リザードマン討伐(中編)
相変わらず、カワイくておバカなミーナちゃん❤️
~4時間後~
~砂漠のナベアツ亭~
甲冑に包まれた筋骨隆々の巨躯と、鷹の様な鋭く黄色い瞳が店内を見回した。
彼は店に入るなり、椅子に座り込む。
椅子が軋みを上げるが、男はお構いなしにもたれ掛かった。
「女将、水とステーキライスを」
「はいはい」
「少々お待ち下さいませ」
「先にお冷やをお出ししますね」
水を出された大男はコップを持つと、一気に冷水を流し込んだ。
男に握られたコップは普通のサイズにもかかわらず、子供用かのように小さく見えた。
「……女将」
「いや、セレン・ハルタ」
「まさか、あの【青の旗手】がこんな場所で酒場と食堂を営んでいるとはな……」
「あらあら」
「こちらも、まさか【ナイト・フォー・ナイト】のガスコーニュさんが来店して下さるなんて……」
「あの金髪のカワイイ男の子は一緒じゃ無いの?」
「アイツは今『課題』をこなしている所だ」
「メシを食ったら進捗を見に戻る」
セレンは肉を焼きながら、振り返ってクスクスと微笑む。
青い髪が背中から太ももに掛けて、艶やかにうねった。
「相変わらず面倒見が良いんだから~」
「フン、言ってろ」
「しかし、10年前と全く変わらないな、お前は……」
「あら。私を口説く気?」
「聖騎士を辞めたらな」
「……この町に来た一番の収穫は、お前に逢えた事だなセレン」
セレンは何も言い返さず、笑顔のまま米を鍋に入れ、肉と一緒に炒め始める。
鍋と一緒に、その豊満な乳が上下左右に揺れる。
「──セレン」
「お前の協力が必要だ」
「謝礼なら幾らでもする」
「もう現役は引退したのだけれど」
「でも、アナタがそこまで頼み込むって……余程の事態なのね」
「……ああ」
「良くない流れだ」
「このままだと、また大戦が起きる」
「……それは、この町にも……そして私にも良くない影響が来る……」
セレンの琥珀色の瞳は悲しげな輝きを伴い始めた。
そして、セレンは鍋へスライスしたニンニクを落としていく。
「そうだ」
「……協力してくれるか?」
セレンはガスコーニュの言葉に対し、優しげな笑みを浮かべて首と青いお下げを横に振る。
「ここに居ると、手間の掛かる子ばかりが私を頼ってくる」
「でも、そんな今が楽しくてしょうがないの」
「今は彼女達の立ち直りと成長、それを見たいかな~なんて!」
(……これが本音だな)
「だから、彼女達がここを巣立つまで私はここを動かない」
「……巣立たなかったら?」
「それはそれで幸せかも!❤️」
(……これは本音……なのか?)
(……こうやって煙に巻くのも相変わらずだな)
セレンはステーキライスを盛り付け、ガスコーニュの居るテーブルまで持って来て置いた。
「サービスで特盛りにしておいたから!」
「10年前のアナタだったらペロリだったわ!」
「全く……お前には敵わないな」
ガスコーニュは静かに笑い、ステーキライスを大きなスプーンで掬った。
~2時間後~
「あー疲れた!疲れた!」
「女将!麦茶とタコライス二つ!!」
店へ入ったミーナは暖簾を鬱陶しそうに避けながら、その赤髪を払って言った。
セレンは洗い物をしながら汗に塗れた顔を上げ、笑いかける。
「あらあら❤️」
「任務は無事終わったのかしら❤️」
「──スマン、女将」
「『今回の依頼はこなせない』とギルドへ伝えてくれ」
「……どうして?」
ミーナは回りにクリオネしか居ない事を確認し、身を乗り出してセレンの耳元へ顔を近づける。
「付近のリザードマン達を率いて居るのは【ハーン】で、【草原の英雄】直系だ」
「長い旅を重ねて来たアイツ等は一度築いた居場所の為なら、死ぬまで戦う」
「それに……」
「それに?」
「梨を美味そうに囓るアイツ等を見たら、戦う気が失せちまった」
「……違約金なら払う。今回はアイツ等を見逃してやってくれないか?」
セレンはミーナの頭を抱えて撫で回し始める。
豊満で弾力のあるおっぱいで、ミーナは窒息しそうになった。
「ミーナちゃんはホント優しいんだから~~❤️!」
「むぐぐぐ……!」
ミーナはおっぱいの圧力とセレンの汗、そしてセレンの芳醇で爽やかな匂いで頭がクラクラし始めた。2人のやり取りを見ていたクリオネは、自分で麦茶をコップへ入れながら言う。
「……私もミーナさんと同意見です」
「彼等程誇り高く、それでいて物に執着しない人達は見た事ありません」
「何故、一緒の町に住めないんでしょうか……」
セレンはヘッドロックを解き、ミーナを解放する。
ミーナがクリオネの質問に答えようとしたが、セレンは制止した。
「私が答えるわ❤️」
「……分かった」
セレンは再びエプロンを取り出し、その色気すら漂う首元で紐を結んだ。
「クリオネちゃん。【教会】の存在は知ってるわね?」
「はい。私は北方出身なので、なんとなくでしかないですけど……」
「同盟・共和国・帝国・公国……世界の6~7割の国では【フリス教旧派】が信じられているの」
「この【フリス教旧派】のコントロールを担っているのが、教都テトラグラマトにある【教会】……」
「そして、その【教会】が信仰の基準として絶対視しているのが【教典】よ」
セレンは何かの肉を魔導冷凍庫から取り出し、肉挽き器で挽き始めた。
「そしてその【教典】の内容にこそ、リザードマン達と共生出来ない理由が在るの」
「理由……」
クリオネはコップを握り締めた。
「【神は人間を世界の主にする為、魔術と冶金の技術を与えもうた】」
「この一文が理由よ」
「そしてリザードマン達は……」
「『金属に嫌われている』」
「ですよね?」
セレンは嬉しそうに微笑み、クリオネの銀色の髪を優しく撫でる。
「賢いわね、クリオネちゃんは」
「でもその賢さ、余り表に出しちゃダメよ?」
ミーナは頬杖を付きながら、セレンの言葉を引き取る。
「リザードマン達が人間社会から排除されているのはそれもあるが……」
「アイツ等は私の眼から見ても、無欲過ぎるぜ」
「知ってるか?リザードマンの社会には奴隷が無いんだ」
「……え!?」
クリオネは驚き、青い瞳をミーナの方へ向ける。
「何で無いか、って聞いた事あるんだけどさ……」
「『全員が戦士であり狩人だから』なんだとよ!」
「アイツ等、自分の事は全部自分でやるんだぜ!大したモンだよ!」
ミーナは笑顔で緑色の瞳を輝かせ、宝石が嵌められた石の腕輪を掲げる。
「この腕輪だって、アイツ等にとっちゃ何時でも作れるモンなんだ」
「でも、それには掛けた時間と手間、そして感情が籠もってる……」
「それらが奴等に取っての本当の価値さ」
「ミーナさん……」
クリオネは自然と、ミーナの横顔をはにかみながら見つめていた。
野菜を切っていたセレンは手を止め、2人に向き直って言う。
「2人に私からちょっとした『お使い』を頼まれて欲しいの」
「報酬は【1週間どんな料理を頼んでもタダ】よ」
「「えっ!?」」
「本当よ。ミーナちゃんの大好きな倍ダブルチキンバーガーも食べ放題❤️」
「マジか!?」
「ぃよっしやぁっ!!」
ミーナは腕を上げ、赤い髪を揺らしながら笑顔で跳び上がった。
そしてセレンは店の奥から大きな袋を引っ張り出し、ミーナの前に置いた。
「これを明日の夕方までにリザードマン達へ届けて欲しいの」
「中身を見てはダメよ❤️」
「あの~女将さん?」
「ん?❤️」
「私が依頼を中断する事を分かっていて、最初から準備していたんじゃ……」
ミーナは笑顔のセレンに口元を摘ままれる。
「相変わらず、カワイくておバカなミーナちゃん❤️」
「ひゃ、ひゃい、ひゃはりまひひゃ……!」
そのやり取りを見ていたクリオネは、笑顔でミーナの腕に抱き着く。
(やった!またミーナさんと外に行ける!)
ミーナは暖かい高揚を僅かに感じ取りながら、セレンの指を必死で引き剥がした。
~同時刻~
~市政庁・会議室~
「ここなら岩場が多く、地形的にリザードマンが潜み易いでしょう」
「しかし道が狭く物陰が多いので、近接重装備の盾兵を前にして進軍・捜索するのが妥当かと」
金髪碧眼の美男子が、地図を指揮棒でなぞっていく。
しかし、ガスコーニュは鉄灰色の髪を掻き、ため息を付きながら言う。
「60点だ、ロベール」
「え……」
ガスコーニュはその太く長い指で、地図を次々と指していく。
「中軍の横合いから、伏兵が仕掛けて来たらどうする」
「リザードマンは弓の扱いや、斬り込みの奇襲に長けている」
「先陣だけに重装備の兵士を固めれば、小部隊による分断伏兵攻撃には対応出来ない」
「し、しかし、リザードマンが伏兵戦術など……」
「敵を侮るな!!!」
ガスコーニュの怒声が会議室どころか建物全体を震わし、執務室で茶を啜っていた市長は椅子から転げ落ちた。
ロベールの青い瞳は完全に動揺し、彼は口を開けたまま硬直していた。
「リザードマンは高い知性と戦術能力を持つ、優秀な戦士達だ」
「連中を舐めて掛かり、してやれられたケースも少なくない」
「……っ」
ロベールは返事が出来ず、息を絞り出すのがやっとだった。
「歴史に名を残したり、名を上げた聖騎士達は例外なく異種族への対処が上手かった……」
「その意味は分かるな?」
「はっ、はい……!」
「真に有能な聖騎士は……例え相手が武器を持たない子供でも、敵と認めれば決して侮らない」
「これを仕留める為、常に全力と命を賭ける……これが基本だ」
「その基本が出来て、初めて民と信仰を護れる」
ガスコーニュは窓に掛かったカーテンを開ける。
「もっと自分の五感を使って情報を集めろ、ロベール」
「論理や理屈に囚われず、あるがままを受け止め、それを信仰で培った強靱な心で消化しろ」
「はい!!」
ロベールは口を結んで姿勢を正し、胸の辺りで十字を切った。
女将はかつて世界中を回っていた為、大抵の料理は作れます。
ここまでお読み下さりありがとうございました。
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「女将もガスコーニュもREKISEN過ぎる……」「ベテラン同士の雰囲気好き」
「ミーナもクリオネもかわいい」「自分もヘッドロックされたい」「完全に女将の掌の上だわ、コレ」
「ガスコーニュのプロ意識好き」「ロベール君、未熟なエリートって感じで好き」
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