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運河が張り巡らされた砂漠と雪の惑星に住んでいるけど質問は?~ついでに言うと私は17歳以下の女の子が大好きだ~  作者: 256進法


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交易と九九

そこに座りなさい


~翌日の朝~

~塩湖と町の中間にある岩場~


『じゃあ交易品はこの日陰に置いておけば良いか?』


『問題無い』

『頻度は10日に一度だ』


『ああ、私もそれで問題無いよ』

『寧ろ助かるぜ』


リザードマンはミーナへ麻の袋を渡す。

ミーナは袋を受け取りながら言う。


『なにこれ?』


『我々からの、お前に対する返礼だ』

『キヌアと干し肉、香草、薬草、塩が入っている』


ミーナは袋の中を覗く。


『マジで!?』

『くれすぎじゃない!?』


『【貰った物はより大きな物で返す】』

『【草原の英雄】の言葉だ』

『お前との関係は、何よりも大きい』


ミーナは恥ずかしそうに頬を掻き、はにかんだ。

そしてミーナは手を差し出し、リザードマンはミーナの手を握り返した。


『またな、英雄共』


『そちらこそ、太陽の戦士』


ミーナはフードを被り、クリオネの肩を抱く。


「町へ帰るぞ、クリオネ」

「女将が待ってる」


「──はい!」


クリオネはミーナの服の裾を、ぎゅっと掴んだ。



~夕方~

~砂漠のナベアツ亭~


ミーナは荷物を降ろし、椅子にドカッと腰を下ろした。

そしてミーナはやって来たセレンへ言う。


「どうだ?クリオネの体は」


「大丈夫よ」

「貴女が日陰のルートを選んでくれたお陰で、熱中症にはならなかったみたい」

「今は裏庭のお風呂に入ってるわ」


「そうか、良かった良かった」

「いやぁ~今回はマジでヤバかった……!」


ミーナは机に突っ伏し、日焼けした顔とその緑色の瞳だけセレンへ向けて言う。


「アンタ……教会の動きについて知ってただろ」

「シトマ経由で知らせてくれたのには感謝するけどさ」


「あらあら……❤️」

「何の事でしょう❤️」


「まぁいいや、終わった事だし」

「アンタにも色々と事情があるんだろう」

「取り敢えず牛ステーキバーガーとレモネード一つずつで」


数分後、ミーナの前に置かれたのは本と紙の山だった。


「はぇ……?」


「ミーナさん」


「うん?」


「クリオネちゃんから聞きましたよ」

「7掛ける6を46と答えたそうですね」


「…………」


ミーナの額に汗が浮かび始める。

そして彼女は荷物を持って立ち上がろうとした。


「そこに座りなさい」


ミーナはセレンのガスコーニュをも超える圧を感じ、大人しくその場に座る。


「はい」

(……嫌な予感しかしねぇ)


セレンは満面の笑顔で、『やさしい九九』と書かれた本をミーナの前に掲げた。

表紙の名前欄には『ドゥーちゃん』と書かれていた。


「1日45分」

「私の所へ来て、お勉強をする事」

「お勉強が終わらなければ、ご飯はありません❤️」


「実質選択肢ナシじゃねーか!」

「私はなぁ、戦場で生き残ってきたんだぞ!」

「今更そんなモン……」


セレンは青いおさげを後ろへ流して言う。


「私やクリオネちゃんに、数字は全て放り投げる気?」

「クリオネちゃんを書類の山で殺したいの?」


「うっ……!」


「今まで手続きや書類はやってあげてたけども、クリオネちゃんが来た以上……」

「甘え続けるのは許しません」


「ふぁい……」


ミーナは気の抜けた返事をし、うなだれた。

セレンはミーナの日焼けした、傷だらけの手に自分の厚い手をそっと重ねて言う。

セレンの手から温かさが、ミーナの手に伝わっていく。


「少しずつ、一歩一歩着実にやっていけば大丈夫よ」

「ご飯を食べる為の準備だと思って、やっていきましょうね」


ミーナは赤い髪をかき分けながら答える。


「……分かった」

こっち(・・・)でも頑張ってみるよ」

「もう逃げないと決めたしな」


「えらい❤️」


セレンはミーナの頭を撫で回した。

その時、クリオネが風呂から上がって酒場に戻って来た。


「あ!セレンさん!」

「お風呂ありがとうございました!」


セレンは立ち上がり、エプロンを取る。


「ふふ。気持ちよかったでしょ?」

「天然温泉なのよ❤️」

「ダウジングが得意な元傭兵の人に見つけて貰ったの❤️」


そしてエプロンの紐を結びながら、湯上りぽかぽかのクリオネへ言う。


「すこーしお願いがあるんだけども、大丈夫?クリオネちゃん」


「はい!セレンさんのお願いなら!」


ミーナは『やさしい九九』の本を開きながら、頬杖をついてクリオネへ言う。


「私とエラい態度違うじゃねーか、おーぅ?」


「セレンさんはとてもしっかりしてらっしゃいますから……」

「ミーナさんは家の掃除もロクにしてなくて、生態系が出来上がってるじゃないですか」

「そして46の件です。もうお分かりですね?あと、それと……」


クリオネは細い腰に手を当て、指でミーナの所業を数え始めた。


「お分かりだから、もう止めてくれ」


ミーナはクリオネの言葉から逃げるように鉛筆を持ちながら、練習帳へ数字を書き込んでいく。

セレンは火を焚きながら、クリオネへ言う。


「ちょっとミーナちゃんのお勉強を見ててくれるかしら」

「その間にご飯の準備をするわ」


「はい!分かりました!」


12歳に面倒見てて貰う28歳とか前代未聞だろ。

頭を抱えながら九九のドリルをこなしていくミーナを、クリオネは優しさを感じる青い瞳で見つめた。


~10分後~


「ぐがぁ~~……」


(もう寝てる……!!)


クリオネは、鼻提灯を作っていたミーナの肩を突いて起こす。

ミーナはよだれを垂らしながら、半開きの眼でクリオネを見る。


「んぁ……途中で起こすな……」


「勉強の途中ですよね」


「……はっ!」


ミーナは慌てて宿題に戻って鉛筆を持つが、向きが逆だった。

クリオネはため息を付き、ミーナの『成果』とやらを確認し始める。


「じ、字が汚すぎる……!書き順もメチャクチャ……!」

「も、文字の書き取りも必要かも……」


それでもクリオネはなんとか内容を読み取って行き、答えを確認していく。

ミーナは暇そうに、鉛筆をクルクルと回していた。

クリオネはあるページをミーナへ見せて言う。


「1章の小テストですが、0点です」

「10問中、正解はゼロです」


「ウソだろオイ」


「じゃあなんで3 × 5が18になるんですか?」

「……説明してみて下さい」


「いつも大体それぐらいになるから」


クリオネは長い銀髪と共に、首を横に振る。


「算術で大体はダメです」

「全てが正確な……」


そして、彼女は何かに気づく。


「──やり方を変えましょう」

「例えば、ミーナさんが1日に3つのチキンバーガーを食べられるとします」

「ミーナさんは、5日でどれだけのチキンバーガーを食べられる事になりますか?」


「えっと……」

「2日で6個、3日で9個、4日で12個、5日で15……あっ!」

「15個だ!15個!」


「正解です!ミーナさん!」

「『数字は数字そのものじゃなく、好きな物に置き換える』んです!」


勉強の重圧に支配されていたミーナの顔が、パーっと明るくなり始めた。

ミーナは『やさしい九九』を手に取って、クリオネへ言う。


「だったらよ!」

「その考え方、もっと大きな掛け算や割り算へ使える、って事か!?」

「ヤベェ!町がチキンバーガーで埋まっちまうぜ!」


クリオネは、目をキラ付かせるミーナを見て言う。


「また5分後に答え合わせをします」

「出来そうですか?」


「おう!任せろ!」


~5分後~


「出来たぞ!」

「今度こそカンペキだぜ!」


クリオネはミーナの解答を採点していく。


「……凄いですよ!ミーナさん!」

「10門中9問正解です!」


「ぃよっしゃぁっ!!」


ミーナは立ち上がり、叫びながらガッツポーズをキメた。

そして彼女は椅子に座り直し、再び鉛筆を握る。


「この調子で平らげてやるぜ!!」


~30分後~


クリオネは心の底から驚いていた。

目の前の赤いヒャッハー女が、ドリルの3分の1を30分でこなした事に。


(とんでもない集中力……!)

(やっぱりミーナさんは凄い!)


ミーナは鉛筆を放り出し、机を叩き始める。


「女将!勉強終わったぞ!」

「メシだ!メ~~シ~~!」


「はいはい❤️」


セレンはミーナの注文通り、牛ステーキバーガーとレモネードを持って来る。

そして、オレンジと梨の付け盛りを後から持って来た。


「えーっと……一品多いぜ、女将」


「頑張ったご褒美❤️」


「強盗団の頭を捕まえても、こんなご褒美なんか出なかったのに……」


ミーナの身体が震い、緑色の瞳が潤んで行く。

セレンは彼女の隣に座り、青いハンカチで彼女の目頭を拭ってやる。


「泣いたら美人が台無しですよ、ミーナちゃん」

「そして……お帰りなさい」


「……ただいま……」


女将は何も言わず、ミーナを抱き締めた。





はい。

クリオネによるミーナちゃん28歳の教育が始まりました。

セレンのミーナ育成計画、出だしは順調そうです。


ここまでお読み下さりありがとうございました。


「面白かった」「期待している」「リザードマン達との会話が良かった」「交易始まったな」

「女将の圧強過ぎて笑った」「ドゥーちゃんのお下がりは草」「優しいだけじゃない女将好き」

「えらい❤️」「その差、16歳である」「字も汚くてダメだった」「いつも大体は大草原」


「クリオネ、教えるの上手いな……」「ミーナの成長具合が凄い」「女将からは愛情を感じる」

「お帰りなさい」


と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。



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