アイドルは猫耳娘
なんて思いながら、昼ご飯を食べていると、突然、食堂に設置されていたスピーカーから、ポップで可愛らしいメロディーが流れ始めた。
何事かと思い、スピーカーがある特設ステージの方を振り向くと、いつの間にかオタクっぽい集団がステージを取り囲むように集まりだし、そのステージからピンチ色の髪と猫耳を生やし、猫の手をした女子が、アイドルっぽいフリフリの衣装を身に纏って現れた。
「うぉーっ! ミュミュたーんっ!」
「我らがアイドル・ミュミュたん! 萌えーっ!」
「L・O・V・E! ミュ・ミュ・たん!」
オタク集団から野太い声で声援を送られ、笑顔で手を振り、自分のデビュー曲を歌うこのアイドル。私はこいつのことをよく知ってる。
それもそのはず、こいつはカスミン同様今年から同じクラスになった同級生で、下級妖魔の一種・猫娘のミュミュ。
アキバでデビューした美少女アイドルで、猫耳と愛らしいキャラ、それと抜群の歌唱力とキレッキレのダンスのおかげで、アイドルグループ全盛の中、ソロアイドルとして脚光を浴び、世界中に熱狂的なファンがいる人気者。
当然、この学校でも人気者で『学校のアイドルは?』って聞かれたら、みんながみんな、
「ミュミュたーん!」
って、名前を出すぐらい。
にしても、猫耳ねぇ……男って、あぁいうのが好きなのかな?
「え? なんでこっち見るの?」
「いや、別に」
ま、コウメイには関係ない話か。コウメイがあいつらみたいなことしてたら、それはそれで引くし。
って、言ってる間に歌い終わったみたい。ってか、ずーっと狂ったような大声で声援送ってたけど、ちゃんと聞いてたのかな? あのオタク共。
「みんなー! こんにちニャー!」
「こんにちニャー!」
「1年の子や私のことを知らない人のためにも、自己紹介するニャ」
そう言うと、ミュミュは小さく咳払いして、招き猫みたいなポーズをとった。すると、それに合わせて、親衛隊らしきファン連中が音頭をとり、ミュミュと同じポーズをする。
「幸せ呼ぶ猫」
「ニャンニャンニャン!」
「癒やしの猫だよ」
「ニャンニャンニャン!」
「ニャンニャンニャン」
「ニャンニャンニャンのミュミュッミュミュー!」
「はい。界黎学園3年。みんなのアイドル・ミュミュだよぉ。みんな、よろしくニャン♡」
左右交互への手招きポーズ付きのアイドルらしい自己紹介に、ファン共の熱狂ぶりがさらに加熱していく。
その様子を端から見ていた私達は、あまりの痛々しさからちょっとゲンナリする。




