心を学びにきたロボット
「では、私もこれで」
「ちょい待ち」
「何でしょうか?」
「ウネを運んで体に負担かけたでしょ? メンテついでに燃料補給しとくよ」
千尋さんがそう言うと、アインって呼ばれてたその子はお礼を言って引き返し、千尋さんに背を向けた。
すると千尋さんは、アインに燃料らしきドリンクを渡してから、慣れた手つきでアインの背中に埋め込まれていたネジをドライバーで外し、メンテナンスを始めた。
入ってきた時から、なんかそんな感じはしてたけど、目の前で行われている作業とアインの体内で複雑に組み合わさってる機械類を見たことで現実味を帯びた私は、確信した。
「ほ、ほんとにロボットだったんだ」
「はい。申し遅れました。型式番号AX0001。2年A組出席番号1番。通称アインと申します。以後お見知り置きを。先輩方」
機械独特の無機質でクソ真面目な挨拶に、私達はフリーズした。
いや、いいんだよ別に。どんな奴でも差別なく通える。それがこの学校の良さでもあるから。けど、ロボッ娘って最早生物ですらないじゃん! 今更だけど、ほんっと何でもアリだね。この学校。
「よ、よろしく。えーっと……アインさんはどうしてこの学校に?」
「心を学ぶためです」
「心?」
コウメイがそう聞き返すと、アインは自分について語り始めた。
アイン達AXシリーズのアンドロイドは、エピウスっていう太平洋のド真ん中にある小さな島国が、人命救助用に開発したロボットなんだって。
その開発段階で、システムエンジニアでプロジェクトの参加者でもあった天才プログラマー・青山未来さんは、こう思ったらしいの。
(心があるアンドロイドなら、もっと多くの命を救えるかもしれない)
って。
そこでプロジェクトリーダーは、試作機であるアインを界黎学園に入学させて、試験的に心を学ばせ、それによって他のAXシリーズにも心を与えるべきかどうか判断することにしたらしい。
「そうか。それで、君はこれまでを振り返ってみてどう思った? この2年間、心を学んでみて、どう感じた?」
「私の方から意見や希望を述べるつもりはありません」
先生の質問に対してその返事。やっぱロボットって融通が利かないのかなぁ。
「ただ……」
「ただ?」
「もしそれに関する発言権が、私にもあれば、こう答えます。わかりません。まだ心がどういうものなのか、自分でも皆目見当がつきません。と」
「そうか。まぁ、焦る必要はないよ。心って、数式やテストと違って、簡単に答えが出るものじゃないし、人に押しつけられるものでもないからね」
「わかりました。ありがとうございます。ルドガー先生」
そう言ってアインは先生に一礼した。こうやって素直にお礼が言えるあたり、普通の人間と変わんないんだけどなぁ。




