令嬢のケジメ
4日前。今の姿になってしまったアレクシアは、自分のハーフアラクネとしての姿に愕然とし、自分を産んだ父親なら何か知ってると思い、自家用ジェットで倒産前日の実家へと帰宅した。
そこであいつは、憔悴しきった父親からアラクネ社の衣料品が全て、アラクネの糸から作られていること、その糸を生み出すために半ば強引に雇ったアラクネが母親だということ等、今までひた隠しにされていた真実について聞かされた。
それだけでも十分絶望もんなのに、あろうことかアレクシアの父親は、自身の会社を立て直すために、アレクシアを娘としてではなく、母親同様仕事道具として束縛しようとした。あまりの豹変っぷりに身の危険を感じたアレクシアは父親を拒絶。命からがら実家から界黎学園都市まで逃亡してきたんだけど……
「……それから一夜明けて、父が死に、会社が倒産したことを知った私は、我を失って……」
「今に至る、というわけか」
先生の言葉に、アレクシアは黙って頷いた。
金を失い、忌み嫌う異種族の血が覚醒し、その上、父親まで変わってしまう。ここまでくると、もうあいつに抱いていたドス黒い感情はきれいさっぱり無くなって、ただただ不憫でしかならない。
「君の心中お察しするよ。これまで当たり前だと信じてたものが虚構だった。それは耐え難い苦痛だっただろう。けど、もう大丈夫だ。今回のことは事故みたいなものだから、みんなもきっと許してくれる。裏切られたことによる心の傷だって、僕やゆかり達が癒してみせる。そういうわけだから、アレクシア。君は何も気にせず、明日もいつものように学校に……」
「それは……それはできませんわっ!」
先生が差し伸べてくれた手を、アレクシアは拒絶した。
「先生の気持ちは嬉しいです。ですが! 先程も言ったとおり、私はこの姿を誰にも見られたくありません! こんな異常で醜悪な化け物になった私を、いったい誰が受け入れてくれるというのですの!? ですので私は、今日を以て界黎学園を退学いたしますわ。これからは……誰の目にも触れないところでひっそりと生きていきます。では、ご機嫌よう」
アレクシアはそう言って一礼すると、私達の前から姿を消すつもりで、立ち去ろうとした。それがプライドの高いあいつなりのケジメのつけ方なんだと思う。




