界黎学園生徒会
西暦2157年5月15日。6時間目の授業を終えた私は、買い食いや今日の晩ご飯のことを考えながら、帰り支度をしていた。
すると、背後から馬の足音が近付いてきた。音の主を知る私としては、嫌な予感しかしない。
案の定、そいつは話しかけてきた。
「岸川。このあと予定はあるか?」
「いや、ないけど」
「では、一緒に来てくれ。会長が君を呼んでいる」
「会長って、生徒会長が?」
「それ以外誰がいる。準備ができたら言ってくれ。それまで廊下で待っているぞ」
無愛想にそう言うと、そいつは教室から出て行った。
このいけ好かない奴の名前はユリウス・ケンタウロス。名前の通りケンタウロスで、うちのクラスの学級委員と生徒会副会長を兼任している。
あいつ、ケンタウロスで背がデカいからって常に上から目線で物言うし、堅物だしで、苦手なんだよなぁ、正直。
そんな高圧ケンタウロスに言われるがまま、私は、同じく呼び出しをくらったコウメイとカスミンと共に、ユリウスに連れられて生徒会室に向かった。
にしても、生徒会かぁ……うちの生徒会、先生達と対等かそれ以上の権力を持ってるから、頼りにされてる一方で、近寄りがたいんだよなぁ。
って、足踏みしてても仕方ないか。私はちょっぴり緊張しつつも、生徒会室のドアをノックし、中に入った。
そこには、生徒会役員と思しき3人と、アインと千尋の姿が。
「アイン、千尋! もしかして2人も?」
「まぁね」
「コラ岸川! 先生にそんな口をきいていいと思ってるのか!」
「あーもう、うっさいなぁ。ユリウスはいつもいつも」
「何を!?」
ユリウスはそう言って、説教モードに入ろうとしたけど、部屋の奥の椅子にドッシリと座り、前の学校らしき制服のボタンを全開にした白髪のリーゼント男が、
「まぁ待て待てユリウス。そう目くじらを立てんなって」
と言って、止めてくれた。
「ですが、会長!」
「悪かったな。おめぇら。急に呼びつけて。ん? 1人足りねぇみてぇだが?」
「ミュミュは朝から欠席しています。なんでも、芸能活動とかで」
「なら、しゃーねぇか。じゃあ一応自己紹介でもしとくか。まずおめぇから」
生徒会長がそう言うと、私達から見て右側の席に座って算盤を弾いていた男子は、元気よく立ち上がり、
「はいはい~。初めましてっす。俺は2年B組の恵比須っていいやす。名前の通り恵比須一族出身の天使で、会計を務めています。以後よろしくっす」
と、陽気に名乗って一礼してから、会計作業を続けた。
こんな底抜けに明るくて真面目に仕事をこなせる奴が生徒会にいたんだ。と、感心していると、今度は恵比須の向かいの席に座っていたつば広の帽子と眼鏡を身に付けた女子が、
「に、2年A組で、書記のメデュシアナです……よろしく、お願いします……」
と、人見知りのせいか目を伏せたまま、蚊の鳴くような声で挨拶をした。
こっちはこっちで内気だけど、仕事ぶりは恵比須と同じかそれ以上みたい。
「あともう1人、1年で庶務をやってる奴がいるんだけど、今は用事で席を外してる」
なるほどね。となると、必然的に……
「てことは、君が……」
「いかにも。俺がこの生徒会の会長をしている3年A組の滑川瓢介だ。種族は中級妖魔の一種であり、妖怪の総大将・ぬらりひょん。以後よろしくな」
瓢介はフランクにそう名乗ったけど、正直、そこまで丁寧に名乗る必要性は無かったと思う。
というのも瓢介は、文武両道の天才であり、尚且つ2期連続で生徒会長を務めれるほどのカリスマ性を持った超人として、ミュミュ並の知名度を誇っている。だから、顔は見たことなくても、生徒会長=滑川瓢介ということは、界黎学園の生徒なら誰でも知ってる。
ただ……
「まぁ、そう硬くなんなって。堅物のユリウスに何言われたか知んねぇけど、もっと気楽に構えてりゃいいよ。何も怒鳴りつけるために呼んだわけじゃねぇから。あ、ちと待ってろ。今、茶菓子と茶を持ってくっから」
「会長! そういうことは、自分が!」
こんなに軽い奴だとは思わなかったけど。




