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断章――第一夜
夢を見ている。
どこかわからない薄暗い洞窟の中で、場違いなほどに白い美しい花が揺れていた。
洞窟に適応した種なのか、それとも何か他の理由があるのか、花自体が淡く発光している。
歩き出して、洞窟の床がぬかるんでいることに気づく。
花は僕を導くように、咲いていく。
たどり着いたのは白い花が咲き乱れる地底湖だった。
触れようと手を伸ばして、
「その白い蓮に触ってはだめよ。囚われてしまうから」
優しい声に手を止めた。
雪のように白い少女だった。
対照的に、彼女の瞳の色は太陽を映したような橙色。
「君の名前は?」
「わたしは、ヒバナ。あなたは、ツムギよね。ふふ、なぜ知っているか、かしら?女の子には秘密が多いとだけ言っておくわ」
ヒバナはそう言って微笑んだ。
「ヒバナ、どうして君は、こんな場所に?」
「……そうね、今はまだ、語るべき時ではない。かしら。あなたが旅をしていく中で、この世界の真実に触れていくたびにきっと、明らかになっていく」
ヒバナは向日葵のブローチを夢の中で僕に手渡した。
「また、次の夢で逢いましょう。このブローチは私の祈り。あなたに託すわ」
夢が終わる。
夢から醒めた枕元には、ペリドットとサンストーンがはめ込まれた向日葵のブローチが静かに輝いていた。




