和菓子屋にて
放課後。コウメイとカスミンと一緒に下校していた私は、帰る途中の商店街にある和菓子屋に立ち寄っていた。
「はい。どら焼き3個。毎度あり」
「ありがとうございます」
「カスミン。ここのどら焼きは食べなきゃ損だよ」
「そうなの?」
学生寮と学校の往復しかしていないカスミンにそう聞かれて、私は頷いた。
まぁ、お察しの通り、カスミンの分は店の人に頼んで、廃棄寸前の物を出してもらってるけどね。
なんて会話をして、店を出ようとすると、買い食いに訪れたミュミュが来店した。
「おじさーん。どら焼き1つぅ」
「おっ、ミュミュちゃん。あいよ!」
そう言うと和菓子屋さんは、慣れた手つきでレジ横に置いてあるどら焼きを1つとって、レジを打ち、ミュミュに手渡した。
「ほい。80円」
「え? 20円まけてくれるの?」
「おう。なんたって俺は、ミュミュちゃんの大ファンだからな。サービスだよ。サービス」
「ありがと! おじさんだーい好きニャ」
そう言いながら、ミュミュは80円を払い、和菓子屋さんはそれを、デレデレしながら受け取る。
昼休みのライブの延長みたいな光景に、私は、
(この人もかー!)
と、思わず頭を抱える。
「あ、ゆかり達もそれ買ったんだ。おいしいよね。ここのどら焼き」
「確かに。いつ食べても飽きないっていうか」
「へへっ、若ぇ子にそう言ってもらえると、おじさん嬉しいよ」
そう言う和菓子屋のおじさんは、照れくささがありつつも、どこか誇らしげだった。
「特にミュミュに言われると、でしょ?」
「ははっ、バレたか。まぁ、ファンってのもあるが、ミュミュちゃんには恩もあるからな」
「恩?」
コウメイがそう聞くと、和菓子屋さんは、壁に貼られた写真とサインを指差した。
そこには和菓子屋さんや色んな人に囲まれて、楽しそうな笑みを浮かべるミュミュが映っていた。
「この感じ……もしかして、ロケでここに?」
「うん。この町のテレビ局でやってる朝の情報番組のロケでね」
「そん時のミュミュちゃんの食レポが、まー見事でな。おかげであれからずっと繁盛してる」
なるほど、それで『恩がある』って。
「いやいや、私は正直なことを言っただけで、大したことは何もしてないニャ。繁盛してるのは、間違いなくおじさんの実力だニャ」
ミュミュが謙遜しながらそう答え、和菓子屋さんが、それを受けて感謝を繰り返す。
そうしてる内に、いつの間にか和菓子屋が褒め合い合戦の会場みたいになっていく。
てことは……あれ? ひょっとして私達、お邪魔虫?




