第6章 セレの揺らぎ
セレのゲートが開いた瞬間、
ジオは胸の奥がざわつくのを感じた。
セレ全体が微かに震えている。
その揺らぎは、アビで感じたものよりもずっと強かった。マナが駆け寄ってくる。
「ジオ……無事でよかった。」
ジュリーはマナの服を握りしめ、
その小さな鼓動が人工太陽灯の揺らぎと重なっていた。ジオは周囲を見渡す。
壁の配線が唸り、床が周期的に震え、
空気が脈動している。
セレは、太陽の揺らぎの中心だった。
セレの管理者がジオに駆け寄る。
「生活の揺らぎを測る装置…
…本当に必要なんですね?」
ジオは持ってきたコンテナを一度指差してから頷く。「生活の音、鼓動、振動……
それらが太陽の揺らぎと同期している可能性が高い。まずは“見える形”にしないといけない。」
広場と各家庭に、生活音を拾い揺らぎに変換する小型装置が取り付けられていく。装置が稼働すると、解析端末に波形が浮かび上がった。
生活音 → 音響パルス → 太陽揺らぎとほぼ一致。
ジオは息を呑む。「……太陽は、生活の“音”まで聞いている。」マナは震える声で言う。
「じゃあ……私たちの不安が、太陽に届いてるの?」ジオは答えられなかった。
ただ、端末の波形がその事実を示していた。
広場の装置が本格稼働した瞬間、
人工太陽灯が強く揺れた。「っ……!」住民たちが悲鳴を上げる。
ジュリーがマナにしがみつく。
解析端末が警告を発する。
“揺らぎ強度上昇──太陽脈動との同期率 95%”ジオは叫ぶ。「生活の音が太陽を揺らしているんだ……!このままじゃ──」
その瞬間、通信端末が緊急着信を告げた。
画面には、倒れた所長が映っていた。
研究員たちが必死に支えている。
「ジオ……タワーの揺らぎが……逆流して……アビにも……」通信は途切れた。
ジオは凍りつき、マナが慌てる「お父さん!大丈夫なの!?お父さん!」
通信が一部回復した画面には医療班が映る。
「命には別状ありません、……ジオさんお戻りください。」ジオはマナに振り返り
「マナ戻るよ、君には酷だがここにいてほしい。
所長はまかせてくれ。」マナは心配そうに続ける
「…でも」
「わかってくれ、セレとジュリーには君が必要なんだ」マナは不安そうに見つめたあと決したように言った。「ジオ……気をつけて。お願い。」
ジオは頷き、セレを後にした。
アビに戻ると、研究区画は混乱していた。
加熱レーザーの出力は不安定。
タワーの共鳴装置は揺らぎに耐えられず、
研究員たちは疲弊している。
所長は意識が朦朧としたまま横たわっていた。
ジオは所長の手を握る。「必ず……太陽を安定させます。」所長はかすかに頷いた。
ジオは研究室に戻り、
セレで得た揺らぎデータを解析する。
そして仮説にたどり着く。
揺らぎを太陽へ届けるには、
タワーの加熱レーザーに揺らぎを“乗せる”必要がある。
レーザーは太陽表面に到達できる唯一の装置。
そこに揺らぎを重ねれば、太陽の反応を直接引き起こせる可能性がある。
ジオはシミュレーションを開始した。
しかし──すべて失敗揺らぎをレーザー波形に重ねると──波形が乱れる出力が不安定になる太陽に届く前に崩壊するタワーが耐えられない研究員が言う。
「揺らぎは生活そのものです。
レーザーは単純な波形しか扱えません。
複雑すぎるんです。」
ジオは机に手をつき、息を吐く。
「……何かが足りない。」欠けた要素ジオは揺らぎの波形を見つめる。
生活の音、鼓動、振動──
それらは確かに太陽と同期している。
だが、加熱レーザーに乗せると崩れる。
「揺らぎを光に乗せる……それだけじゃ足りない。
揺らぎを“整える何か”が必要だ。」
ジオは立ち上がる。「必ず見つける……。」




