慌ただしい脱出劇
そう思ってると、下の方から何やらボコボコという音と熱気がしてきた。
「あれ? 何か変な音しない?」
「ですね。それに、内部の温度も徐々に上がっています」
「いったいなんで……ん?」
そう言って、ふと見下ろしてみると、さっきまでアインが浸かっていた酸が、溶岩のように煮えたぎりながらジリジリとせり上がってきてる。
後で聞いた話だけど、この時外では、こいつを弱らせるために、コウメイが召喚した稲荷の火炎放射とかといった炎攻撃をくらわせまくってたんだって。
つまり、こいつがやろうとしていることは……
(まさか! 熱くなりすぎた酸を外に吐き出す気!? こんな高温の酸なんか浴びたら、アインが一瞬で蒸発する!)
「アイン! 早くっ!」
「わかっています……解析終了。細胞組織を貫通するまで、およそ30秒かかります」
「30秒か。それならなんとか……」
そう言いつつ、再度確認した私は、せり上がってくる酸の速度を見て、すぐ思った。
(……うん無理。10秒でここに来る)
って。
「急いでアインッ! 3倍速よ! ハリーアーップッ!」
って、ヤバ! もう間に合わない。
そう思い、目を瞑ったその時、突然、食人植物が無数の花びらとなって舞い散った。
いったい何が? 訳がわからない私やコウメイ達が困惑していると、両手にピンク色のエネルギーを纏ったあの人が目の前に来た。
「大丈夫? 2人共」
「千尋さん!」
そう、その人とは千尋さんだった。
「けど、どうやって?」
「あぁ、実は私、花のミュータントでね。自分や相手を花びらと化すことができんの」
ミュータント……特殊な能力を持った人間だっけ? 話ぐらいには聞いたことあるけど、まさか千尋さんがそれだったなんて……助かってホッとしたのと相まって、なんだか力が抜けるよ。
なんにしても、ウネ先生が起こしたこの傍迷惑な騒動は、多くのケガ人こそ出したけど、無事解決した。
騒ぎの原因となったウネ先生は、当然責任をとって減俸処分。校舎の修繕やアイン達も治療を受けたりと、散々な1日だったけど、何も悪いことばっかりじゃない。
なんでって? アインが心を学んだことで、心なしか表情が柔らかくなったからだよ。言うなればケガの功名って奴かな…………




