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運河が張り巡らされた砂漠と雪の惑星に住んでいるけど質問は?~ついでに言うと私は17歳以下の女の子が大好きだ~  作者: 256進法


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9/12

リザードマン達の名誉

ミーナさんは逃げてなんか居ない!

逃げてなんかないんです……!!




~草の生えた巨岩群~


ミーナとクリオネが乗る馬は、ガスコーニュの部隊から逃れる様に隘路へと駆け込んでいく。

しかし、彼女達の目前には岩山が立ちはだかるように、行く先を囲んでいた。

その時、岩の裂け目から飛び出した木が、ミーナの緑色の瞳に映った。


「──これだ!!」

「【レッドデビルズソード】!!」


ミーナの抜き放った赤い蛇腹剣はひとりでに伸び、木の幹に巻き付いた。

彼女はクリオネを抱えて叫ぶ。


「《収縮》!!」


蛇腹剣がミーナとクリオネを引き上げていく。

ガスコーニュは即座に後続の兵士へサインを出し、兵士達はUターンしながら迂回路を探しに隘路を引き返して行く。

ガスコーニュ自身は馬の腹を蹴り、加速する。


「この俺の追撃から逃げられると思っているのか!!!」

「《ウィンドスロープ》!!」


強烈な突風が戦馬とガスコーニュの巨体を持ち上げ、木に掴まったミーナへ一直線に向かって来る。

ミーナはクリオネを抱いて、木から岩場へ飛び移る。


「──マジかよ!?」


ガスコーニュと戦馬は更に風で舞い上がり、ミーナ達の前へと軽やかに着地した。

ガスコーニュは巨大なランスをミーナへ向けて言う。


「【レイス姫】を渡せ」

「二度は言わない」


ミーナはその圧倒的な圧に、声を出す事すら出来なかった。

そこにあったのは、数々の運命を屠って来た『黒い死』であった。

しかし、ミーナはクリオネを抱き寄せながら不敵に微笑む。


相棒(・・)を渡せと言われて渡す傭兵が、この世の何処に居んだよ」


クリオネは震える手でミーナの腰にしがみつき、青い瞳でガスコーニュを睨んでいた。


「……俺の追跡は逆効果だったか」

「ならば言い方を変えよう」

「【レイス王国第一王女クリオネ・レイス】、貴女を《ジャンヌ・ド・ユクセル枢機卿》の命で捕縛しに来た」


ミーナの顔から血の気が引いていく。


「まさか、【聖少女】の勅命なのかよ……!」

「テメェら!!クリオネを何に使う積もりだ!!」


「それは【聖少女】のみが与り知る事だ」


ガスコーニュはランスの先端を一ミリも反らさず答えた。

クリオネは膝を震わせながらミーナへ言う。


「……私も名前だけは知っています」

「その名はレイス王国の宮廷まで響いていましたから……」

「どんな人物までかは知らないですけど……」


ミーナは赤い蛇腹剣を構え、ガスコーニュを睨みながら言う。


「……生まれ付き神聖魔術と治癒魔術が使える、神に選ばれしバケモノだよ」

「【聖少女】が生まれてから、神聖魔術と治癒魔術の数は倍になったと言われているくらいだ」

「その功績の甲斐あって、ユクセルは僅か17で枢機卿の地位に就いた」


「17……!?」

「私と5つしか……」


「え!?クリオネお前12歳だったのかよ!?」

「通りで可愛すぎるワケじゃん!」

「思春期食べ頃真っ盛りじゃん!?」


ミーナはクリオネを抱き上げ、笑顔で頬をくっつけた。


「ちょっ、ちょっとミーナさん!」

「今そんな場合ですか!?」


「命より重要な事実だぜ、それは!!」

「そして俄然、お前を護らないと行けなくなったぜ!!」


ミーナの鮮やかな緑色の瞳へ力が戻り始める。

クリオネは自分の心臓が高鳴り、身体の震えが治まって行くのを感じた。

ガスコーニュは息を吐き、クリオネを見下ろして言う。


「北方連合は今や、レイス王国第二王位継承者である《クルピンスキー公》の手に落ちた」

「あの強欲な魔導鎧使いは、世界の富全てを我が物にしようと教会領と各都市を狙っている」

「貴女は奴のクーデターにより、その身を追われたのだ」


クリオネは唇を震わせながら口を開く。

ミーナは彼女の恐怖と怒りを感じ取り、剣を強く握る。


「……だ、だから……貴方達教会は……」

「この機に私を改宗させ担いで、北方侵攻の手先にしようと……」


「それはない」

「例え【聖少女】の目論見がそうでも、俺がそうはさせない」

「大戦の地獄を見てきた俺が、この身を賭けて保証する」


ミーナはクリオネの前に出て、馬上のガスコーニュを見上げて眉間に皺を寄せながら言う。


「もう止めとけよ、黒騎士のオッサン」

「12歳の華奢な妖精ちゃんにはテメェの圧はキツすぎんだよ」


ミーナは赤い蛇腹剣を抜いた。

ガスコーニュの鷹の様な黄色い瞳が鈍く光る。


「──決闘か」

「傭兵ミーナ、お前にはその資格すら無い」

「お前は田舎町で子供でもこさえながら、無難に生きるのが似合っている」


──そうだ。

私はこれ以上を失う事を恐れて、何もかもから逃げていた。

1人で生きていた気になっていて、誰かに甘えてこの5年を過ごして来た……


「でも……」

「今度はたった一つだけど、最後まで護りたいんだ」

「誰かが甘えられる自分を取り戻したいんだ」


「──良いだろう」

「お前の挑戦、受けてやる」

「傭兵ミーナ、お前の事は死ぬまで忘れない」


クリオネは大粒の涙を流し、ミーナの後ろから言う。


「ミーナさんは逃げてなんか居ない!」

「逃げてなんかないんです……!!」


嬉しいコト言ってくれるじゃないか、クリオネ。

マトモな社会や生活からも、戦場からも逃げて来たけど……これで逃げられなくなっちまった。

全く、大した相棒だぜ。


「さっさと掛かって来いよ、黒騎士のオッサン」

「テメェは童貞じゃないだろ?待ってる女にハジかかす気か?」


返答は微塵の容赦も無い、巨大ランスによる刺突だった。

ミーナはそれを紙一重で躱すと、馬の足に向かって蛇腹剣を放った。


「──甘い!」


ガスコーニュは人馬一体の動きで馬を竿立ちさせ、剣による斬撃を躱した。

ミーナはすかさず、馬の腹に向けてリボルバーを撃った。

ガスコーニュはすかさず、魔術を発動させる。


「《アーマーライト》!!」


馬の腹へ神聖魔術の文字列が纏わり付いて銃弾を弾いた。

ミーナはガスコーニュの手首に飛びつき、腕十字を極めようとした。

だが、ランスは彼の手から落ちなかった。


「俺に格闘戦を挑む気か?」

「舐めるな!!」


ガスコーニュは反対側の手でミーナの片足を強引に外し、掴んで彼女を振り回す。

そして、ミーナを岩場に叩き付けた。


「ぐぅっ!?」


ミーナの身体に凄まじい衝撃が走り、一瞬動けなくなった。

だが、彼女は膝を震わせながらも立ち上がる。

何故なら、同じ痛みを抱えてうずくまるクリオネが居たからだった。


「アリス、お前の置き土産……今ココで5年ぶりに使わせて貰うぜ……!」


ミーナはスペードのエースが書かれたトランプを、ポケットから取り出した。


「空間魔術仮発動!」

「《シャッフルドロー》!」


トランプは燃えながら閃光を放った。

次の瞬間、ミーナと馬の位置が入れ替わり、彼女はガスコーニュを担ぐ形になった。


「そうら!!」


ミーナのバックドロップにより、ガスコーニュは後頭部から落とされる。

甲冑を着ていたとは言え、凄まじい衝撃は彼の首から脳に伝わり、視界が揺れる。


「……!」


ミーナはすかさず倒れた彼に対し、ナイフで甲冑の隙間を刺した。

そして一刺しした後、後方宙返りで跳んでランスとの距離を取った。


「……なるほどな」


ガスコーニュは起き上がり、バイザーを上げて笑う。

そしてナイフを構えるミーナに向かって言う。


お前も(・・・)あの地獄を生き抜いて来たのか」

「屍が積み重なり、魔導砲弾が飛び交い、魔術の業火が砂漠と雪原を焼き尽くしたあの地獄を……」


「正直……アンタの前に敵として立つ方が、余程地獄だぜ」

「ライテンルトの戦いで重騎兵部隊を率い、敵の陣地をガンガン踏み潰してたあの光景は、まだ脳裏に焼き付いてる……」


「──見ていたのか」


「戦場の片隅でな……」

「まさか、踏み潰される方になるとは思ってなかったよ」


ガスコーニュはランスをミーナへ向け直す。


「こんな逸材を見逃していたとは……俺も若かった、という事か」

「本当に惜しい……」


「……その割にはランスがこっち向いてるぜ、聖騎士サマ」


あのナイフ……全く効いてねぇぜ、チクショウ。

ガスコーニュはバイザーを再び下ろす。


「……フン」

「お前の様な油断のならない女には、これくらいが丁度良い」


その時、クリオネは岩の間に見え隠れする影に気付く。

彼女はセレンから預かった荷物をミーナへ見せ、叫ぶ。


これ(・・)!」

「投げても良いですか!?ミーナさん!」


「!!」

「投げろ!クリオネ!」


クリオネは躊躇わず、岩の間に向かって荷物を力一杯放り投げた。

放り投げられた荷物を、鱗で覆われた四本の指が掴み、それを開いた。

荷物は引っ込む。


『『『私は死ぬ! 私は死ぬ!』』』

『『『私は生きる! 私は生きる!』』』


リザードマン達が自分の鱗を叩きながら、岩陰の間から出て来た。

ガスコーニュはミーナ達から目を逸らさずに、彼等の威嚇と敬意(・・・・・)を受け取り続ける。

リザードマン達は片膝を付き、自分達の力こぶを思い切り叩いて叫ぶ。


『『『私は死ぬ! 私は死ぬ!』』』

『『『私は生きる! 私は生きる!』』』

『『『この硬い鱗の男が……』』』


リザードマンの【ハーン】が集団より一歩前に出て、一しきり唸る。

そして、彼等はまるで全員が一人の戦士かのように、一糸乱れず鉤爪の付いた足で岩場を踏み鳴らし始めた。


『『『太陽を再び輝かせた女によって……』』』

『『『一歩前へ、さらに一歩前へ!!』』』

『『『太陽が輝く!!』』』

『『『ハァッ!!』』』


クリオネは岩場何処か砂漠全体を震わせるような、リザードマン達の雄々しい掛け声に圧倒された。

ミーナは笑顔で膝を付き、自分の腕を叩いてリザードマン達へ叫ぶ。


『待たせたな!!』


それに対し、リザードマン達は喉を鳴らす様な、低い咆哮を響かせた。

ガスコーニュは黒い甲冑の中で、ほんの少しだけ口元を吊り上げた。


「……これは仕切り直しだな」

「ここまでされたら、俺の負けだ」


ガスコーニュはランスを下げ、黒い戦馬に飛び乗った。

そして彼は笑顔のミーナへ言う。


「その命、次の戦場まで預けておく」

「もし死んでいたら、今度こそ地獄まで追い掛ける」


ミーナはガスコーニュの方を振り返って言う。


「……聖少女サマのお使いは良いのかよ」


「レイス姫を捕まえろ、リザードマン達を討伐しろ、とまでは言われたが……」

「俺の目の前には両者とも見当たらない」

「そして、期限も決められていない」


「……流石はベテランだな」

「『上』のいなし方も見事だぜ」


「さらばだ、荒野の女戦士」


ガスコーニュは馬を竿立ちさせると、見事な手綱捌きで崖を駆け下りて行った。



今回のリザードマン達の動きの元ネタは、ニュージーランドの伝統舞踊であるハカです。


ここまでお読み下さりありがとうございました。


「面白かった」「期待している」「ガスコーニュが色んな意味で強くて完成されてる」「ミーナの戦い方好きだ」

「聖少女とかまた不穏な……」「思春期食べ頃真っ盛りじゃん!?」「クリオネが本当にヒロイン」

「ここでリザードマン!」「迫力スゲェ……」「ガスコーニュのおっさん好きになった」


と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。

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