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運河が張り巡らされた砂漠と雪の惑星に住んでます~ついでに言うと私は17歳以下の女の子が大好きです~  作者: 256進法


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交易と闇商人と酒(後編-④)

私もこの通りだ

今回は勘弁してくれないかね?


~早朝~

~お屋敷・主の部屋~


「旦那様。朝食の用意が調いましてございます」


クーヤは綺麗に整えた白い髪を整え、主人の部屋を2回ノックした。


「入りなさい、クーヤ」


「はい。旦那様」


クーヤは静かに扉を開け、頭を一度しっかり下げてから主人の部屋に入る。

窓際には、安楽椅子に座りながら窓の外を眺める長身の老旦那が、その澄んだ青い瞳を彼女へ向けていた。


「最近、この屋敷が急に賑やかになった気がするが……」

「随分と元気な新人が入ったようだな、クーヤ」


クーヤは指で額を押さえながら、老主人の言葉に答える。


「……元気過ぎて私の手には余りそうです、旦那様」

「アレは暴れ馬ならぬ、暴れメイドです」

「手が掛かりすぎて、参りそうです」


「ははは……!」

「その割には穏やかな表情じゃないか、クーヤ」


クーヤはドキッとし、老主人の顔を見上げる。

老主人は窓の外を見ながら言う。


「窓から見ていたよ、あの赤髪の姉妹とお前のやり取りを」

「お前の自然な笑顔を見るのは、実に久しぶりだった」

「……いつも苦労をかけて済まなかったな」


「い、いえ!そんな、旦那様……!」


そして老主人はクーヤの方へ向き直る。

そして、彼はクーヤのスカートと足を見ながら言う。


「もう……そのナイフを使う機会は無いだろう」

「私は【教会】の暗部と交渉し、お前を奴隷の身分から自由市民にし、任務から解放する様掛け合った」

「今日はその答えが返ってくる日だ」


クーヤの灰色の瞳が収縮する。

老主人は言葉を続ける。


「あの赤髪の大きな方……たしかミーナと言ったか」

「彼女がお前を真に自由な人間にしてくれる、そんな気がしているのだ」


クーヤはその薄い桃色の唇を震わせながら言う。


「……私はもうお役御免という事ですか?」

「私にはこの屋敷と暗闇以外で、生きていく術など……」


老主人は杖を付きながら立ち上がる。


「クーヤ」

「お前にはその術が既に備わっておるよ」

「お前には人を纏め、動かす力がある。それはどの世界でも応用が利く物だ」

「ミーナという暴れメイドを躾けられるのなら、お前に制御出来ない人間などこの世に居ない」


「旦那様、まさかミーナ達を臨時でお雇いになったのは……」


「お前を運命から解放する為に、古い知人に相談していたんだ」

「そして彼女は私の希望通りの人材を寄越してくれた。だからこそ、この機会を逃したくは無かった」


「旦那様……」

「まさかご結婚なされて無いのは……」


老主人は葉巻を取り出し、火を点ける。

その灰色のオールバックが、淡い炎に照らされた。


「彼女に惚れてしまったら、最早並の女では物足りんのだよ」

「彼女に惚れている男は星の数程居るが、彼女をモノに出来たのはたった一人の男だけだった」

「それでも頼まれたら言う事を聞いてしまう……彼女とは男女を越えた絆が出来てしまう、そんな女なんだ」


老主人は煙を吐き出し、額縁に納められた小さい絵葉書を取り出す。

そこには若きセレンと、中年の老主人が描かれていた。


「とても……綺麗な人ですね、旦那様」


「ああ、彼女の為ならどんな危険を冒してでも、隊商や船団を組んだものだ」

「まるで砂漠の中に湧く巨大なオアシスの如く……傭兵団の皆にとってそんな存在だった」


老主人は額縁を懐へ仕舞い、杖を突きながら食堂へ向かって歩き始める。


~食堂~


老主人が扉を開けると、そこには既に温かい食事が並べられ、ミーナが机に突っ伏して寝ていた。

クーヤはミーナを小突き、腕を組みながら言う。


「貴女、何をやっているワケ??」


目覚めたミーナは立ち上がりながら、クーヤの言葉に答える。


「何って……」

「朝飯の用意を……あっ」


老主人は椅子に座ってミーナへ言う。


「涎が垂れているな」

「随分と早起きしたのか、それとも腹が減っているのか」


《グゥ~~ギュルルルッグググッグゥ~~……》


その時、ミーナの腹からはしたない音が鳴り、クーヤの眉と唇の端がピクつく。

しかし老主人は笑い、クーヤへ言う。


「クーヤ」

「起きている使用人全員分の食事をここへ」


「だ、旦那様!」


「いいじゃないか」

「偶には皆で楽しむのも」


「か、かしこまりました……!」


ミーナは頬杖をつき、イタズラっぽい笑みをクーヤへ向ける。


「良かったな、クーヤ」

「朝からご馳走にありつけて」

「今日みたいな日だからこそ、良いモン食ってバシッと気合入れようぜ!」


クーヤはミーナの頬を両手で挟んで言う。


「人前ではメ・イ・ド・長!!」

「そう呼べと何度も言ったわよね!?このダメイドミーナ!」

「あと敬語忘れてるわよ!!」


「ひゅ、ひゅあい」


クーヤは老主人からの視線に気づき、赤面して喉を鳴らした。

ミーナはクーヤの手を引き剝がそうとしたが、彼女の手に触れた瞬間何かに気付き、彼女の手を取った。


「……お前、これナイフだこ……」


「……っ!!」


次の瞬間、ミーナの頭にゲンコツが落ち、彼女はクーヤに引きずられて行った。


~30分後~


「……うっま!」

「このベーコンエッグうっま!」


ミーナはベーコンエッグを、口の限界ギリギリまで頬張って行く。

クーヤのヒールが、ミーナのつま先に直撃する。


「はしたないわ、ダメイドミーナ」


「ぃ~~っ……!」


メイドと老主人達はその光景を見て、静かに笑う。

クーヤはナプキンを取り出し、ミーナの口周りを拭く。


「全く、まるで子供みたいなんだから……!」


クリオネは紅茶を飲みながら、その光景へ僅かに頬を膨らませる。


「……姉(・)と随分と仲が宜しいですね、メイド長」


クーヤはハッとし、両手を振ってヘタな笑顔で誤魔化したが、もう後の祭りだった。


「そっ、それはそれ!」

「これはこれよ!リオ!」


(誤魔化すのヘタだなぁ、この人……)


クリオネは大豆と玉ねぎのスープを、半ば呆れながら飲み込んだ。

朝日が射し始め、食卓は賑やかになって行く。


「でさー」

「ラクダの唾を躱す遊びをしていたら、依頼主の顔に唾が直撃して激おこされたワケよ」

「あのラクダの気まずそうな顔、爺さんにも見せてやりたかったぜー!」


老主人はミーナの話に大笑いする。


「それは災難だったな!ラクダも!」


「で、依頼主からギルド経由で女将に話が繋がって、めでたく私の頭にもコブ(・・)が出来たってワケ!」


メイド達の中には腹を抱えて笑う者まで出ていた。

その時、食堂の扉が門番によってノックされる。


「旦那様、教会のキオト支部からの使者でございます」


「通せ」


門番によって扉が開かれ、僧服とツバがない硬く四角い帽子を被った神父が現れる。

クーヤを含むメイド達は全員立ち上がり、クリオネも様子を見ながら立ち上がる。

しかし、ミーナだけは一瞥しただけで朝食を食べ続けていた。


「こ、こらミーナ……!」


クーヤはミーナへ立つよう促したが、ミーナは紅茶を飲み干して言う。


「こちとら朝メシ中だぜ?」

「寧ろ食事中に配慮させる方がおかしいだろ」


老主人も杖を神父に見せて言う。


「私もこの通りだ」

「今回は勘弁してくれないかね?」


神父は表情を崩さず、従僕に手紙を差し出させる。

しかし、神父の藍色の瞳は明らかにミーナを睨み付けていた。

老主人は手を叩き、二人のメイドが隣室に用意してあった箱を持って来る。


「トスカニーニの醸造所から直接仕入れたワインとビネガーだ」

「是非持ち帰って、支部の皆様で味わって頂きたい」


神父の目の色が変わる。


「これはこれは……!」

(流石はキオト一の富豪……!)


老主人は土産物に夢中になってる神父を余所に、ミーナに笑い掛けた。

ミーナも彼へイタズラっぽい笑みを返す。

そして老主人はクーヤへ手紙を渡した。


「旦那様……」


「今までご苦労だったな、クーヤ」

「今日のパーティが終われば晴れて自由市民の身だ」


老主人は懐から小切手を取り出し、クーヤへ渡す。


「これを当面の生活費の足しにしてくれ」

「今まで良く私に尽くしてくれた」


クーヤが小切手を見ると、そこには生活費20年分は軽く超える分の額が記されていた。

クーヤの灰色の瞳から涙が溢れる。


「旦那様……!」


彼女は老主人に抱き着き、老主人は彼女の背中を撫でた。

ミーナは二人に向かって笑顔で親指を立て、メイド達も泣きながら拍手していた。

そしてクーヤは封蝋を切って手紙を開く。

彼女はそこに書かれていた文字を目にした瞬間、石のように固まった。


「え──」


【キオト教会所属奴隷クーヤは聖騎士ウエスギの令により、その奴隷期間を10年延長するものとする】

【異論がある場合は所定の手続きに基づき、審理費用金貨20枚を教会へ納めた上で申し立てを行う事】


彼女は膝から崩れ落ち、老主人は手紙を拾う。

老主人の顔つきが、修羅場を超えた豪商そのものになっていく。


「──神父」

「なんだね、これは」

「君はこの内容を知っていて、ここに来たのか?」

「だとしたら大した度胸だ」


神父は老主人の凄まじい威圧感に目を白黒させ、キョドり出す。


「い、いえ私は手紙を持って行く任を引き受けただけで……」

「手紙そのものは聖騎士ウエスギ殿が……」


老主人は椅子にもたれ掛かり、怒りを吐き出す様に言う。


「あの女か──」

「ガスコーニュ卿ならばこんな手紙、間違っても寄越さないだろう」

「そして……こちらからも言伝を貴殿に頼もう、神父」


「は、はい……!」


「『その挑戦、受けて立つ』、とな」

「これから教会はキオト周辺で軍事・商業・徴税活動は一切出来ないと思え」


神父は顔を汗だくにしながら言う。


「そ、それは教会に対する反逆で……」


「反逆ではない」

「これはタダの喧嘩だ」

「ウエスギ卿と私とのな」


老主人は厳然と杖を床に付き、両手を乗せて言い放った。

クーヤは小切手を震える手で老主人の前に置き、顔を見せずに窓から逃げ出した。

ミーナはパンを懐に仕舞い、窓枠に足を掛けて老主人に大きな声で言う。


「不肖メイドミーナ、これから休暇中のメイド長に会いに行きます!!」

「付きましては、臨時休暇を頂きます!!」


「──許可する」

「クーヤを……頼む」


老人の深く青い瞳と、ミーナの鮮やかな緑色の瞳が交錯する。

そしてミーナは窓から飛び降り、駆け出して行った。



ここまでお読み下さりありがとうございました。


「面白かった」「泣いた」

「暴れメイドは草」「奴隷兼アサシンだったのか、クーヤさん……」

「女将、マジで魔性の女だな……」「早起き出来てえらい!」


「はいはい、ごちそうさまでした(クリオネ感)」「俗な神父だな」「クーヤさんが可哀想過ぎる……」

「老主人がマジでカッコ良い……」「老豪商の本気を感じた」「追い付け!ミーナ!」


と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。

宜しくお願い致します。

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