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令嬢の秘密

「アラクネと人間のハーフゥ!? あいつが!?」

 執事さんの口から語られた予想だにしない真実に、誰もが驚愕する。


 執事さんが言うには、アレクシアの母親は上半身が人、下半身が蜘蛛というアラクネ種の魔族であり、アラクネ社に最初に雇われた社員でもあるらしい。もっとも、労働環境は今と変わらないし、母親だということも公にはなってないけど。

 というのも、アレクシアは両親が一夜の過ちで生まれてきた娘なんだけど、元来、人間至上主義者の父親はこれを汚点だと思ってたらしく、アレクシアの誕生を知るや否や、母親を手にかけ、実の娘まで殺そうとした。

 けど、アレクシアは殺されずに済んだ。アレクシアがアラクネとしてではなく、人として生まれてきたから、死を免れたの。愛する我が子の姿に冷静さを取り戻した父親は、半分だけ混ざった自分の血の力に期待し、それからはアレクシアを人間として育ててきた。もちろん、母親や自分に関することは全て隠して。


 だからあいつは、今日まで自分がアラクネとの混血ということも知らずに、父と同じ人間至上主義者の人間として生きてきたんだ。


「しかし、アラクネの血が目覚めてしまった」


「えぇ。お嬢様が腹部を痛めてらしたのは、その血が覚醒し、細胞が変異し始めたため。4月から始まり、9月までは月に1回のペースだったのですが、徐々に間隔が短くなり、4日前、とうとう……」


「なっちまったってわけか」


「はい。ですので、お願いします! どうかお嬢様を、アラクネの血から救ってください! このような事件を起こしたのも、おそらく、その血に自我を乗っ取られ、食欲を欲するあまりなされたこと。早急に解決しなければ、捕まっている方々が無事では済みませんし、新たな犠牲者を生むことになってしまいます。そして何より、このままではお嬢様は人の心を失い、お嬢様自身が忌み嫌う化け物になってしまいます! なので、どうか!」

 そう言って執事さんは、床に額を擦りつけるように土下座した。

 さっき、事件の知らせを聞いた時に、『お嬢様』って呟いたのは、犯人がアレクシアだってわかってて、尚且つ、あいつの心を案じてのことだったのね。


 その忠義心やアレクシアを想う気持ちは理解できるし、立派だと思う。だけどね、それで人の心を動かせるとは限らない。現に、みんなの反応は冷たく、誰も助けに行こうとしない。そりゃそうだよね。みんな、あいつのことをよく思ってないもん。

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