ざわつく男子達
西暦2157年5月10日。この日は、朝から学校全体がざわついていた。
行き交う生徒や教師、特に男共が中心となって、噂話をしている。そのあまりにも締まりのない顔を見て私は、どうせくだらない話だろうと無視してたんだけど、教室に入ってすぐ、コウメイとカスミンとミュミュから、その噂について聞かされた。
「は? サキュバスみたいな人が来る?」
「うん。なんでも、前の保健の先生が寿退職したから、その代わりに赴任して来たんだって」
いやいや、訳わかんない。なんだってそんな淫魔がここに? 来るとこ間違ってんじゃないの?
「でも、聞いた限り、噂が飛躍しすぎただけっぽいよ。私も小耳に挟んだ程度だけど、『絶対に歳をとらない体の持ち主で、どんな性癖や欲求も満たすことができるプロ』だとか、『フェロモンが反則レベルで、そのフェロモンにあてられたら、独裁者だろうと復讐者だろうと聖者だろうと虜にしてしまう生粋の淫魔』とか、常識じゃ考えられないことばかり男子達が言ってたから」
「じゃあ、きっとそうなんだろうね。多分、実際のとこは、どこにでもいる平凡な先生なんじゃない?」
「だよね。そっちの方がバカな妄想より何千倍もあり得る」
「いや、アイドルがそれ言う?」
私に同調するミュミュのアイドルらしからぬ言葉に、コウメイがすかさずツッコミを入れる。まぁ、気持ちはわからなくもないけどね。素の時のミュミュって、けっこうサバサバしてるから。
「いいのいいの。今はオフだから。てか、男は女に対してそういう妄想をしすぎ。いるわけないじゃん。そんな人」
「そうそう。あ、ひょっとして、コウメイも期待してたとかぁ?」
私とミュミュからそうからかわれたコウメイは、顔を真っ赤にして顔の前で手を振りながら、全力で否定した。相っ変わらずウブだなぁ。コウメイの奴。
そうやって他愛もないことを話してると、『生徒全員講堂に集まるように』という校内放送が流れた。内容はおそらく、さっきから噂になってる例の先生を紹介するためだと思う。
「ま、何にしても、集会に行けば一発でしょ。その人の正体も、男共の妄想がパリンと砕け散るのも」
そう言ってミュミュと悪い顔をしながら、私達は講堂へ向かった。
男共の期待と妄想を粉砕してくれる新しい保健の先生の顔を拝みに、ね。いやー楽しみだなぁ…………




