過していった。
「……ねぇ、今のって」
「うん。どう見ても追われてたね。あの子」
やっぱか……しかも見た感じ、この町の子じゃないから、レミと一緒に来た修学旅行の子かも。
この状況に、私の中の人助けスイッチはONになった。
「瓢介。黒服の方、頼める?」
「はぁ……面倒くせぇけど、見ちまったもんは見逃せねぇわな。わかった。任せろ」
頭を掻いて気怠そうに言いつつも、OKしてくれた瓢介に礼を言うと、私は女の子を救出しようと1歩踏み出した。
けど、その時にはもう、レミが動いていた。
「お姉ちゃん。水くさいよ」
そう言うと、レミは黒服に接近し、吐息と共に吹雪を吹かせて、黒服達を凍結した。
雪女らしい芸当を初めて目の当たりにした私は、言葉を失う。
「ほら、お姉ちゃん。早く」
せっつくようにそう言われたことで、ハッと気付いた私は、急いで女の子の元へと駆け寄り、無事保護した。
「大丈夫? 怪我はない?」
女の子はおどおどした感じで、小さく頷く。
よかった……と、安堵した私は、レミの方を向いて、親指を立てた。
「レミ。サンキュ。グッジョブ」
「何言ってんの。いつものことでしょ? お姉ちゃんの背中を守るのは、いつだって私の役目なんだから」
そういやそうだったね。日常生活でもソフトボールでも、いっつも支え、守ってくれたのはレミだった。そう思うと、なんだかんだで、こいつが1番頼りになるかも……
「……なんでぇ。結局俺、いらなかったじゃねぇか」
あ、ごめん。瓢介のこと、すっかり忘れてた。私達の反応からそれを察したのか、瓢介は珍しくいじけだす。
と、そこへ、レミが担当していた修学旅行の団体の一部が、騒ぎを聞きつけ、駆けつけてきた。
「レミさん大丈夫!?」
「うん。私は大丈夫。それよりこの子が……」
そう言って、レミは女の子に視線を向ける。
が、誰もその子を心配していない。それどころか、ピンとすらきてないようだった。
「あれ? どうしたの? みんな?」
レミがそう聞くと、集団の中にいた黄褐色の髪をし、古風な雰囲気を醸し出している猫又の女の子が、
「レミ殿。1つ聞くが……そのおなごは誰じゃ?」
と、全員の気持ちを代弁した。
(え!? じゃあ、この子はいったい……)
ただの可哀想な女の子から一転、謎の少女となったこの子に、全員の注目が集まる。
ただ1人、黒服が身に着けていた蜘蛛の形をしたバッジから、何か思い当たる節があるらしいコウメイを除いては…………




