『ありがとう』と『ごめん』の涙
と、そこへ、先に出て行ったはずのイグニスが戻ってきた。いつの間にか意識を取り戻したアクアと一緒に。
「その通りね。ゆかり」
「アクア! あんた、体の方はいいの?」
「うん。これでも水泳で鍛えられてるから」
な、なるほどー。伊達にアスリートじゃないってわけか。
「アクアさん、その……」
「今回のことなら、もういいよ。事情はわかってるし、あなたが父親やその体のことで苦悩していることも、捕まっている時に聞いたあなたの呟きから、概ね理解してる」
「聞いてらしたの!?」
「えぇ。だからってわけじゃないけど、今までのことは水の精霊らしく水に流してあげる。もう一度、クラスメートとして、友達としてやり直そう」
思いもよらない言葉に、アレクシアの涙腺が緩む。
「いいよね? イグニス」
「……アクアが許すっつーんなら、しゃーねぇ。俺も認めてやらぁ。ただし、2度とアクアやみんなを傷付けるようなマネをしねぇって約束できるんならな」
「もちろん。誓いますわ」
そう答えるアレクシアの元に、暖かい声をかけようと近付く奴がもう1人。アラクネ社のせいで親子共々ヒドい目に遭った幸だ。
「2人だけじゃない。私もだよ」
「幸……よろしいのですか? 私はあなた達を……」
「それでも、アレクシアさんには幸せになってほしいの。親を失って孤独になる辛さは、私もよくわかるから。不幸になった分、うんと幸せにならないと」
その言葉が余程胸に響いたんだと思う。アレクシアは幸をぎゅっと抱きしめると、涙ながらに、
「ありがとう、ございますわ……それと、申し訳ありませんわ」
って言って、そっからしばらくの間、まわりが見えなくなるぐらい泣き続けた。
今は泣きなアレクシア。その目から『ありがとう』と『ごめん』の涙が流れきったら、あんたもきっと、前に進めるだろうから……………




