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災難と怪事件

 けれど、それから6日経ち、10月に入っても、アレクシアが姿を見せたり、何かしらのアクションを起こしたりするようなことはなかった。これまで『私用』という名目で1日2日休んでたことはあったけど、休日挟んで4日連続欠席は過去最長記録だよ。


「あいつ、今日も来なかったね」


「うん。あたし達の暴言なんて屁とも思ってないはずなのに」


「もしかして、僕が言ったことを真に受けて、本当に転校したのかな?」

 コウメイだけじゃない。早退した時喜んでた奴らも攻撃対象が一向に何もしてこない現状に、戸惑いや反省の色を隠せない。

 だからなのか、今日はアクアも含め、何人か学校に来ていない。


 そんなお世辞にも明るいと言えない空気に包まれた放課後の教室に、先生とコハクが入ってきた。


「それはないよ。光明」


「先生。それはない、というのは?」


「彼女の転出届がまだ出されていない。ということは、まだ転校はしていないということだ」

 それを聞いて、自分の言葉でアレクシアを追い詰めたんじゃないかと責任を感じていたコウメイは、胸をなで下ろす。


「が、欠席の理由について、少しわかったことがある。これじゃ」

 そう言ってコハクは、みんなが見えるように、黒板に2日前の新聞を張りつけた。そこに書いてあったのは、想像を絶する内容だった。


 結論から言うと、アレクシアは転校なんかより、もっと悲惨なレベルの災難に見舞われていた。

 というのも、例の幸との一件以降、あいつの父親が経営している会社・アラクネは、株価が大暴落し、大赤字になった。ここまでは前にも言ったから知ってるよね?

 問題はその後。赤字になったアラクネは、そこからあれよあれよという間に経営難に陥り、倒産。その際に、アレクシアの父親が異種族を強制労働させ、過労死させたことも白日の下に晒され、世間から大バッシングを浴びた。

 それを受けて、アレクシアのお父さんは精神的に病み、自ら命を絶ったらしい。


 新聞記事に書かれたあまりにも衝撃的すぎる内容に、私達は絶句する。


「……あやつはこのことを新聞などで知り、そのショックから、今もどこかで塞ぎ込んでおるのであろう」

 それを聞いて、私は初めてあいつに同情した。そりゃ、悪いことばっかしてたし、幸や幸の母親にしたことは未だに許せないけどさ、ここまで追い詰めるつもりはなかったよ。


 と、我ながら後悔していると、1人の男が慌てた様子で走ってきた。日頃アレクシアと行動を共にしている執事の1人だ。


「あ、皆さん! やはりこちらに!」


「あんたは、確かあいつの……いったいどうしたんすか?」

 イグニスがそう聞くと、執事は息を切らしながら、


「お願いします……お嬢様を、お嬢様を助けてくださいっ!」

 と、頼んできた。切羽詰まった様子に、私達はただ事じゃないことが起きてると直感する。


 私達は執事から詳しく話を聞こうと思ったんだけど、その前に、話に割って入る形で、今度は生徒会室にいたユリウスとソフィーが駆け込んできた。


「岸川、いるか!?」


「いるけど、何? 今、この人の相手で忙しいんだけど」


「大変なんですっ! 町の音楽ホールに巨大な蜘蛛の巣が張られていて、そこに生徒や先生達が蓑虫状態で吊されてるっていう情報が!」


「はいぃ!?」

 何、その怪事件! 無茶苦茶すぎでしょ!


「どうりで今日、登校してくる人が少ないと思ったら、そういうことか」

 先生は合点がいったようにそう言う。それを聞いた霞達は恐怖し、数名は友達や恋人が被害に遭ってるかもしれないと案じる。

 そんな中、執事さんがボソッと呟いた、


「お嬢様……」

 という一言を、私は聞き逃さなかった。


「お嬢様? ちょい待ち。それ、どういうこと?」


「その……先程お2人が来たことで言いそびれていたのですが、実は…………」

 そう言うと執事さんは、これまで明かされることのなかったアレクシアの秘密について語り始めた…………

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