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運河が張り巡らされた砂漠と雪の惑星に住んでます~ついでに言うと私は17歳以下の女の子が大好きです~  作者: 256進法


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炎と光と赤い悪魔(前編)

鑑賞用魔法:https://www.youtube.com/watch?v=WVZ6r-ld52k


~キオト~

~屋敷前~


ウエスギは呼吸を整えながら光輝く刀を撫で、その向こうにマウリッツを見据えた。

そして深く息を吸い、敷地全体へヒリつく様な殺気と閃光を放ち始める。


「──【古代光魔術】」

「《神武征伐》」


マウリッツは一つ目の仮面を取り出し、八つ目の仮面と着け替えた。


「──【上級人形魔術】」

「《パペットハウス》」


マウリッツの両肩から、人形の腕が服を突き破って出て来る。

敷地全体に息が詰まるような静寂が流れる。

マウリッツとウエスギは静かに足をずらし、互いに距離を詰め始める。


「!!」


突如ウエスギは閃光の筋と化し、マウリッツの背後に回り込んだ。


「──覚悟!!」


ウエスギの斬撃がマウリッツの背中を斬り抜けた。

ウエスギは咄嗟にその場から離れ、またも閃光の中に姿を消す。


「……」


マウリッツの首筋から細長い試験管が排出され、背中の傷が凄まじい勢いで治り始めた。

レイカは静かに立ち上がり、窓際からマウリッツの背中を凝視する。


「ちょっと待て……アレはなんや」


マルタレータは寛ぎながら、白ワインの入ったグラスを揺らしてレイカの言葉へ答える。


「【カートリッジ】だよ」

「中に入っているのは、人間の魂と生命力そのものだ」

「あの3センチ足らずの容器に人間の一生が詰まっている」


「……間違いなく禁術やろソレ」

「オマエら二人、異端審問や済まんで」

「征伐聖騎士モンやぞ」


「違法な魔導薬物の入った飯を牛馬の様に食わされ、ガキの頃から死地に放り込まれているバケモノを育成している教会の連中に咎められる謂れはないさ」

「あの黒髪の聖騎士は魔術と精神こそ怪物級だが、肉体までは怪物じゃない」


レイカは、マルタレータの血管が浮き出た太い前腕と首筋を一瞥する。


「オマエも何かやっとるな」

「通常の魔術強化を超えとる気がするわ、オマエの身体は」


「フフフ……だが、教会の造った怪物共を相手にするにはまだ足らないぐらいだ」

「だからもっと必要なんだ、【資源】がな」


「オマエ……ロクな死に方せんわ」

「交易ギルドには教会と仲の深い商人もおる」

「カウフマンのお嬢がソレ聞きつけたら、絶対オマエらの事殺しに掛かるやろ」


マルタレータは腕を組み、外の戦闘を見て笑いながら言う。


「やれるモノならやってみれば良いさ」

「本好きの小娘に殺られる程、このマルタレータはヤワじゃない」


「堪忍してえなもう……」

「エリちは教会圏における金融王と穀物王の娘やぞ」

「材木卸にも甚大な影響力持っとる。敵に回したらソッコー干上がるわ」


「『悪役令嬢交易ギルドから経済支配を企みます』なんてのはどうだ?」


「令嬢って歳か!!」


マルタレータはアルマフディー翁を見ながら言う。


「いやいや、昔は中々可憐なお嬢様だった」

「ですよね翁」


アルマフディー翁は椅子にもたれ掛かり、大きく息を吐く。


「昔、幼い君を膝の上に乗せた事を今半ば後悔している……」

「どうしてこうなってしまったのやら……」

「全く、時間と運命というモノは度し難い」


「昔か……そう言えばセレンはどうしています?」

「戦争が終わってからは会って無いですが」


老人は少しだけ表情が明るくなる。

だが目付きは決して油断していなかった。


「──健在だ」

「風の噂(・・・)では温泉付きの食堂を営んでいるとか」


「風の噂、ねェ……」

「とっくに教会へ反乱を起こそうとしていても不思議じゃないが」

「ザイトリッツ枢機卿との事件には、思わず私ですら同情したよ」


マルタレータは食器の片づけをしているクリオネの、緑色に変えた瞳と赤い髪を見た。

そして彼女はクリオネを指差して言う。


「あのメイドは?臨時雇いですか翁」


「──そうだ」

「知り合いの紹介でな、姉妹で──」


マルタレータの燃える様な赤い瞳が収縮し、老人はハッとした。

その時、クリオネはワザと皿を落として割った。

すかさずクーヤはクリオネへ言う。


「何をやっているの!リオ!」

「今すぐ片付けなさい!」

「私も手伝うから!」


「はっ、はい!」


クリオネは箒を、クーヤは塵取りを持って来る。

クーヤは作業しながらクリオネへ耳打ちする。


(……どうしたのリオ)

(旦那様が何か失言しかけのだけは分かったけれど……)


(……メイド長)

(ここは外よりも危険かもしれません)

(あの怖くて大きい女神様は旦那様から、とても大切な『何か』を聞き出そうとしています)


(それが……セレンさんという人の……)

(まさか……旦那様は反教会組織への……!)


(でも……私はそれだけじゃないと思いました)

(あとここで明かしておきます。私とミーナさんは姉妹じゃありません)


クーヤは陶器片を袋に入れながら、静かに溜息をついて言う。


(はー……知ってたわよそんなの)

(どうみても育ちが違うじゃない)

(少なくとも、一緒の環境で育った生物には思えないから)


(さ、流石はクーヤさん……!)


(取り敢えずテキパキやるように見せかけて、時間を稼ぎましょ)

(あのマルタレータってのはしつこい蛇みたいな目をしてたから、そう簡単に諦めるとは思えない)

(それよりも死体を操って自分すら兵器にする、あの仮面の方が余程怖いけれど……)


(男は顔と身長じゃないですよね、メイド長)

(でもミーナさんは顔も結構良くて身長も高いですよね)

(決める時は決めるし、腕は立つし、カッコ良いですよね)


クリオネの囁きに、クーヤは思わず頷き掛けたが慌てて立ち上がって否定する。


「あっ、あのダメイドとはそんなんじゃないから!!」


(まだ何も言って無いですけど)


パーティー会場の客達から、クスクスと笑い声が漏れる。

マルタレータは膝を叩きながら爆笑していた。

クーヤは顔を真っ赤にし、クリオネを揺さぶる。


(バカミーナもだけれど、アンタも大概な性格してるわね!リオ!)


(ふっ……これで私の一勝ですね、クーヤさん)


その時、パーティー会場の扉が思い切り開く。


「大変申し訳無ェ!!旦那様!!」

「メイドミーナ、大遅刻致しましたァ!!!」


パーティー会場が一瞬静まり返ったが、アルマフディー翁だけは静かに立ち上がって彼女を見据えた。

彼は傷だらけのミーナの顔と手を見て言う。


「良くやってくれた、ミーナ」

「今日の夜は好きなだけ夕食を食べても良い」

「酒も飲み放題だ」


「やったぜ!!サンキュー!ジイさん!!」


クーヤは塵取りと袋を置き、スタスタとミーナの元へと歩いて行く。

ミーナは俯いたクーヤを見下ろしながら、満面の笑顔で言う。


「どうスか?」

「私、やる時はやるだろ?メイド長」


クーヤはミーナの肩と胸を何度も叩く。


「ばかっ……!」

「ばかばかばか!!このダメイド!!バカミーナ!!」

「私をこんなに不安にさせて……!!」


ミーナはメイド服の裾で、クーヤの涙を拭ってやった。


「すんませんね、メイド長」

「私はこういう生き方しか出来ないんすよ」


「うっ……うっ……ぐすっ……」


レイカはその光景を横目で観つつ、冷や汗を掻きながら知らんフリを決め込んでいた。

だが、そんなのミーナには通用しねぇぜ!


「おーい!!レイカか!?レイカじゃねぇか!!」

「今度は金持ちの老人からカモる積りか!?そんなハデな恰好しやがってよー!!」

「詐欺はやめろって言ったじゃねーかー!」


レイカは飲んでいた赤ワインを噴き出し、テーブルが赤く染まった。

レイカは刀を持って立ち上がり、ズカズカとミーナの元へ歩いていく。

そしてミーナの頭を思い切りはたいた。


「このクソボケが~~~っ!!」

「今まで積み重ねたワイのイメージ、全部ブチ壊しやろうが!!」


「そりゃチンピラ女がお姫様みたいな恰好してたら、誰だって詐欺だと思うじゃん?」

「そういう店で仕事してるんなら止めないけどさ」

「てかいきなり殴るとかヒデェな」


「お、お、お姫っ……!」


「あーあー」

「こんなガラの悪いのがお姫様じゃあ、家臣や弟は報われねぇなぁー」

「もっと世間様に恥ずかしくないお仕事した方が良いでしょ」


レイカは開いた口が塞がらなくなり、その場で固まった。

ミーナは右手でクーヤの肩を抱きながら言う。


「こういう女、どう思います?メイド長」


「社会のゴミ」


「草」

「だってよレイカ姫」

「ガラスの靴もヤニ臭いのはお断りだろうな」


そして、ミーナは横で何かを期待しているクリオネへ言う。


「留守番ご苦労だったな、クリオネ」

「褒めて遣わす」


メイドからいきなり主人にランクアップしてんじゃねーぞ!

ミーナはクリオネの頭を撫で、クリオネは箒を抱えながら嬉しそうに顔を赤らめた。

ミーナはマルタレータからの異様な視線に気づく。


「おーー怖ぇ」

「おっかない女神様がこっちを睨んでやがるぜ」

「トラヴィスにレイカ暗殺の依頼出したのお前だろ」


レイカは思わずマルタレータの方を振り返った。

マルタレータは蛇の様な攻撃的な笑顔で、赤いワインを呷って言う。


「……で?だからどうしたと言うんだい?」

「こんなの商人同士では日常茶飯事の出来事さ」

「そしてそんな事よりも……」


マルタレータは立ち上がり、金属製のプレートが付けられた指ぬきグローブを嵌め出す。


【その赤い髪と緑色の瞳についてじっくりと聞きたいねぇ……】

【それにザイトリッツ枢機卿とそっくりじゃないか、オマエ】


「は?誰だよソレ」

「カッコ良さは親父譲りだって良く言われるけど」


「──母親は?」


「傭兵の親父が一人二役やってくれたよ」

「戦争で死んだけどな」


マルタレータの橙色の髪が逆立つ。

そして彼女が床を踏みしめる度に、床にヒビが入り始める。


「聖職者は男女共に家庭を持つ事が公には禁じられている……」

「が、聖職者だって人間だ。【間違い】は犯す……」

「しかし、まさか子が居たとはねぇ~~……」


「結局何が言いたいんだよ、この筋肉ババァ」


「お前は政治的な交渉材料にされるという事さ」

「フフフ……こんなにも早く機会が巡って来るとは……!!」


マルタレータは獰猛な恐竜の様な殺気と威圧感を放ち、客が震え上がり始める。

ミーナは腰から赤い蛇腹剣を抜く。


「ったく、強い敵ばかりでイヤになんぜ」

「なぁ、レイカ」


レイカはキセルをテーブルで二回叩いて置き、刀を抜いた。


「オマエのお陰で、ワイは苦労続きやホンマ」

「けど、オマエのお陰で生きとるって感じがマジ凄いわ」


クリオネは二人の刃を抜いた立ち姿を見て、思わず胸を抑えた。


(絵面がカッコよさ200%……!!)


そしてクーヤはミーナと目線を合わせ、客達へ呼び掛ける。


「──本日はパーティーにお越し頂き、誠に有難うございました」

「主人メイド一同、感謝の限りです」

「ですが今からここは戦場になります。しかし、私共メイド隊が責任を持って避難を誘導致しますのでご安心を」


アルマフディー翁は全身に血管が浮いたマルタレータへ言う。


「──思い留まれないのか、マルタレータ」


「無理です、翁」

「家族を奪ったあの女からは全てを剥ぎ取ってやらなければ、私の気が済みません」


マルタレータの白目までが赤くなっていく。

彼女の赤紫色の瞳を怒りが埋め尽くし始めた。


「人の両親や財産を奪っておいて、自分の子供を隠していたなんて不公平でしょう?」

「私を可憐な令嬢から、ここまでの怪物に変えたのはあの女です」


翁に対する口調は可憐な令嬢時代そのものだったが、ミーナへ向ける殺意は親を食われた恐竜そのものだった。

ミーナは剣を構えながらアルマフディー翁へ言う。


「ジイさん、アンタも逃げろ」

「親を殺されたドラゴンは、殺したヤツの事を何時までも覚えているモンだぜ」

「昔はカワイイトカゲだったかもだが、目の前に居るのはもう獲物をひたすらに食い続ける巨大なドラゴンだ」


「──いや、逃げんよ」

「私はここで全てを見届ける義務がある」

「それにここは私の終の棲家だ。死ぬとすればここしかない」


「──そうか」

「流石は私の依頼主だぜ」


レイカは刀を翻し、同時に火傷の痕から炎が盛り出す。

彼女はマルタレータへ言う。


「……何故ワイを殺そうと思ったんや」


「──お前が昔の私に似ていたからだ」

「引き返せなくなる前の私に……」

「お前の存在自体が、今の私に対する反証だと気づいた。それが理由だ」


「……残念やな」

「仲良う出来ると思うたのに」


「だからこそ、だ」

「お前は毎日自分を鏡で見て、正気で居られるか?」


「ワイは楽しいわ」

「毎日超美人なお姫様に逢えるんやからな」

「火傷の痕はあるけど、それが唯一無二の私や」


ミーナは笑う。


「レイカ!お前がナルシストで助かったぜ!」


「ミーナ!ワイもオマエがバカで助かったわ!」


二人は笑顔で刃を揃え、マルタレータへ向けた。





ここまでお読み下さりありがとうございました。

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