想いを汲みとる者
「君に言われる筋合いはない」
私を睨みつけて吐き捨てるようにそう言うと、ユリウスはそのまま出て行こうとした。
けど、あいつはそっから1歩たりとも動かなかった。というより、動けなかった。
ソフィーが前に立ち塞がって出口を遮り、どんなに腕を強く引っ張られても、メデュシアナが石みたいにビクともしなかったから。
「ユリウスさん。私も彼女と同意見です。あなたは間違っています」
「ソフィー。君まで?」
ソフィーにも否定されたユリウスが、信じられないといった様子を見せていると、メデュシアナが、
「ユリウスさん……お願いします。もう少しだけ頑張らせてください。私、この力をちゃんと制御できるようになりたいんです。たとえそれが、あなたの言うバカバカしいことでも……私にとっては、大切なことなんです! だから……」
と、頭を下げて懇願した。
「こんなに必死になっているんですよ? その想いを汲むのも、生徒会の仕事じゃないんですか? ユリウスさん。生徒1人の、ましてや仲間の想いすら汲めない人に、生徒会の腕章を着ける資格はないと私も思います。あなたが副会長だというのなら、もっとみんなの気持ちになって、行動してください!」
自分より10歳以上年下のソフィーからそう諫められて、ユリウスも少しは反省したらしく、シュンとなった。
この時、私は、自分の怒りも忘れてしまうぐらい、ソフィーの真っ当で歳の割に大人びた言葉と姿勢にただただ驚いていた。
後で千尋から聞いた話だけど、ソフィーは私が生まれた年に起こった天国と地獄の戦争・天地獄戦争で親友を亡くし、今から3年前にスリープっていう人工冬眠から目覚めてすぐ参加した異世界での戦争では、死の恐怖に直面するという心の傷を負ったらしいの。
驚くべきなのは、その2つの戦争と界黎学園への入学が、ソフィーの体感的に5歳~6歳までの間に集約されていること。天国の時間が地上の1/4ということやスリープの影響があるとはいえ、あまりにも激動すぎる。
そんな人とは違う数奇で辛い経験をしてきたからこそ、ソフィーは歳の割に利口で心が強く、仲間想いの優しい子に育ったんだって。そう考えると、なんか納得。
「あ、すみません。生意気なことを言ってしまって」
「いや、かまわない。君の言うとおり、僕が狭量すぎただけだったようだ。すまない。メデュシアナ」
そう言ってメデュシアナに頭を下げてから、ユリウスは私の方を向き直した。
「岸川」
「何?」
「それでも僕は、恋や青春なんて、浮ついたバカバカしいものを大切にしようとは思わない」
それ、今、言うこと? こいつの反省の色が無いKY発言に、私の怒りは再燃しそうだった。
「だが、仲間や生徒の想いは大切にするつもりだ。だから、僕らの力になってくれ」
ったく、前置きなんか抜きで、素直にそう言いなさいよ。このバカケンタウロスは。
まぁ、でもいっか。メデュシアナのためを想ってに動いてくれるんなら、それで。
そう思い、気持ちを切り替えた私達は、今度こそ成功させるべく、制御方法について考えた。
のだが……
「……ん? つーかさ、今思ったんだけど……ゆかり。あんた霊体だから、石化しないでしょ」
「………………あ」
考え始めて間もなく、千尋から出た身も蓋もない一言によって、私達は団結した甲斐もなくその方法に気付いた。
千尋。ファインプレーなのは認めるけど、もう少し考えさせてから言ってよ。まだ10秒も経ってないんだけど…………
その後は、時間こそかかったけど、拍子抜けなぐらい上手くいき、出会って3日経った頃には、コウメイや先生、ユリウスが話しても大丈夫になぐらい、制御できるようになっていた。まぁ、アインの役を私に変えただけなんだけどね。
それもこれも千尋が言ってくれたおかげだから、あんまり強くは言いたかないけど、できれば今後、こういうことがあった時は、空気を読んでから発言してほしいよ…………
ソフィーが参加した2つの戦争、天地獄戦争とカイオウ事件については、機会と要望があれば執筆します。(正確には、天地獄戦争の方は、この小説が完結次第、投稿する可能性が高いです)
ちなみに余談ですが、天国と同じく1/4の速度で時が流れているのは地獄のみで、精霊の国や龍の国、妖魔の国は地上と同じ速度で時間が経過しています。




