第11章 最後の0.1%
太陽の揺らぎが止まるアビのタワー最上階。
冷凍レーザー試作機は稼働し続け、
太陽へ向けて揺らぎパルスを送り続けていた。
しかし解析端末の表示は、
「同期率 99.9%」
のまま、微動だにしない。
研究員
「……太陽の揺らぎが停止しています。
これは“応答待ち”状態です。」
ジオ「太陽は……何かを待っている。」その“何か”が、まだ誰にも分からなかった。
ジュリーの絵の再解析研究員がジュリーの絵をスキャンし、揺らぎ波形として解析する。
画面に映し出された波形は美しく、
しかし中心に“途切れた線”があった。
ジオ「この線……パパとジオをつなごうとして、途中で止まっている。」
研究員「揺らぎの中心が……未完成なんです。」
ジュリーの絵は、
“未来へ進む光”と“ここに残る影”を描いていたが、その間の線は震え、途中で切れていた。
太陽はその“未完成の線”を待っている。
セレの自宅。
ジュリーの絵を見つめていたマナは、
ふと、息を呑んだ。
「……これ、ジュリーの揺らぎじゃない。」
ジオ「マナ……?」マナは震える声で続けた。
「これは……私の揺らぎ。未来へ進みたい気持ちと……過去を失いたくない気持ち……その両方で揺れている、私の心。」ジュリーはそれを感じ取り、
絵にしていたのだ。つまり──
最後の0.1%は、ジュリーではなく“マナ自身の揺らぎ”だった。
太陽が求めていたのは、
セレの未来の象徴であるジュリーの揺らぎだけではなく、その揺らぎを生み出している“マナの心”だった。マナは胸に手を当てた。
「……私は、言葉にできなかった。
未来へ進むことも……
過去を抱きしめることも……
どちらも怖かった。」ジオは静かに聞いていた。
マナ
「だから……ジュリーが代わりに描いてくれた。
私の揺らぎを。」しかしその揺らぎは、
まだ“マナ自身の声”として太陽に届いていない。太陽は、
マナが自分の揺らぎを“自分の声”で示すことを待っている。マナは、
ジュリーの絵を胸に抱きしめていた。ジオはそっと静かに言葉を置いた。
「マナ……未来へ進むことは、過去を捨てることじゃない。パパの影は……ずっと君の中にある。」
マナは涙をこらえながら聞いている。
ジオ
「君が未来へ進むなら……
その影も一緒に連れていけばいい。」
マナの揺らぎは、
“未来”と“過去”の間で揺れ続けていた。
太陽はその揺らぎを、
“マナ自身の声”として求めている。太陽へ向けて揺らぎを送る準備をするマナはパルス装置の前に立つ。
ジュリーの絵をそっと装置の横に置いた。研究員
「太陽は……マナさんの揺らぎを待っています。」マナは目を閉じる。
胸の奥で震える揺らぎ──
言葉にならない、形にならない思い。それを、太陽へ向けて送ろうとしていた。マナがパルス装置に手を触れた瞬間──
太陽の揺らぎが微かに震えた。
研究員
「太陽が……反応している……!」
ジオ
「マナ……君の揺らぎが……太陽に届いている。」しかし同期率はまだ動かない。99.9%のまま。
太陽は、“マナの揺らぎが完全に形になる瞬間”を待っている。




