学生の本分
アインという尊い犠牲が出たことで、千尋はさらに治療に没頭することになり、私は頭を抱える。
生物ですらないアインまで石化させてしまうとなると、どうしたらいいんだろう? 暗礁に乗り上げ、お手上げ一歩手前に近い状況の中、私は次なるプランについて必死に考えていた。
そんな私を見て、あの堅物はこれ以上は無理だと勝手に判断したんだと思う。メデュシアナの腕を引っ張って帰ろうとした。
「行こう。岸川に任せた僕らがバカだった」
「ちょっと。それどういう意味よ?」
そう尋ねると、ユリウスは眉間に皺を寄せながら、質問に答えた。
「言葉通りの意味だ。この際だからはっきりと言わせてもらうが、僕は君が嫌いだ。会長は君のことを甚く気に入っているようだが、僕は君のそういう無計画で不真面目で楽天的なところが、不愉快極まりない。しかも、あんなくだらない理由で霊になるなんて、どうかしている。いっそ成仏してくれたら、どれだけ有難いか」
「ユリウスさん。いくらなんでも、そんな言い方……」
「そうですよ。岸川さんはこんな私のために……」
「君も君だ。メデュシアナ。恋だなんだと現を抜かしているヒマがあったら、学業と生徒会の活動に尽力すべきだ。何のために学校に来ている?」
ユリウスから冷たい言葉を浴びせられて、メデュシアナはよほどショックだったらしく、俯いてしまう。
「わかったら、もう行こう。会長には無理だったと伝えておく。では」
そう言って、ユリウスはメデュシアナを無理矢理連れて行こうと、扉に手をかけようとした。
「……ちょっと待ちなさいよ! このバカケンタウロスッ!」
あいつの理不尽な行動とクソみたいな持論で溜まった怒りを爆発させた私に呼び止められたユリウスは動きを止めた。
「何だ?」
「私のことは、まぁいいよ。別にあんたに好かれたいとか思ってないし。けど……さっきなんて言った? 『恋だなんだと現を抜かしてるヒマがあったら勉強してろ』そんな風に聞こえたけど?」
「あぁ、そうだ。恋や青春なんてバカバカしい以外何物でもない。学生の本分はなんだ? 勉学に励み、卒業することだ。部活や委員会に勤しむのも大いに結構だが、本分を疎かにしてまで夢中になるなんて、馬鹿げている。理解に苦しむよ」
「だったら、なんであんたは学校に来てんの?」
「は?」
「勉強だけしてればいいなら、塾や予備校にでも行ったらいい。なのにわざわざ、高校に通うってことは、勉強以外のもんも学びに来てるってことでしょ? それこそが、あんたがバカバカしいって吐き捨てた恋や友情、青春の中にあるんだよ! みんな、それからいっぱい学んでいくのっ!」
そう言って私は、ユリウスをビシッと指差しながら、
「私の方こそ、はっきり言ってあげるよ! ユリウス! あんたが1番、学生の本分って奴を蔑ろにしてるっ! そんな奴に、生徒会の腕章を着ける資格なんてないっ!」
って、断言してやった。
あんまり小難しい話や教育論とかは、正直わかんない。けど、それが真理だってことは、胸を張って言える。
まぁ、堅物ケンタウロスの凝り固まった心には響いたかどうかは別の話だけど。




