第9章 帰還命令のタイムリミット
アビの研究区画は、緊張した空気に包まれていた。
太陽の揺らぎは依然として強く、人工太陽灯は弱い光を震わせている。
その揺らぎは、まるで太陽自身が苦しんでいるようだった。
ジオは研究端末を開き、冷凍レーザーの設計図を広げた。
星空の下でひらめいた“冷却の原理”。
それが今、彼の唯一の希望だった。
帰還命令の影通信端末が点滅する。
地球ソウルからの帰還命令が、画面に冷たい文字で表示されていた。
「ジオ・フォルツァ。地球本部ソウルへの帰還を命じる。出発は48時間後。」研究員が声をかける。
「ジオ……本当に行かないのか?
命令違反になるぞ。」ジオは端末を閉じた。
「太陽が死ねば、命令も何もない。
俺はここで戦う。」その言葉に、研究員たちは静かに頷いた。
倒れたままの所長のもとへ向かう。
所長は意識が朦朧としているが、ジオの声だけは届いているようだった。
「太陽を安定させる方法が見つかりました。
加熱じゃない……冷却です。
冷凍レーザーに揺らぎパルスを乗せます。」
所長は弱い声で答えた。
「……冷却……太陽を……静める……」その言葉は、ジオの胸に火を灯した。
研究員たちの反応研究区画に戻ると、研究員たちが集まっていた。
「冷凍レーザーなんて、
太陽観測用の補助装置だぞ」
「出力が弱すぎる」
「揺らぎを乗せるなんて無理だ」しかし──
「でも……加熱レーザーはもう限界だ」
「太陽を冷却するという発想は……否定できない」議論は紛糾しながらも、
“冷却”という新しい希望が確かに灯っていた。
ジオは言う。「やるしかない。
時間は……あと2日しかない。」
冷凍レーザーは本来、太陽表面の温度測定用の弱い装置。それを──出力強化
揺らぎパルスと重ね、タワーとの同期、太陽脈動との整合性調整という“無茶な改造”に取りかかる。
研究区画は再び活気を取り戻し、
工具の音、端末の警告音、研究員たちの声が響き始めた。マナとジュリーからの通信作業の合間、通信端末が鳴った。
画面には、セレの自宅からマナとジュリーの顔が映る。
マナ
「ジオ……帰還命令が来たって聞いた。
本当に行かないの?」ジュリー
「ジオ、太陽を助けて……」ジオは胸が熱くなる。「必ず……太陽を安定させる。
君たちの笑顔を守りたい。」通信が切れた後、
ジオは深く息を吸った。
距離があるからこそ、決意はより強くなる。冷凍レーザー試作機、完成徹夜の作業の末、試作機が完成した。研究員たちが装置を囲む。
「出力は不安定だが……揺らぎパルスは乗せられる」
「太陽に届く保証はない」
「でも、やるしかない」ジオは装置を見つめる。「これが……太陽を救う光だ。」
太陽への“冷却パルス送信”準備へジオはタワーの最上階へ向かった。
冷凍レーザー試作機を太陽へ向け、
揺らぎパルスを重ねる準備を始める。
残り時間は── 24時間。ジオは呟く。
「帰還命令なんて関係ない。」




