フードモンスター・カスミン
どうせツッコむなら……
「いいなぁ2人共。羨ましい」
って、肉を頬張りながら言いつつ、何十枚も皿を積み重ねてるカスミンに言ったげて。
「それ、僕のセリフだよ」
「ん?」
「あんた、そんなに食べれる奴だったの?」
「うん。昔のことはあまり覚えてないけど、ゾンビになってから食欲が止まらなくて」
そういえば、オーグ達に絡まれてた時に食べてた牛丼のどんぶりも、バカデカかったような気が。
「余計羨ましい」
「コウメイは少食だもんねぇ。あ、じゃあさ、カスミン。そんなに飲みたいんなら飲む? 1口ぐらいならいいよ」
私は親切心からそう言い、スープを差し出しかけたけど、カスミンは何故か断った。
「気持ちは嬉しいけど、いらない」
「え? なんで? いいよ。遠慮しなくて」
「いや、そうじゃなくて……私、できたてとか、新鮮なものとかを食べたりすると、お腹壊しちゃうから」
言われてみれば、テーブルに並んでいるローストビーフの色が心なしか悪い気が……要は腐りかけしか、体が受けつけないってわけか。人を襲わないだけ有難いけど、それはそれでゾンビも大変だなぁ。カスミンが特別ってだけかもしんないけど。
そう思ってると、追加のローストビーフを運んできたエクセばぁのお孫さんが、話しかけてきた。
「けど、こっちとしては、ありがたい限りだよ」
「え? どういうことですか?」
「だって、この子が残飯処理係を買って出てくれたおかげで、食堂全体のゴミの量が大幅に減ったから」
そっか。カスミンの大食いも、店側からすればそういう利点もあるんだ。
「いえ、助かってるのは私の方です。たった10円で、お腹いっぱい食べさせてもらってるんですから」
その言葉に私とコウメイは耳を疑った。
「え!? 腐りかけとはいえ、10円でローストビーフ食べ放題!?」
「嘘でしょ? 何その破格の値段設定……なんか、ものっすごく損してる気分……」
「僕も。やっぱり、羨ましい……」
300円でもバカみたいに安いと思ってたのに、それよりもお得なランチが目の前にある。
そんな例えようのない敗北感を味わう私とコウメイの心を慰めてくれるのは、あれから少し明るくなったカスミンの幸せそうな食いっぷりと、エクセばぁの特製スープだけだった。
界黎学園都市には、固有の通貨はなく、円やドルはもちろん、天国や地獄の通貨も使えます。




