炎のエース
西暦2157年7月4日。この日、授業を終えた私とコウメイとミュミュとカスミンは、ある用事があって、野球部のグラウンドを訪れていた。
グラウンドには、打撃の時の快音やボールがミットに入る時のバシンっていう革の音、選手達の活き活きとしたかけ声が響いていて、如何にも青春って感じがする。
まぁこれだけだと、よくある高校球児の練習風景だと思うかもしれないけど、そこは異種族だらけの学校・界黎学園。帯電した球を投げたり、あり得ない軌道で曲がる打球とかといったアニメやゲームで見るような魔球や必殺打法が、そこら中でお目にかかれる。
「……で? アクア。あんたの旦那は?」
「だ、旦那じゃないよ! イグニスなら……あそこに」
そう言って、私達を連れてきた青髪の女子は、マウンドの方を指差した。
彼女の名前は、アクア=ニンフィア。
私とは2年の時から同じクラスで、ニンフっていう水の精霊でもある水泳部のキャプテン兼エース。
会った頃は、そこまで親しくなかったけど、同じ水泳部の後輩の河童がスランプで泳げなくなった時に、特訓をサポートしたことがきっかけで、今では結構親密になっている。
そういうこともあり、私が幽霊だってことは当然知っている。
で、そのアクアが指差した先にあるマウンドで投球練習をしている赤髪のピッチャーが、今回の主要人物であり、クラスメートのイグニス=サラマンダー。
炎の精霊・サラマンダー一族出身の精霊で、アクアの幼なじみ。私のこともアクアを通じて事前に聞いている。
炎の球を投げることができる速球派ピッチャーで、前に草の化け物が暴れた時も、コウメイに協力して炎の球を投げまくってたらしい。
そのイグニスにいったい何の用があって来たか……それはとりあえず、これを見てもらった方が話が早そうだね。
「こい。イグニス」
「あぁ。いくぜ!」
そう言うと、イグニスは大きく振りかぶり、
「ファイヤーストレートッ!」
と言って、文字通りの火の球ストレートを投げた。
いやいや、遠目から見てるから、はっきりとは言えないんだけど、あんなの普通打てないよ……
てか、それ以前に……
「ねぇ、アクア。あれのどこがスランプなの? 十分凄いんだけど」
「ここから見てる分には、ね」
そう。私達はアクアに頼まれて、イグニスをスランプから立ち直らせに来たの。
アクアが言うには、異種族の学校にも高校野球の大会があるらしく、人間の大会と同じく、甲子園を舞台に行われるらしい。
界黎学園野球部も創部当初から参加しているけど、1年目はエラーを連発してコールド負け。2年目は課題こそ克服したものの、今度は決定力不足で完封負け。と、私達の予想に反して、2年連続地区予選敗退という惨憺たる結果を残している。
てっきり、色んな種族のいいとこ取りをした強豪校だと思ってたんだけどなぁ。
「今年は、みんなも今まで以上に努力して、守備も走塁も打撃も過去1番の出来みたい。だから……」
「あとは、あいつだけってことか」
「うん……」
アクアはそう言うと、時計をチラッと見た。
「あ、もうこんな時間! じゃあ、私は部活があるから。悪いけど、あとお願いね」
そう言われて頷いたけど、あることが気になった私は、申し訳ないと思いつつもアクアを呼び止めた。
「あっ、アクアごめん! もう1こだけ聞かせて」
「何?」
「ここのエースと4番って誰? そいつからも話を聞きたいんだけど」
そう尋ねると、アクアは視線を逸らして、
「あぁ……それも、イグニスなの」
って言いにくそうに答えて、プールへと走っていった。
嘘でしょ。エースで4番がスランプ? 大丈夫なの? 野球部…………
イグニス=サラマンダーの能力
・投手能力
右投げ右打ち
球速148㎞
コントロール……E
スタミナ……A
カーブ……1
スライダー……1
魔球……ファイヤーストレート
・野手能力
ミート……G
パワー……C
走力……D
肩……S
守備……C
捕球……E
(アルファベットはS~G。変化量は1~7で表記)
某有名野球ゲームのようではありますが、他に表現のしようがなかったので、ご了承ください。
今後もこういうスタイルで、選手能力を書いていきます。




