修学旅行の時期
西暦2157年8月31日午前9時半。夏休みも最終日を迎えたこの日、私はいつもより遅めに起き、寮の食堂にあるテレビでやってる野球部の特集をボケーッと見ながら、キキさんが作ってくれた朝ごはんを食べていた。
あれ以来、イグニスとアクアの恋は上手くいってるかと思いきや、実際はそうでもなく、連日のようにマスコミが取材にくるせいで、デートに行くヒマすらないらしく、そのことで昨夜2人から散々愚痴を聞かされた。
まぁ、アスリート同士なら、お互いその辺の理解はあるだろうし、長いこと両想いだったわけだから、このぐらい、2人の恋路にはどうってことないだろうけど。
「ほら、ゆかり。早く食べなさい。さもないと、皿洗いさせるよ」
「それは勘弁!」
はぁ……キキさんは相変わらず口うるさいな。キーキーと。
って、あれ? そういえばなんか違和感が……
普段、この時間だと、もっと食堂に人がいてもいいはず。なのに、今日は明らかに少ない。これはどういうことなんだろ?
「ねぇ、キキさん。他のみんなは?」
「あぁ、1年と3年の子はいるけど、2年の子はいないよ。今日から修学旅行だからね」
そう言われて合点がいった。そっか。もうそんな季節なんだ。
うちの学生待望のイベント。それこそがさっき話題に上がっていた修学旅行。
人間の学校なら、そこまで珍しくないかもしれないけど、天使養成学校を始めとするほとんどの異種族の学校では、校区外での活動はあまりしないし、そもそも修学旅行自体がない。
だから、これ目当てに入学や転入してくる生徒が相当数いるの。
ちなみに、私も去年行ったよ。中学時代、病気のせいで行けなかった沖縄に。いや~、あん時は楽しかったなぁ。
そんな楽しい楽しい修学旅行に、今、メデュシアナや恵比須、アインや隼太が行ってる。
「今年はどこ行ってんの?」
「確か……フェアリーヴィレッジだったかな?」
フェアリーヴィレッジ……精霊の長が住む精霊界の首都だっけ? 噂だと、多種多様な精霊がいて、神秘的で綺麗な場所だって聞くけど。
(長も民も穏やかだっていうし、それはそれですっごく行きたいかも……)
浮遊霊として、長いこと世界中を見て回ってきた私だけど、容易に入国できない異種族達の国には、未だに行ったことがない。いつかは行けたらいいなぁ……
そう思いを馳せていると、キキさんが現実へと引きずり戻す。
「それはそうと、ゆかり。時間切れだよ」
「へ? 何が?」
「何がって、言ったでしょ。『早く食べないと皿洗わせるよ』って。というわけで、約束通り皿洗いよろしくね」
「そんな~! キキさんの鬼ー!」
そう抗議するけど、聞いちゃくれない。私は仕方なく、皿洗いをするハメになった。
あーぁ、折角の休日なのになぁ…………




