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運河が張り巡らされた砂漠と雪の惑星に住んでます~ついでに言うと私は17歳以下の女の子が大好きです~  作者: 256進法


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女サムライ達の身を焦がす様な妄執(後編ー②)

面白い……

これは実に面白い生物です。

私の学者としての好奇心をそそられる……


鑑賞用魔法(屋敷から):https://www.youtube.com/watch?v=DHMhz2Adois&list=RD5t-lhf2HXlA&index=23

鑑賞用魔法(ハンジローがウエスギから離反後):https://www.youtube.com/watch?v=JhJYlpZu_1g


~キオト~

~アルマフディー翁の屋敷・パーティー会場~


ワインを飲んでいたマルタレータは、赤紫色の瞳を左右に動かして噴水の方を見て呟く。


「──獣が屋敷に侵入したぞ」

「一体誰の匂いに釣られてやって来たんだろうな?」


マルタレータはニヤ付きながら、燻製ハムを摘まむレイカの方を見る。

レイカは肉を咀嚼し、ワインで流し込んで言う。


「──狙いは私(・)か」


黒髪黒目の女聖騎士が、姫カットをポニーテールに纏め上げ、白い歯を見せながら窓の向こうのレイカを見つめながら、ゆっくりと歩いて来ていた。

マウリッツの4つ目の仮面から、妖しい紫色の眼光が放たれる。


「──少々、【実験】しても宜しいでしょうか?クレーヴ伯」


マルタレータは足を組み替え、橙色の髪をかき上げながら獰猛に微笑む。


「ああ、解剖(バラ)しても構わない」

「バカな聖騎士が敷地で事故死した、それで始末を付ければいい」


「了解しました」

「【人形魔術】《ヒューマンパペット》」


馬車の荷台から二体の人形が飛び出て、手足から鋭利な爪と刃を出した。

二体の人形は上から糸に操られているかのように、徐々にウエスギの行く手に近づいて行く。

アルマフディー翁は人形の継ぎ接ぎを見て、マウリッツに向かって詰問する。


「……バルセラフ爵!!」

「アレは死体を加工したモノだろう!!」

「魔術において【死体の利用は禁忌】だ!!しかも、よりによって聖騎士相手に……!!」


「これは人聞きの悪い……」

「『資源の再利用』ですよ、アルマフディー翁」

「それにタダの死体ではありません。色々な生き物や素材を混ぜて強度を上げています」


「子爵……!」

「君はその言葉が出るという事自体、如何に異常な状態か分かっていない……!!」


レイカはキセルを吸い、指を動かすマウリッツに向かって煙を吹きかけた。


「オマエ……この程度であのイカレ姫がやれると思ってるんか?」

「アイツがどれだけの村や町を東方で滅ぼして来てると思うとんのや」

「こっちでもアイツの暴力が溢れに溢れて、犠牲は留まる所を知らん」


「……」


「あと、見損なうたわオマエ」

「死体を戦いに使う事に異論があるワケやあらへん。それがオマエの武器の一つなんやからな」

「でもオマエ男やろ。なら自分が直接戦えや」


「──私とあの生物との戦いが見たいと?」


レイカは頬杖を付き、マウリッツに向かっていつも通りの微笑みを向ける。


「オマエが直接ウエスギと戦って勝てば、今夜は一緒に寝たるわ」

「こないな超絶美人と寝られるなんて、オタク君の人生じゃ1回あるかないかやで~~」


レイカはケタケタ笑っていたが、マウリッツが自分の4つ目の仮面に手を掛けた瞬間、キセルを地面に落としてしまった。


「──約束ですよ、ミス・ソードヘッドランド」


仮面の下からは、涼やかな美形の貴公子が僅かな笑みをレイカへ向けていた。

彼の顔は計算され尽くした美術品の様に、この世ならざる美貌を放っていた。

レイカは彼の顔に釘付けとなり、初心な少女の様に固まってしまった。


「はぇっ……」


マルタレータは腹を抱えて笑い出す。


「アーハッハッハッ!!」

「はひっ……くくっ……!なんて面白い余興だ!」

「あっはっはっ……!」


(あ、後で覚えてろや!!)


マウリッツは仮面を被り直し、窓を開けて会場からベランダへ出て行く。


「ミス・ソードヘッドランド……」

「貴女は完璧な美を持ちながら、そこに完璧な欠落がある……」

「今私の心はその矛盾に惹き付けられている」


ウエスギはベランダに立つマウリッツを見付けると、即座に刀を抜いた。

マウリッツは指揮者の様に構え、言葉を続ける。


「貴女という【美】にこの【演奏】を捧げたい」

「【人形魔術】《パペット・ワルツ》」


2体の人形は見えない糸に引っ張られるかのように、不自然な角度でウエスギへ飛び掛かった。

獰猛な笑みを浮かべるウエスギの刀が輝き出し、光の刃が煌めく。

ウエスギの狂気的な笑いと雄叫びが混じった声が、屋敷内に響き渡る。


「あははははははっ!!!」

「レイカ姫!!観ているんでしょう!?」

「レイカさぁーーーーーーん!!!」


ウエスギの黒目が不気味に光り出す。


「【古代光魔術】《浄眼》」


ウエスギの視界に、魔力の流れとパスが映り始める。

魔力の糸が、人形とマウリッツの指を繋いでいた。


「【古代光魔術】《草薙之剣》」


光の刃が七支刀のように変形し、ウエスギは斬り掛かって来る人形の攻撃を躱しながら、魔力の糸を数本斬り飛ばした。


「──!」


「あははははははっ!!」

「魔力による傀儡ですか!!そんなモノ──」


ウエスギは笑顔でしゃがみ攻撃を躱し、死体人形の裏から捻り上げる様に魔力パスを斬り飛ばす。


「単なるパーティーの余興でしかありませんよ!!」

「今まで私が何人の傀儡師を斬り飛ばして来たと!?」

「アスカの市場に何度首を晒して来たと!?」


彼女の眼にも止まらぬ素早い連続斬りにより、人形とマウリッツのパスが断たれて行く。


「──成程」

「魔力パスが見える相手には、この戦術は逆効果ですか」

「ならこうしましょう。【人形魔術】《オート・パペット》」


マウリッツは死体人形との魔力パスを自分から斬り離した。

死体人形は踊り狂った様にウエスギへ襲い掛かる。

ウエスギは連続宙返りで人形の攻撃を回避し、彼女の黒く長い髪が光子で輝き出す。


「《古代光魔術》」

「【天叢雲剣】」


上空に無数の光剣が出現し、日差しと連なる様に庭園を囲んでいく。


「あははっ!!天誅!!」


ウエスギの無邪気な笑いと共に、大量の光剣が無差別に降り注ぎ始める。

人形は攻撃を回避しようとしたが、光剣が次々とそのボディを切り裂いてゆく。

パーティー会場の客達は、庭に作られたクレーターに騒然とし始める。


「これが……聖騎士……」

「まるで災害だ……!」

「殺される……」

「こんな魔術、見た事がない……!」


人形は既にボロ切れのようになって停止していたが、光剣はまだ処刑対象を待つかのように上空に浮かんでいた。

マウリッツはウエスギに向かって軽く拍手し始める。


「面白い……」

「これは実に面白い生物です」

「私の学者としての好奇心をそそられる……」


「……学者サマでしたか」

「通りでいけ好かない空気を放っていました」

「死体を使ってまで、私につまらぬ講釈を垂れに来たのですか?」


「いえ」


マウリッツはベランダの欄干をもぎ取り、そのまま歩いて行く。

彼の足はベランダの淵や裏へ貼り付いたかように移動し、彼はそのまま壁を伝って庭園に降りて来た。

そして四つ目の仮面を外し、八つ目の仮面を取り出して着けた。


「私は貴女を解剖しに来たのです」


マウリッツはウエスギに向かって手を翳す。

ウエスギは左右に動きながら、彼へと一瞬で距離を詰めていく。


「【複合魔術】」

「《グラビティ・ガトリング》」


マウリッツの前腕が開き、青い幾何学模様の入った不気味な機関銃が現れる。


「!!」


黒い魔導弾がウエスギに襲い掛かる。

彼女は射線を回避したが、弾は後ろから追尾して来た。


「《稜威高鞆(いづのたかも)》!!」


光子の盾が弾を防ぐが、不気味な音と共に空間が歪んで行く。


「目の前がガラ空きですが、それは意図的な物なのですか?」


突如ウエスギの目の前に現れたマウリッツの手が、彼女の心臓に向かって捻り込まれる。


「ぅぐっ……!?」


彼女は内臓が引っ張られる様な衝撃を感じながら、吹き飛ばされた。

彼女は受け身をとれず、刀を握り締めながら血を吐き出す。


「ごほっ……!ゴボホッ……!」


緑色の芝生に、ウエスギの赤い吐血が散って行く。

彼女は肩で息をしながら立ち上がり、呼吸を整えながら口元を拭う。


「みんな……」

「何故……いつも……私を弾き出すのですか……」

「でもレイカ殿……貴女だけは……貴女だけは私を弾き出さなかった……」

「だから私は──」


ウエスギの血塗れの顔に笑みが浮かび、全身が光り出す。


【貴女に魂の底から惚れ込んだのです】

【私の勇姿を、私の愛を見ていてくれますか?】

【今、貴女に逢いに行きます──】


彼女は屋敷の二階を、恋する少女の様な瞳で見つめた。



~工房地区~

~崩れた家~


ハンジローは片膝をつき、シトマの肩に手を置いて言う。


「良く死の砂漠を越えて来たな……」

「そして、良く姉さんを護って来てくれた」

「……本当はお前の忠心に報いたい。だが今の俺にはやれる物が無い……」


シトマはミーナに見えないよう、号泣し始める。

だが震える彼女の背中が、ミーナへ多くを語っていた。

ハンジローは言葉を続ける。


「……エンゾウはどうなった」


「私が19の時に病を得て亡くなりました……」

「ですが、父は持てる全てを私に注ぎ込んでくれました」


「──そうか」


ハンジローは眼を閉じる。

彼の脳裏に、常に自分達王族を護っていた謹厳な男が思い浮かぶ。

ミーナはナイフに手を掛けながら言う。


「おい、感動の再会の所悪いんだけどさ……」

「お前……私をどうする積もりなんだ?」

「お前は聖騎士なのか?それとも王子様なのか?」


ハンジローは立ち上がり、タバコを取り出して火を点ける。

その動作はレイカと瓜二つだった。


「教会の……それも聖騎士の軍事行動を妨害するのは重罪だ」


「けど、お前が王様なら胸先六尺棒じゃん」


「……胸先三寸だ」


「こ、細けぇ事は良いんだよ!」

「それでどうするんだ?私と戦いを再開するか?」


ハンジローは煙を吐き出し、目元を赤く腫らしたシトマを一瞥する。

シトマの目は戦いをこれ以上の戦いを望んでいなかった。


「……ウエスギ卿には俺から上手く説明しておく」

「だからさっさと消えろ」


「え」

「イヤだ」


「何!?」

「普通なら……」


ハンジローは思わず刀に手を掛けそうになった。


「これは普通の状況じゃねーだろ」

「ウエスギは過去に何があったか知らねーけど、人間を消耗品や取引の道具の様に扱ってやがる」

「それを私は許せねぇんだよ、単純に」


シトマはミーナの力強い緑色の瞳を見ていたが、ハンジローに向き直って土下座して訴える。


「どうか……ご一考を……!!」

「ミーナは私の無二の親友であり、レイカ姫の友人でもあります……!」

「ご協力を……!」


「……シトマ」

「俺をお訪ね者にしたいのか?」


「いえ、決してそのような事は……!」


ハンジローは瓦礫の上に座り、シトマに向かって微笑み掛ける。


「ふ……良く言ってくれた、シトマ」

「今こそ父母の仇であるウエスギを討つ」

「いや……この時をずっと側で狙っていた」


「……ハンジロー様……!!」


ミーナはナイフから手を離し、柔らかい笑顔でシトマを引き上げる。


「ありがとな、シトマ」

「クリオネを見つけた時もそうだったけど、やっぱ土壇場で頼りになるのはお前だよ」


「ミ、ミーナぁぁぁ……!」


シトマは泣きながらにミーナへ抱きつく。

いつもなら引き剥がすミーナも、この時はシトマの為すがままになっていた。

ハンジローは鼻水と涙でぐちゃぐちゃのシトマの顔を見る。


(……お前は既に新しい居場所……そして、守るべき場所を見つけたんだな)


ハンジローはミーナへ言う。


「これから俺は聖騎士ではなく、一人の王族……いや、亡国の民としてお前に依頼したい」


「私、既にジイさんから依頼受けてんだけどなー」

「けどまあいいよ……これは個人的な依頼っぽいし」


「俺がウエスギへトドメを刺せる状況を作ってくれ」

「そして、作ったら姉さんとシトマを連れてこの街から脱出して欲しい」


ミーナは赤い髪を後ろに纏めながら答える。


「……ちょっと待て」

「一体何を知ってやがるイケメン王子君」


「ウエスギは直属の教会兵1200人をこの街に連れて来ている」

「だが、この街へ来る前に既に募兵を掛け、2万の兵を水路から進軍させている」

「アルマフディー翁は老練なやり手だが、ウエスギの国家レベルの狂気までは想定出来ていない」


「……大戦以来だぞ、そんな規模の大軍が動くのは」

「レイカ一人に何故そこまで執着してやがる」

「恋でもしてんのか」


「……そうだ」

「ウエスギは姉さんへ深く恋をしている」

「今回の軍事行動は全てヤツの求愛行動だ」


ミーナは思わず背中に怖気を感じた。

ハンジローは言葉を続ける。


「──時間が無い」

「屋敷まで案内を頼めるか?」

「必要な情報は走りながら交換する」


ミーナは頷き、シトマの背中を軽く叩いて言う。


「──というワケだ、イケメン王子君を頼むぞシトマ」


「ばっちこいですよ、ミーナ!」


ミーナはハンジローの後頭部へ衝撃を与え、彼をダウンさせる。

ハンジローはシトマに背負われながらミーナへ抗議しようとする。


「お、お前……!」


「あのさ、お前は一番重要な事忘れてんぜ」

「弟が目の前で人を殺して喜ぶ姉が、この世の何処に居んだよ」

「それに──」


ミーナはマントを羽織り直し、屋敷の方角を見つめて言う。


【ウエスギは私とレイカの獲物だ】

【今回はそう言うケンカなんだよ】


「……!!」


【だからお前は兵隊達の時間稼ぎをしといてくれよ】

【その為の聖騎士の身分と、シトマだろ】


「……死ぬぞ」

「あの女はこの数年間、一秒たりとも隙を見せなかった」


ミーナは鼻先を掻いて言う。


「うーん……」

「なら教えてくれよ、アイツの【クセ】を」

「多分ソレが勝機だ」


「【クセ】……法則……」

「──分かった。40個あるが、覚えられるか?」


「…………」

「できらぁ!!」


(……何だか著しく不安になって来たな……)


ハンジローは懐からメモを取り出し、シトマ経由でミーナに渡した。


「……お前は一度で覚えられるタイプに見えないからな……」

「俺の作ったメモを渡す」


「──おう!任しとけ!」


不安だったハンジローの心は、ミーナの満面の笑顔によって和らいだ。


「姉さんを……頼む」


「ああ、頼まれた!」

「シトマ!レイカの弟を頼んだぜ!」


シトマは微笑でミーナの言葉に応じた。

そして、ミーナは壊れた壁から飛び出し、路地裏を駆けて行った。



《登場人物紹介》


(マウリッツ・ファン・バルセラフ)


Age:26 Sex:男


髪の色:淡い青色 目の色:妖しい紫色


職:魔導生体工学学者・数学者・兵器開発者


主な収入源:領地収入・大学からの俸給・特許収入(偽名)・兵器売買及びメンテナンス業(闇ルート)・投資・水運業


身分:共和国貴族(子爵)


経歴:共和国の上級貴族。10歳で大学を卒業し、11歳で大学教授になる。母親に溺愛されており、【玩具】として実験体を与えられて育った。二十年戦争末期、当時19の彼が開発した兵器が北方連合相手に投入されて大きな成果を上げたが、当時帝国の古代魔導兵器局局長だったゼノスが兵器使用中止を進言。

これがゼノスが立場を追われる一つの原因となった。


好きなモノ:研究・実験・数学的に美しい物・人間・キーリン

趣味:楽器演奏・絵画・パペット・新しい公式を創る事


身長:192cm

体重:84kg


部下達からの評判:ヒルダ様が怖くて何も言えない

最近の出来事:面白い穀物を見付けた


(以下、ヒルダお母様からの能力評価)


筋力:魔導科学の結晶 頑丈さ:魔導科学の結晶 敏捷:魔導科学の結晶 生命力:カートリッジの残量次第 魔力:100人分の魔力 魔術:天才 器用さ:人形使いの達人 学力:大学教授 教養:一流芸術家 格闘:インストール済 剣:使わない 弓・弩:使わない 銃:身体に仕込んでいる 騎乗:AA 操船:AA 顔:数学的に完璧な貴公子&ヒルダ様のドストライク 素行:バルセラフ家 評判:私の自慢の愛息 危険度:教会の敵


ヒルダお母様からの一言:私が愛するのは貴方だけよ、マウリッツ……ふふ……

総合評価:バルセラフ家が生み出した最高傑作。



頂点捕食者としてパーティーに乗り込んだウエスギですが、待っていたのは捕獲道具を持った不気味な解剖学者だった。

次回、赤いダメイド参上です。


ここまでお読み下さりありがとうございました。

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