女サムライ達の身を焦がす様な妄執(後編ー①)
アレ……?
お前らこんな所で何やってんの??
鑑賞用魔法(屋敷前から):https://www.youtube.com/watch?v=ol2bezKfSe4
鑑賞用魔法(ミーナが現れてから):https://www.youtube.com/watch?v=KEjBVwANXNo
~キオト・屋敷前~
屋敷の向かい側の建物を飛び降り、ウエスギとロベールはアルマフディー翁の屋敷前に到着する。
門は既に閉ざされ、体格の良い番兵達が目を光らせていた。
ウエスギは構わず屋敷の中に押し入ろうと門に手を掛ける。
「止まれ」
「紹介状か招待状を」
「ふ──」
「私を止められるのは、父上かユクセル様のみです」
「【古代光魔術】《照元》」
突如閃光が番兵達の目を襲い、彼等の視力を奪った。
うずくまる番兵達を余所にウエスギは光り輝く刀を抜き、門を斬り倒した。
ロベールは呆気に取られていたが、気を取り直してウエスギへ抗議する。
「ウエスギ卿!」
「こ、これは不法侵入……」
ウエスギは人差し指をロベールの口に当てて言う。
「良いですか、ロベール君」
「『門は開いていた』、そして『番兵は何も見ていなかった』」
「良いですね?」
しかし、ロベールの首元にかかるウエスギの吐息は、完全に獲物を見付けて我慢出来なくなっていた捕食者のソレだった。
だがロベールは一歩下がり、青い瞳で興奮し掛けているウエスギを見据えて言う。
彼の喉は恐怖と緊張で引き攣っていたが、彼は無理矢理口を動かす。
「い、いえ……!」
「これは聖騎士たる行いではありません……!」
「騎士団長ラインバウト卿も、きっとそうおっしゃられるに違いない……!」
ウエスギはニコりと微笑む。
次の瞬間、ロベールの首筋に光る刀が付きつけられた。
【アナタが聖騎士でなければ、もうとくにそのそっ首斬り落としてます】
【ラインバウト卿は貴方に『上官へ反逆しろ』と教えたのですか??】
ロベールは全身に汗を掻き始める。
身体の緊張は限界に達していたが、彼は青い兜を被り直して背筋を正し、剣の柄に触れて言う。
「ラインバウト卿が僕に教えたのは『婦女子を助け、老幼を守り、民の盾となり、兵士達の模範になる』事!!」
「ウエスギ卿がこれからなさろうとしている事は、この全てに反している!!」
(クロエ、父上母上、ガスコーニュ卿、申し訳ございません……!)
(聖騎士ロベール、ここで死にます……!!)
たった今、ハンジロー君の忠告が全て無意味と化そうとしていた。
「……あんな言葉を真に受けた人が居たとは……」
「ちょっと驚きです」
ウエスギは刀を下げ、ロベールの頭を抱き寄せて首へキスをした。
そして彼女は笑顔で、固まるロベールに対して言う。
「面白い!!」
「実に面白い玩具です!!」
「是非レイカ殿とこの玩具で遊びたい!!」
本人の前で堂々と玩具宣言とはたまげたなぁ。
そして直後ロベールの首元へ蹴りが命中し、彼は意識を失っていく。
彼の暗くなる視界の中では、ウエスギが捕食者の笑みを浮かべていた。
~工房地区~
~裏通り~
崩れた瓦礫と床の破片の中で、シトマはトラヴィスを横四方固めで押さえつけながら、無力化しようと衛兵用の手錠を取り出した。
トラヴィスはシトマが手錠を使おうとした瞬間、抑え込みをはね除けようと身体をブリッジして抜け出そうと試みる。
(恐るべき体幹の強さ……!)
(【ハイランダー】は身体の芯が強くてしんどいですねぇ……!)
(流石は教会が誇る精鋭偵察兵……!)
シトマは暴れ馬を乗りこなすかのように、彼の動きを制そうとする。
だが、トラヴィスの膝が二人の身体の隙間に入り込み、彼は身体を切って抑え込みから脱出した。
トラヴィスの手が魔導狙撃銃まで伸びる。
「させませんねぇ!」
シトマのかかとが、銃を遠くへ蹴っ飛ばす。
彼女はトラヴィスをダウンさせようと、右ローキックからの左ミドルに見せかけ、右肩から腕を鞭の様にしならせてロシアンフックを放った。
トラヴィスは咄嗟にガードしたが、シトマのフックの衝撃はガードの上から貫通し、トラヴィスの意識ごと彼の身体を吹き飛ばした。
「……!!」
壁を突き抜けて路上に転がり出たトラヴィスは立ち上がろうとしたが、ふらついて石畳に膝を付いた。
彼の視界から色が抜けて霞み、目が自由に利かなくなる。
トラヴィスが後ろへ飛び退こうと足に力を込めようとした瞬間、シトマのタックルが命中し彼は倒された。
彼は懐からブローバック式の魔導銃を取り出し、シトマの左腕を撃った。
「ぅぐっ……!」
シトマは痛みを堪えながらも、横から腕を入れてV字チョークで彼の首を絞めにかかる。
トラヴィスはシトマの腕を外そうとするが、鋼鉄の様に堅いシトマの腕は、まるで城門の裏に掛かった栓の様だった。
トラヴィスの視界から急速に色が失われて行く。
(……!!)
(血が……頭へ……!)
「ここまで私を手こずらせた殺し手は貴方が初めてですよ、マーク・トラヴィス」
「カワイイ私の下着が血で台無しです」
カワイイ(28歳:衛兵隊長)。
乙女心全開の裸締めにより、トラヴィスの意識が遠のいていく。
【アレ……?】
【お前らこんな所で何やってんの??】
その声が聞こえた瞬間シトマの内耳から鼓膜を伝わり、耳石が震え、脳神経にドーパミンが爆速で溢れ出した。
シトマの首が180度回転し、後ろを向く。
司馬懿かよ。
「み、ミーナ!?」
「しかもメイド服verじゃないですかぁ!!」
ミーナは透明化を解除して、デカ不良メイド姿を二人の前に晒していた。
「ちょっと女将がらみの依頼でなー」
「つーか、お前白昼堂々路地裏で人を締め落とすなんてそんな趣味が……」
「しかもトラヴィスは子持ちだぞ」
シトマの締め付けが緩み、トラヴィスは最後の力を振り絞ってチョークの隙間から抜け出した。
「「あっ」」
アドレナリン全開のトラヴィスは解体用のナイフでシトマの首を狙いに行く。
シトマもクナイを取り出し、トラヴィスの心臓を狙おうとする。
ミーナはトラヴィスとシトマ、両者の手首を掴んで止める。
「そこまでだ」
「何があったかは知らねーが、私はダチが殺し合うのをボケッと見てる程愚かじゃねー」
「……」
「……」
トラヴィスは一息つき、武器を収めた。
シトマも暗器を懐へしまい込む。
「……邪魔をするなミーナ」
「俺は受けた依頼を絶対に成功させる。それこそが【信用】だ」
「今はその【信用】、一旦置いとけって」
「娘を放っておいてまでこの街に来た理由、気になるだろそりゃ」
ミーナはメイド服をはだけて肩を出し、あるタトゥーを見せた。
シトマは興奮し飛びつこうとしたが、悶えながら踏み止まった。
トラヴィスは右前腕にある、ミーナと同じタトゥーを見せて言う。
「……娘の治療費の為、高額の依頼を請け負った」
「……それだけだ」
「──依頼元はギルドじゃねーだろ」
「正直に言ってみ?戦友だろ?」
「戦場じゃ何でも相談した仲じゃねーか」
トラヴィスはミーナのメイド服を一瞥して言う。
「今の……お前だからこそ言えない」
「これは……娘の命が懸かっている仕事なんだ……!」
「分かってくれ──」
トラヴィスは魔導グレネードを取り出して地面に投げつけ、煙と共に姿を消した。
ミーナは肩に入ったタトゥーを眺める。
「……遂にアイツも金に困って裏仕事を請ける様になっちまったか」
「ったく、傭兵ってのは報われねぇ商売だな」
ミーナは身を隠す様に壁が壊れた家の中に入り、木箱の上に腰を下ろす。
シトマは彼女の隣に座り、砂昆布を齧り始める。
「それ、私にも一つくれよシトマ」
シトマは自分の噛んでいる砂昆布を二つに千切り、もう一方の唾液の付いてる方を渡そうとした。
ミーナのげんこつがシトマの脳天へ直撃し、やむなくシトマは付いていない方を渡した。
「てめー、何か知ってるだろシトマ」
「ここで吐き出しておかないと損するぞ」
「……やれやれ」
「ミーナに隠し事は出来ませんねぇ……」
シトマは、燃える盛るトーチを掲げた女神の紋様が刻まれた、赤い透明な石を取り出してミーナへ見せる。
ミーナの緑色の瞳が赤い石に映る。
「すっげー透き通ってんな……」
「こっちには無い石だな。東方特産の石か?」
「てか何で今まで見せてくれなかったんだよー、もう13年ぐらいの付き合いあるだろうが」
「すいませんねぇ……これだけは幾ら愛しのミーナ相手でも、見せられ無かったんですよ」
「この石はソードヘッドランド王家の紋章を、王国特産の石に刻んだモノです」
「え!?お前王族だったの!?」
「違いますよ」
「私は王家を陰で支えていた隠密集団、その首領の娘です」
「東方では王家や権力者、そしてその家族達を【ニンジャ】と呼ばれる隠密集団が、陰から護る事が一般的でした」
ミーナは砂昆布を噛み切り、飲み込む。
シトマは赤く透明な石を真っ黒な瞳で見つめ、懐に仕舞いこんだ。
「レイカ姫は私の主君です」
「そして、レイカ姫は恐るべき敵に命を狙われている」
「私は敵の情報を聞きつけ下調べし、未然に姫の暗殺を防ぐべくこの街に潜入していたワケです」
「は???」
「へ???」
ミーナは唖然とし、一度シトマの顔を覗く。
そしてワンテンポ遅れてから、シトマの両肩を掴む。
「まさか……レイカってお姫様だったのかよ!!」
「ウソだろ、あの悪徳詐欺商人が……!」
「あのタバコと酒くせー、ナルシスト訛り女が……!」
声がデケェって!
追われてるのもう忘れてんのか!?
「姫はこの13年で随分変わってしまいましたけどねぇ」
(すぐ気付かない所がカワイイですねぇ、ミーナ)
「何、じゃあレイカが商売をしに私達が住む町に来ていたのは……」
「私と情報を交換する為です」
「他の用事もありますけど、それが主な理由ですねぇ」
「どひぇ~~……!」
「確かに顔とスタイルはメチャ良いけどさぁ……」
「……まさかクリオネも13年経つとああなっちまうのか……!?」
「大丈夫でしょう」
「でも王になったらおっぱい揉ませて欲しいですねぇ」
「アレはきっと成長しますよ、間違いない」
ミーナのチョークスリーパーがシトマの首を締め上げる。
「クリオネの胸は平たいまんまに決まってんだろうが、ごるぁ~~……!」
「──油断しましたねぇ!」
「秘技、後ろ手揉み!!」
シトマの腕の関節が180度回転し、ミーナの両乳を素早く揉んだ。
「ひゃっ!?てっ、てめぇ!!」
「死ぬには良い日です(断言)」
そこ瓦礫を踏みしめる音がし、二人は音の方を向く。
「……何やってんすか??」
「アンタ、自分が追われているって事忘れてねーっすか……?」
ハンジローは灼けた茶色の髪をかき上げ、ミーナへ剣を向けた。
シトマの首が180度回転し、ミーナと目が合う。
「あーっ!?」
「あ-っ!?」
ハンジローはシトマの懐を剣先で指して言う。
「──そこに仕舞いこんだモノを見せろ」
「これを見せて良いのは、レイカ殿とミーナだけですよ」
「だからアナタには……」
シトマはハンジローとレイカの髪の色、そして瞳の色とフェイスラインが脳内で重なった。
彼女は震える手で赤い石を取り出し、ハンジローの前に掲げた。
ハンジローは険しい顔つきから、一転して優しい王子様の表情になる。
「その石は王家の家臣として、覚悟と忠義を誓った者に渡される加具土命石……」
「長年の献身ご苦労だった」
シトマは膝を付き、ハンジローの前で平伏した。
《登場人物紹介》
(マーク・トラヴィス)
Age:29 Sex:男
髪の色:金 目の色:緑
職:猟師(兼業傭兵)
傭兵ランク:S
主な収入源:狩猟・傭兵業・道案内・羊飼い
身分:山岳遊牧民
経歴:二十年戦争後期における、教会側名狙撃手の一人。元は傭兵業をこなしながら、山岳地帯で遊牧と猟師をしていたが、【聖戦令】によって徴兵される。ミーナとは遊牧民や、遊牧部族の血を引く混血の騎兵で構成されたレンジャー部隊で知り合う。部隊壊滅後も、戦争中は行き先を共にした。
好きなモノ:娘 亡き妻 乳製品を使った肉料理
趣味:狩猟道具の手入れ 娘に仕事を教える事
身長:184cm
体重:78kg
近所の評判:部族の纏め役
最近の出来事:娘が病気に罹り、その治療費を稼ぐ為に奔走している。
(以下、傭兵登録カード更新時の能力評価)
筋力:A+ 頑丈さ:AA 敏捷:A+ 生命力:S 魔力:C 魔術:D 器用さ:SS+ 学力:遊牧民 教養:教会の書庫はよく使う 格闘:B+ 剣:AA 弓・弩:名人 銃:伝説の狙撃手 騎乗:足と同じ 操船:船酔い常連 顔:A 素行:猟師の模範 評判:良き父親 危険度:娘を脅かす者には容赦しない
ランク別依頼達成回数
S:65 A:120 B:78 C:56 D:254 E:23
ギルド支部長からの一言:本当は兼業ではなく、専属で働いて欲しい
総合評価:銃や弓が絡む案件では、絶対に居て欲しい人
ミーナはクッソ汚くて、クッッッソガラの悪いナウシカかもしれない。
ナウシカのOPがタペストリーなの、本当にセンスの塊過ぎて何度も観てしまう。
ここまでお読み下さりありがとうございました。
「面白かった」「光なのに、光を奪ってやがる」「ロベール君、男を上げ過ぎだろ」「良く言った!それでこそ聖騎士や!」「この姫騎士本当にコワ~……」
「シトマもトラヴィスも接近戦強いな!」「シトマの格闘技術が本当に高い」「あーもう、ミーナのお陰で無茶苦茶だよ」「トラヴィス……」「元戦友にまで任務秘匿出来るの、本当にプロ」
「やっぱりミーナとシトマ仲良いな」「声がデケェって!」「自分は平たいまんま派」「自分は成長する派」
「王子様みたいな顔して、本当に王子様なヤツがあるか」「珍しいシトマが見れた」
と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。
宜しくお願い致します。




