サキュバスの矜持
皿洗いを終えた私は、同じ寮生で先に朝食を済ませていたコウメイとカスミンと連絡をとり、空港近くの広場で落ち合った。
ほんとはミュミュも誘いたかったところだけど、例によって例のごとく、仕事で来られないんだって。
「おっはよー! コウメイ、カスミン」
「おはよう。岸川さん」
「おはよう。ゆかり、皿洗いの方はもういいの?」
「うん。ソッコーで片付けてきた」
「そっか。それで、これからどこに行く?」
あ、そっか。目的もなく集まったから、どこ行くかはまだ決めてなかった。
うーん……どうしよっか。ここはベタにカラオケか。それともゲーセンか映画館か、はたまた図書館か……
てな感じでお互いに案を出し合っていると、
「ん? あれぇ? コウメイ達、デート?」
「え……千尋先生! それに、滑川君! って、デートじゃないですよ!」
腕を組んで仲良く歩いていた千尋と瓢介と遭遇した。
「てか、あんたらこそ何やってんの?」
「何って、それぐらい察しなさいよ。ゆかり~」
てことは……そう思うと、なんだか頭が痛くなってきた。こいつ、ほんとに教師としての自覚あんの?
「いや~、昨日、帰り際に千尋先生に迫られちまってな。あの色香に当てられちまったら、どんな妖魔でも太刀打ちできねぇよ」
参った参ったといった感じでそう言う瓢介を見て、私達は呆れ果てた。
でもまぁ、メデュシアナには一応言わない方がいっか。2人の間に亀裂を生むことになるし、瓢介も一夜の間違いだってことはわかってるだろうから。
それに聞いた話だと、世界中の男とヤリまくることを目的としている千尋は、基本的に1回関係を持ったら、そいつとはそれっきりらしいし、恋愛関係にもならない。
千尋いわく、1人の男に固執するのは、サキュバスの矜持に反するからだそうだけど。
そんなあいつが、メデュシアナを悲しませてまで瓢介を略奪するとは思えない。今回のところは大目に見てやるか。ま、次やったら、確実にチクるけど。そうなったら、2人共石化かな?
「そりゃそうと、お前らはこんなところで何やってんだ?」
「これからどこに行こっかって相談してたの。よかったら、2人も一緒に来る?」
「おっ、そりゃいいねぇ。なんなら、今からカラオケかホテルに行って、乱交パ……」
「絶対ないからっ!」
千尋の口から飛び出した卑猥な提案を4人で声を揃えて、食い気味に却下する。
それに対して千尋は『え~』って顔をするけど、いやいや、逆に聞くけど、なんでその案が通ると思ったの?




